ロックマンゼロ~救世主達~
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SS:母娘
前書き
オメガ戦後
オメガとの戦いから数日後、レジスタンスベースの港でレヴィアタンは自分に向けられる子供特有の好奇心の視線に困惑していた。
最初は元とは言えネオ・アルカディア四天王の自分が珍しいのかと思っていたがそうではないらしい。
オメガとの戦いで重傷を負ったハルピュイア、ファーブニル、レヴィアタンの三人はエックスとルインの命令を受けてレジスタンスベースで療養していた。
やはりと言うべきか、四天王…特に飛行能力を持つハルピュイアと潜水能力を持つレヴィアタンは複雑な機構を持つこともあってメンテナンスにかなりの時間がかかる。
元々両親も未だに解析不能な部分があるため、その二人の子供と言える四天王のメンテナンスが大変なのは言うまでもないのだが。
レヴィアタンは水中用の推進器のチェックをしようと港に来て一緒にチェックしてくれるルインを待っていたのだが、同じく港に来ていた少女の視線に困惑しているわけである。
「何?私に何か用?」
レヴィアタン自身子供は嫌いではないが、こうまで凝視されると居心地が悪いのは確かだ。
だから思い切って目の前の少女…アルエットに尋ねた。
「あ、ごめんなさい…ジッと見ちゃって…レヴィアタンって本当にルインお姉ちゃんとお顔そっくりなんだなって思って…遠くからだとエックスにそっくりなのに」
「そりゃあ、あの二人は私の基になったんだもの。私が二人に似ていて当然よ」
レヴィアタンはエックスとルインの特徴をどちらも強く受け継いだ容姿をしている。
エックスのアーマーを彷彿とさせる蒼、そしてルイン譲りの顔立ちは確実にレヴィアタンが二人の子供なのだと確信させるのだ。
「うん、レヴィアタンってルインお姉ちゃんみたいに綺麗なお顔してる。」
「そう?ありがとう」
アルエットの言葉には打算のようなものは一切なく、本心からの言葉である。
エックスや兄弟と共に人間の策謀が渦巻くネオ・アルカディアで過ごしてきたレヴィアタンからすればその無邪気な言葉は少しくすぐったい。
「でも、私…昔はこの顔はあまり好きじゃなかったのよね」
その言葉にアルエットは驚いた。
「どうして?凄く綺麗なのに」
「ほら、私達はあの人と出会うまであの人がお母さんだなんて知らなかったのよ。だから他の三人がエックス様と同じ顔なのに私だけ全く違うから…何て言うか疎外感を感じてたのよね…あのキザ坊やのハルピュイアは当然として兄さんのファントムなんてバイザーを外したらエックス様と瓜二つだし、あの戦闘馬鹿のファーブニルでさえ黙ってればエックス様に似てるのよ?」
「うん、似てるね」
アルエットも一度お見舞いに行った時にファーブニルの寝顔を見たことがあるが、確かに黙っていればエックスの面影を感じさせた。
「そしてエックス様が私を見る度に懐かしそうにしてるのが不思議だったけど…今なら分かるわ。エックス様は私を通してお母さんを見てたんだってね。」
統治者時代に時々レヴィアタンに対して過保護だったのはルインの面影を持つ娘が心配だったからなのかもしれない。
「エックス、ルインお姉ちゃんのこと大好きだもんね」
「ほーんと、見てるこっちが恥ずかしくなるくらいにね。まあ、二百年も離れ離れだったんだから仕方ないんだけど」
ここに来てからのエックスのルインの溺愛ぶりは娘のレヴィアタンも恥ずかしくなる程であり、事情も分かるので何も言えないのが現状だ。
「まあ、今はこの顔は嫌いじゃないわ。寧ろ私と二人の繋がりを示すものだしね」
「ふふ、レヴィアタンもエックスとルインお姉ちゃんが大好きなんだね」
「………子供ってストレートよねぇ…」
無邪気な言葉に普段クールなレヴィアタンも少し照れる。
「待たせちゃってごめんねぇ!!」
ルインの声が聞こえたので振り返ると、LXアーマー状態のルインがこちらに駆け寄ってきた。
「あら、お母さん?遅かったわね?」
「ルインお姉ちゃん、レヴィアタン待ってたよ?」
まるでハルピュイアのように時間の管理がきっちりしているルインからすれば珍しいことだ。
「ごめんね、ファーブニルに遊んで欲しいって言われたから急いでスケジュール調整し直していたら遅くなっちゃった」
「あんの、戦闘馬鹿…女の約束に割り込もうなんて良い度胸してるじゃない…」
額に手を当てながら呟くレヴィアタンにルインは苦笑した。
「まあまあ、私はファーブニルと遊べて嬉しいよ?」
「もしお母さんがネオ・アルカディアにいたら私達を甘やかしそうだわ。」
もしルインが二百年間稼働していたら確実に自分達を甘やかしていたかもしれない。
いや、意外に公私混同はしないからそこら辺はきっちりするのかもしれないが、ネオ・アルカディアから離れた以上は想像しか出来ない。
「それにしてもお母さんのアーマーは…女にしては無骨な感じがするわよね」
女性的なアーマーであるレヴィアタンに対してルインのアーマーはエックスやゼロのような男性型のレプリロイドが纏っていてもおかしくはない形状だ。
勿論顔立ちや体つきでルインを男性だと勘違いする者はいないだろうが。
「昔はそういうのよりも性能だったからね」
苦笑と共に言うルインはレヴィアタンに手を差し伸べた。
「それじゃあ、行こうよレヴィアタン」
「ええ、負けないわよ」
「行ってらっしゃーい」
互いに手を繋いで海に飛び込んだ二人にアルエットは手を振った。
普段なら水中に特化したレヴィアタンが速度で上回るのだが、まだ本調子ではないようなのでルインと同じくらいのスピードでしか泳げなかったが、隣で泳ぐルインの表情を見て…。
「(この顔は私には出来ないわね)」
「やっぱり戦闘以外で泳ぐのは楽しいね」
楽しそうに笑うルインにレヴィアタンは苦笑しながらこういうのも悪くないと思った。
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