曇天に哭く修羅
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第二部
困惑
前書き
_〆(。。)
日英親善試合は順調に進んでいる。
日本代表の圧倒的勝利で。
先鋒の3年生《春日桜花》は4秒。
次鋒の1年生で紫闇の幼馴染み《的場聖持/まとばせいじは》気を使って5秒。
中堅の会長《島崎向子》は6秒。
3人とも魔晄操作だけの技術を用い、【異能】も外装も出さずサクッと終わらせた。
こうして団体戦での勝敗は決まったが《クリス・ネバーエンド》と《立華紫闇》にとっては残り二試合こそが本番。
ここまでの三試合は前哨戦に過ぎない。
「レックスはエリザより年上だけど私の弟分みたいな奴なの。彼奴がどれだけ必死に努力してきたか誰より理解してるつもり。だから私はシアンと同じで今の彼奴が気にくわない。ある日を境にして彼奴は変わった。今のしょぼくれた人格になったの。そしてその少し後で突然イリアスが暴れ出したわ。亡命してまで英国から出ていった」
クリスが紫闇の胸を叩く。
「あんたなら彼奴を昔のレックスに戻せると思う。何となくだけど確信が有るの。だから私の弟分を頼むわね」
「ああ、任せとけ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
副将戦は[白狂戦鬼/バーサーカー]・立華紫闇と[ゲームマスター]《レックス・ディヴァイザー》による対決。
「漸くですね立華紫闇」
「俺もあんたも未来を変えられる力を持っているっていうこと証明する」
紫闇の言葉が気に障ったのか一瞬だがレックスの顔に鬼が宿り、紫闇を睨み付けた。
「良いですよ。思い知らせてあげます」
両者が同時に外装を顕現。
紫闇は右腕に黒い装甲。
レックスは長髪の女剣士を象った像。
試合の開始と同時、紫闇が【音隼・おとはや/双式・ふたしき】を使って高速で間合いを詰めようと突っ込んでいく。
レックスは表情を変えない。
冷静に人形を操る。
紫闇の正面に女剣士の像。
「どけ」
紫闇が左拳を放つ。
しかし女剣士の像は見事に躱す。
僅かに体を動かしただけで。
魔晄で強化した魔術師がやっても難しい動きを遠隔した人形でやってのけた。
恐ろしい精密操作。
女剣士の像はカウンター。
高速移動中の紫闇に剣を振る。
しかし紫闇は【盾梟】を展開。
『堅剛』による防御で受け止め腕を痺れさせるつもりだったが人形には通用しない。
女剣士の像は連続で攻撃。
紫闇は回避して回り込もうとする。
しかし足を踏みつけて足止め。
そのまま逃げられない剣撃を喰らわせて綺麗に紫闇を吹き飛ばす。
思わず感心した。
レックスの力と重ねた修練を。
どんな思いで魔術師をやってきたか。
そんなところまで理解できる。
だから気に入らないのだ。
女剣士の像はとてもレックスが指示して動かしているとは思えないような動きで紫闇の出す攻撃を掠らせず、一方的に自分の攻撃を打ち込む。
何もかも読まれているのだろう。
(マジで魔術師としての差よりも人間としての差が有るから追い込まれてる気がする)
紫闇の予想通りではあるが。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
再び紫闇が吹き飛ぶ。
しかしこれは罠。
女剣士の像はレックスから大きく離れた紫闇の所まで向かってくる。
「上手くいったか」
紫闇はレックスに対して攻撃を仕掛ける為に、どうしてもレックスと人形の距離を引き離しておきたかったのだ。
先程までのレックスと女剣士の像は一定の間隔を維持しており、紫闇が【珀刹怖凍/びゃくせつふとう】以外のどんな行動を取ろうとも対応できるポジショニングだったので迂闊に仕掛けられない。
しかしこれだけ距離が有れば別。
レックスに攻撃が向かっても人形を呼び戻して間に合わせることが出来ないはず。
何かしら【異能】を使わない限り。
紫闇は女剣士の像による攻撃を盾梟で強引に受け止めると彼女を置き去りにしてレックスの方に全力疾走を開始。
がら空きのレックスに近付く。
だが追ってくる人形の動きは速い。
音隼無しでは追い抜かれそうだ。
そうすれば女剣士の像は紫闇とレックスの間に割り込むだろうことは明白。
しかしその心配は無い。
残り5メートル有るが既に届くのだ。
紫闇は何時もの【禍孔雀】と違い、拳だけでなく肘まで黄金に輝かせた。
攻撃するには体術しか手段が無いはずの紫闇はその場で真っ直ぐ拳を突き出す。
金色の光が腕から放たれる。
離れた光は巨大な拳を象った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「───ッ!?」
レックスの表情が一変。
初めて動揺する。
「今の俺が唯一使える遠当てだ」
【黒鋼流練氣術/三羽鳥ノ一/禍孔雀・かくじゃく/偽炎・ぎえん】
魔晄の粒子で形成された巨大な拳はレックスの全身を炎のように包み捕らう。
爆裂と粒子の飛散が起きるとレックスは結界に叩き付けられて吐血し倒れ込む。
ダウンを取られカウントが始まる。
(ここで終わる奴じゃない。レックスはまだ切り札が有るはずだ。けどそれはこちらも同じ。ここまでは準備運動に過ぎないんだから。しかし遅いな。何で動かねーんだ?)
『シックス!』
(いやいやいや)
『セブン!』
(おいちょっと待て、早く立てよ)
『エイト!』
「嘘だろレックスッ!」
『ナイン!』
「何してんだお前ッ!」
『テン!』
終わった。終わってしまった。
呆気ない幕切れに紫闇も観客も困惑。
レックスは勝敗が決すると何事も無かったかのように立ち上がり微笑む。
後悔は皆無。
手を差し出す彼に紫闇も戸惑ったが取り敢えず握手しながら話す。
「どういうつもりだ?」
「これで婚約は破棄されました」
レックスはわざと負けたのだろうか。
そう思った紫闇は何か引っ掛かる。
「私と貴方は再び敵となります」
レックスは紫闇に告げて退場した。
後書き
原作も必要無いのか親善試合の試合三つは描写がカットされてます。
_〆(。。)
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