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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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コラボ特別編:響き翔く天の道
  響き翔く天の道

 
前書き
長かった天撃コラボも、今回が最終回となりました。
視点違いの同時投稿、という形でどちらの読者さんにも楽しんで貰えるよう試行錯誤してきた日々が、ちょっとだけ懐かしいです。
錬金術師さんのファンも自分のファンも、このコラボを通して互いの作品を知る良い機会になったら幸いです。

それでは、コラボ最終話。「NEXT LEVEL」と「FULL FORCE」を流しながらお楽しみ下さい!
ちなみに作者はエンディング書きながら「LORD OF THE SPEED」と「ONE WORLD」を聴いていました。まさにカブト尽くしですねw 

 
「わたしの……わたしの翔くんはッ!」

本物と偽物。全く瓜二つな二人の翔を見据え、響は深く息を吸い込み、胸の歌を口ずさむ。


「──Balwisyall Nescell gungnir tron──」

黄色い閃光と共に、ガングニールのシンフォギアが響の身体を包む。

そして響は拳を握り、勢いよく突き出した。

「うぉりゃああああああああぁぁぁッ!!」
「ッ!?」

響の拳が向かった先は、彼女から見て左側の翔だった。

一直線に突き進む剛拳が、そのまま翔の顔面に突き刺さる……。




──と思われた。

だが、鼻先の寸前で響の拳はピタリと停止し、ゴウッ!という音と共に、強い風圧が翔の身体を突き抜けて行った。

そして、翔は身動ぎすらせず直立し、響の瞳を真っ直ぐに見つめたまま微笑んだ。

「やっぱり……。信じてたよ、翔くん」
「ああ。よく見つけてくれたな、響」

次の瞬間、翔は隣で()()()()()()()()()もう一人の翔を、力の限り蹴り飛ばした。

「ぬぎゃっ!?』

もう一人の翔は派手に地面を転がり、次の瞬間、その姿が歪み、アキャリナネイティブの姿へと戻っていった。

『何故だ!?お前の姿は、記憶も含めて完全にコピーしたはず……俺の擬態は完璧だった筈だ!いったい、何を理由に俺の擬態を見破れたと言うのだ!?』

動揺するアキャリナに、響は拳を下ろして答える。

「本物の翔くんなら、きっとわたしの事を信じてくれる……。わたしの拳に乗せた想いに気付いてくれると思ったんだ。だから、当たるギリギリの所を狙ったんだ」
『馬鹿な!?最愛の者に拳を向けられたのだぞ!?何故平然と立っていられるのだ!?』

アキャリナに指をさされると、翔は不敵に笑い、さも当然であるかのようにこう返した。

「ネイティブは確かに、人間の外見や記憶を寸分違わずコピーする事が出来る。だが、その人間が抱く信頼や想いまでは、決して真似する事は出来ない!!」

嘗て、神代剣(かみしろつるぎ)という青年をコピーしたワームがいた。
しかしそのワームは、目の前で姉を殺された事で怒りに燃えていた剣の記憶をコピーしてしまったが故に、その身に彼の魂を焼き付けてしまったのだ。

その結果、そのワーム……スコーピオンワームの自我は、人間として死んだ神代剣本人のものへと上書きされた。
最期は神代剣としての心を残したまま、ワームとして死ぬ結末を選ぶ事さえ成したのだ。

それを知っているからこそ、翔はこう言ったのだ。
装者の抹殺を目的としている限り、アキャリナはこの心までは複写できないのだと。
たとえ複写出来たとしても、その時点でネイティブとしてのアキャリナは消える。
だからこそ、ネイティブが理解する事はないのだ。人が人を愛する、尊い心を。

空を覆っていた雲に切れ間ができ、太陽が再び地上を照らす。

顔を出した太陽を指さし、天道響が響の隣に並び立った。

「あの人が言っていた。絆とは──」
「"絆とは決して断ち切る事の出来ない深いつながり、例え離れていても心と心が繋がっている"と」
「……おい、私のセリフを奪うな」
「すまない。一度言ってみたかったんだ、天道語録」

天道響と同様に、人差し指で太陽を指さしながら、翔は彼女の言葉を先取りした。
決めゼリフを奪われ、天道響は不服を目で訴える。

「あ、天の道のわたし……もしかして拗ねてる?」
「拗ねてなどいない。あの人はこの程度で臍を曲げたりなど……」
「ハハッ、まあまあ。ほら、とっととあいつ倒すぞ」

口を尖らせる天道響と、その顔を覗き込む響。
それを見てつい、翔は笑みを零した。

『貴様らァァァァァ!!』

思惑を潰された上、目の前で自分をおちょくるようなやり取りを繰り広げる三人を見て、アキャリナネイティブは怒りに全身を震わせる。

「ビエラ!こいつら纏めて血祭りに上げてやるぞ!」

公園周囲の監視カメラや、二課が飛ばしたドローンを破壊し回っていたビエラネイティブを呼び戻そうと、アキャリナはその名前を呼ぶ。

だが、ビエラは戻って来ない。
その代わりに、少し離れた所から聞こえて来たのは、三人分の歌声と叫び声だった。

「──Imyuteus Amenohabakiri tron──」
「──Killter Ichaival tron──」
「RN式、起動ッ!」



「FULL FORCE 昨日より速くッ!」
『キュルルッ!』

翼が振り下ろしたアームドギアを、ビエラネイティブは難なく躱し、左手の鉤爪を振り下ろそうとする。

「走るのが条件ッ!」
「キュッ!?」

しかし、そうは問屋が卸さない。クリスが発砲したハンドガン型のアームドギアが火を噴き、ビエラの左手を火花と共に弾き飛ばす。

「自分の限界いつもッ!抜き去って行くのさッ!」
『キュルッ!?』

そして、そこへ高速接近してきた純が、右手に装着した盾をナックルとし、ビエラの胸部を殴り、押し蹴りで後方へと飛ばす。

三人はここひと月の訓練通り、的確に連携し、ビエラへとダメージを与えていく。
口ずさむのは『FULL FORCE』、仮面ライダーカブトの前半に於ける挿入歌だ。

翼が先陣を切り、純が後に続く。そしてクリスが後方から援護射撃する事で、反撃の隙を与えない。

3対1では不利だと判断したビエラは、三人から離れた所でクロックアップに入った。
高速で動き回り、三人を撹乱。各個撃破するのが狙いだ。

「クロックアップか!」
「作戦通りに行くぞ!」
「二人とも、頼んだ!」

頷き合うと、まずは翼が空へとアームドギアを掲げる。

「ありふれた景色に突然現れる──」

〈千ノ落涙〉

次の瞬間、幾つもの剣が雨のように降り注ぎ、次々と地面へ突き刺さる。

しかし、範囲攻撃であるはずの千の落涙さえ、高速で動き回るビエラにはかすりすらしない。

「戸惑う暇もなく、真夏の夢じゃなく──」

続いて純が、右手に装着したシールドに渾身の力を込めて地面を殴りつける。

大地が振動し、砂埃が宙を舞う。

ビエラは一瞬ふらつくも、その足は止まらない。

「君は唯一の誰も代われない──」

そしてクリスは、アームドギアからレーザーを照射し、()()()()()地面に突き立つ翼の剣を狙った。

落涙の刀身に輝く光沢はレーザーを乱反射し、砂埃のスクリーンに赤く、ビエラのシルエットを映し出した。

(今だッ!)

「FULL FORCE 誰よりも速く明日を見に行けばッ!」

姿を捉えた瞬間、純は拳を眼前へと突き出す。
地面に突立つ刃は丁度、ビエラを純の居る方向へと誘導するように配置されていた。

これこそが、純の提案した策。
仮面ライダーカブト第1話にて、天道総司がクロックアップしたアラクネアワームに対して打った奇策を、3人で再現するというものだ。

鏡を翼の剣で、石灰をグラウンドの砂で、そしてレーザーはクリスのアームドギアから。
役割を分担し、足りないものはその場で用意出来るもので代替し、劇中の状況を限りなく再現した。

ぶっつけ本番ではあったが、三人は見事に自分達の役割を果たしてみせたのだ。

『キュルルルッ!?』
「自分の足跡だけが、残されて行くのさッ!」

ビエラの腹部ど真ん中に突き刺さる拳。
怯み、クロックアップが解除されたビエラ。そこへ追い打ちをかけるように、翼は小太刀を投擲する。

〈影縫い〉

「これでクロックアップは封じたッ!」
「決めるぞ!!」

翼がアームドギアを宙に放り、自らも跳躍する。

クリスはガトリング型に変形させたアームドギアを向け、純はシールドを投擲した。

〈Slugger×シールド〉
〈BILLION MAIDEN〉
〈天ノ逆鱗〉

「──不可能なんてないはずッ!」
「全てをッ!」
「手に入れるさぁぁぁぁッ!行けぇぇぇぇぇッ!!」

回転する純のシールドがビエラの外骨格を切り裂き、クリスのガトリングから放たれた弾丸が残る外骨格を削り取り、そして翼の逆鱗はビエラへのトドメの一撃となった。

爆発し、緑色の炎を上げて消滅するビエラ。
着地した翼はアームドギアを収納し、クリスと純に駆け寄った。

「ビエラは倒した。後は……」
「響達の所にいた、アキャリナって野郎だけだな」
「信じよう、翔と立花さんを。そして、天の道を往くもう一人の立花さんを」

三人の視界の先では……目視できない、光速の世界を舞台とした戦いが繰り広げられていた。



『こうなれば、貴様らまとめて俺が始末してくれるわ!!』

ビエラからの救援は見込めないと察し、アキャリナは自らの手で眼前の標的達を仕留めるべく、右腕の巨大な鉤爪を構える。

カブトが応戦するべくクナイガンを構えたその時、空間に緑色の波紋が浮かんだ。

「ッ!?」
「あれは……」

次の瞬間、2機の昆虫型メカが波紋の中より現れる。

飛び出した昆虫型メカはアキャリナに突進すると、翔達の方へと向かっていく。

『ぐほぁッ!?』
「ハイパーゼクター……」

カブトの前で静止する2機。その内片方は、時空を超える力を持つ銀色のカブトムシ型メカ、ハイパーゼクター。

そして、ハイパーゼクターに連れられて現れたもう片方はクワガタムシ型。この空の下で最強の蒼き戦神、ガタックゼクターだった。

「ガタックゼクター!?」
「もう一人のわたし、これって……」

カブトが答えるより先に、ガタックゼクターは翔の周りをくるくると旋回する。
やがてガタックゼクターは、翔の目の前で静止した。

「翔、ガタックゼクターはお前に力を貸すと言っている」
「本当か!?」
「ああ。翼と同じものを、お前からも感じたんだろう」

翔は、目線の位置で浮かぶガタックゼクターを見つめる。
オレンジ色の複眼でこちらを見つめるガタックゼクターは、まるで頷くかのように、その身を縦に揺らした。

「ガタックゼクター……俺に力を貸してくれ!」

翔が天高くその手を伸ばすと、ガタックゼクターは翔の周囲を一周回り、その手の中へと収まる。
それに呼応するように、翔の腰には銀色に輝くライダーベルトが出現した。

「……えっ!?なっ、なにこれ!?」
「ッ!?これは……」

ちょうどその時だった。
響のギアの胸元にあるコンバーターと、カブトのベルトに装着された銀朱色のカブトゼクターが、まるで共鳴するかのように光り始めたのだ。

「この光……もしかして、ガングニールの……?」
「まさか……立花、手を!」
「うん!」

ガングニールの装者と、カブトの継承者。山吹色の光に導かれるように、二人の立花響が手を繋ぐ。

(天の道のわたしから、力が流れ込んでくる……!この感じ……温かくて、優しくて、でも力強い。まるで……そう、太陽みたいに眩しい力ッ!)

天道響から流れ込んで来た「カブトの力」を受け取り、手を離す。
繋いだ手から伝わった力は、やがて一つの形に結集した。

「これ……カブトゼクター!?」

響の手に握られていたのは、その身に纏うガングニールと同じ色のカブトゼクターだった。
しかも腰にはいつの間にか、翔や天道響と同じ銀色のライダーベルトまで巻かれている。

「それはお前の掴んだ未来。お前自身のカブトゼクターだ」
「わたし自身の……。って事は、これを使えば!」
「そうだ。……立花、翔、いけるな?」

カブトからの問いに、翔は不敵な笑みで。響は力強く頷きながら答えた。

「ああ!散々好き勝手されたんだ、最早情けは不要ッ!」
「翔くんに化けたり、わたし達のデートの邪魔したり!絶対に許さないッ!」
『ほざけぇぇぇぇぇッ!!』

ようやく起き上がったアキャリナを、3人は正面から見据える。

「いくよ、二人ともッ!」
「いざ、推して参るッ!」

そして、翔と響は右手に握ったゼクターを構え、天高くあの言葉を叫んだ。

「「変身ッ!」」

ベルトのバックルへとスライドさせ、装着させる。

【HENSHIN】

バックルにセッティングされたゼクターを中心に、シンフォギアの上から重厚な鎧が展開されていく。
それと同時に、元のシンフォギアの形状にも変化が生じた。

やがて鎧は全身を覆い、バイザー状のフルフェイスマスクが口元のみを空けて二人の顔を包んだ。

そして、ガチャッという音と共に、響はカブトゼクターのゼクターホーンを立て、翔はガタックゼクターのゼクターホーンを背中側に押し込む。

紫電と共にマスクドフォームの鎧は、各部順次に展開されていく。
無論、二人の掛け声も同時であった。

「「キャストオフ!!」」

【CAST OFF】

弾け飛ぶ鎧の下から現れる、未知の形状へと変化したシンフォギア。

響の胴体部と肩を包むのは、カブトとほぼ同じ形状をしたオレンジ色のアーマー。
しかし、二の腕や腿は露出しており、仮面に覆われていない頭部のヘッドギアには、カブトの角を模したパーツが追加されている。

翔の胴体部と肩に装着されたのは、ガタックとほぼ同型の青いアーマー。
両肩に装着された二対の刃と、ヘッドギアの左右に追加された二本の角は、ギラファノコギリクワガタの大顎のように内側に突起が並ぶ。

二人の姿を一言で纏めるなら、それぞれのシンフォギアにカブトとガタック、二人の仮面ライダーの姿を重ねたような形態。



祝え!天道響との絆がもたらした、マスクドライダーの力を宿す新たなシンフォギア。
その名も『カブトギア』及び『ガタックギア』、今、誕生の瞬間である!



『馬鹿な!?カブトが二人!それにガタックゼクターだと!?』

アキャリナは確信した。勝てない、と。

ただでさえ厄介なカブトが二人に増え、更には回収し損ねたガタックゼクターまでもがあちらの手に渡っているのだ。

プェロフェソプスは既に倒れ、ビエラは先程からこちらへ来る気配がない。

マスクドライダーの力を持つ者3人を相手取れる程の実力など、アキャリナには無かった。

ペラペラと喋っている間に、さっさとクロックアップで仕留めればよかったか……等とも考えたが、ハイパーゼクターが突進して来たのを思い出し、それもまた無駄であると確信する。

やがて、確信が絶望に変わった瞬間……アキャリナは撤退する事を決意した。

『クソッ!こうなりゃ逃げるが勝ちだ!』

アキャリナはクロックアップし、その場から逃げ去ろうとする。
しかし、その時点で彼の運命は既に決まっていたのだ。

「クロックアップ……」
「「クロックアップ!」」

【CLOCK UP】

「逃がすかッ!」

まず、翔が両肩のガタックカリバー・斬月を、柄に設けられたジョイントでドッキング。弓モードとして発射する。
タキオン粒子を圧縮して形成された光の矢は、アキャリナの背中に命中し、爆発する。

『ぐっ!?』

続いて空高く跳躍し、頭上からアキャリナの進行方向に回り込んだ響の拳が、アキャリナ胸部の甲殻を打ち貫いた。

『ぐはぁッ!?』
「まだまだッ!」

間髪入れず、アキャリナを蹴り飛ばす響。
その先にはカブトがカブトクナイガン クナイモードを手に立っていた。

「フッ!ハッ!ハァッ!」
『ごっ!ぐっ!?がぁッ!?』

陽光に煌めく刃が舞うように、何度もアキャリナを切り裂く。
そこへ追い打ちをかけるように、向かって来た翔が二対のガタックカリバー・斬月を振り下ろした。

「成敗ッ!」
『ぐおおおおおッ!?』

クロックアップが解除され、アキャリナは身体から火花を散らしながら地面を転がる。
逃げる事すら許されない。アキャリナはそう悟った。

ならばいっその事、悪足掻きでもするしかない。
カブト以外の2人は、先程ゼクターを得たばかりだ。慣れない力を使っている以上、隙が出来る可能性はゼロではない。

もはやアキャリナには、そこに賭ける以外に道は残されていなかった。

『図に乗るなよ……人間如きがァァァ!!』

身体中に生えた棘をミサイルのように飛ばす。
棘ミサイルはまるで雨のように、カブト達へと降り注ぐ。

「どりゃあああああああッ!」

しかし、棘ミサイルがカブトや翔を爆散させる事はなかった。
響の震脚で地面が捲れ、棘ミサイルを全て防いだのだ。

『何ィ!?くっ、クソッ!!』

瞠目するアキャリナ。しかし、驚いている暇はない。
ここで足掻かなければ死ぬのだ。右腕の鉤爪にエネルギーを溜め、接近する。

そんなアキャリナの聴覚を打ったのは、新たなる旋律だった。

「君が望む事なら──」

互いに顔を見合わせ、響が先行する。

振り下ろされるアキャリナの鉤爪に向かい、パワージャッキを展開した拳を突き出す。
ぶつかり合う拳と鉤爪。勢いよく伸縮したパワージャッキは、鈍い音と共にアキャリナの鉤爪を弾き飛ばす。

『ぐっ!』
「暴走を始めてる 世界を元に戻すにはもう──」

隙が出来たと言わんばかりに、響は更に一撃繰り出す。
腹部に拳を受け、アキャリナは後退すると共に再び棘ミサイルを発射する。

しかし、またしてもそれは撃ち落とされた。

〈流星射・五月雨の型〉

翔の放った矢の雨が、ミサイルの雨を相殺する。
撃ち漏らした分は、カブトによるカブトクナイガン ガンモードの射撃で撃ち落とされており、ただの一発さえも残らなかった。

「Moving fast 心の」
「時計走らせ」
「明日のその先へ……」

次の瞬間、カブトが動いた。
おそらくは初めて、彼女にとっての胸の歌を口ずさみながら。

「君のとなり 戦うたび 生まれ変わるッ!」

翔の放つ矢が棘ミサイルを撃ち落とし。

「目に見えるスピード越えてくモーションッ!」

響の拳が分厚い外骨格を砕き。

「いったい自分以外 誰の強さ信じられる?」

天道響……カブトのクナイガンがダメージを重ねて行く。

「「「光速のヴィジョン 見逃すなッ!」」」
「ついて来れるならッ!翔ッ!」

再び振り下ろされたアキャリナの鉤爪を、カブトは受け止めると翔の名を叫ぶ。
次の瞬間、アキャリナの右腕を青と灰色の刃が挟み込んだ。

「ライダーカッティング!」
【RIDER CUTTING】

蒼き稲妻と共に閉じられる大顎。
アキャリナ自慢の鉤爪は、一瞬で刈り取られた。

『うぎゃああああああああ!!』

右腕の切り口から火花を散らし、アキャリナは絶叫した。

(馬鹿な……俺が、負ける!?こんな、人間如きに……!?)

『何故だ……何故だ……何故だァァァァァァッ!!貴様ら人間如きが何故、我々に勝てるというのだ!?貴様ら虫ケラの……何処にそんな力がある!?』

口を付いて出たのは、死を前にしてなお湧き出る疑問。
ここまで追い込まれてなお、彼は納得しない。
侮っていた人間達に、ここまで追い込まれた原因に。

「あの人が言っていた。“人は人を愛すると弱くなる。けど、恥ずかしがる事は無い。それは本当の弱さじゃないから。弱さを知ってる人間だけが本当に強くなれるんだ”と。お前の言う弱さこそが、人間の強さだ」

「お前が絶対に真似る事の出来ない、人間の心に宿る炎。人はそれを愛と呼ぶッ!愛を持たないお前に、俺が屈する道理はないッ!」

「あなた達は自分の都合で、わたしの大切な人を傷付けた。だからわたしはこの拳を握るッ!わたしを立ち上がらせるのは、いつだってわたし自身が信じて握った正義だッ!」

アキャリナを取り囲む三人は、それぞれベルトのゼクターに手を当てる。
響とカブトはゼクターの脚、翔はゼクターの背部にあるスイッチを三回連続で押し、ゼクターホーンを元の位置へと戻す。

【ONE】【TWO】【THREE】

カウントと共に、ゼクターからのエネルギーがそれぞれの角へと収束する。

『愛に、正義……だと!?』
「そうだ。愛する人を守る為、自らの愛を貫く為に戦う。それが俺の、“男の道”ッ!」
「正義を信じて、握り締める。これが“わたしの道”ッ!」
「そして私の“天の道”」

それぞれが胸に抱く決意と共にゼクターホーンをもう一度倒すと、スパークしたエネルギーは三人の脚へと充填された。

「俺達は……」
「わたし達は……」
「「自分の道を貫き進むッ!」」

【RIDER KICK】

「「「ライダーキック!!」」」

〈我流・ライダーキック〉
〈雷抱吾蹴撃・戦神の型〉

翔と響、カブトは跳躍し、飛び蹴りを繰り出す。

三方向から挟む形でのトリプルライダーキック。
回避は不可能。防ぐだけの力も、今のアキャリナはない。
そして、彼はようやく悟った。自分の決定的な敗因は、風鳴翔に擬態した事だったのだと。

「ぐあああああああああああッ!!」

断末魔の叫びを上げ、緑色の炎と共にアキャリナは爆散した。

着地した三人は顔を見合わせると、ベルトからゼクターを外す。

変身と共にギアも解除され、響の手の中に出現したガングニールカブトゼクターも、空気に溶けるように消滅した。

「終わったな……」
「ああ。そのようだ」
「疲れた~……っと、そうだ」

肩の力を抜く翔と響。
ふと、響は何かを思い出したように翔の手を握った。

「翔くん、ごめんね。あんな事言っちゃって……」
「いや、俺こそ響の気持ちも考えずに……すまなかった。それから、信じてくれてありがとう」
「翔くん……。うん。わたしも翔くんの事、信じてた」

互いに頭を下げ、謝る二人。
微笑みを交わし、そして抱擁する。甘い空気を醸し出す二人に天道響はフッ、と微笑む。

そんな翔と響の周囲を、ゼクター達が冷やかすように飛び回る。

「天の道のわたし!その……ありがとう。何回も助けられちゃって」
「私の方こそ、すまない。……あの人の事となると、つい我を忘れてしまうんだ」
「じゃあ……お互い様、かな?」
「そういう事にしておこう」

響は天道響と握手を交わすと、翔も含めた三人でそれぞれハイタッチを交わした。

「おーい!翔!立花さん!」
「お前らー!」

そこへ、こちらに向かってくる声が聞こえる。
振り向くと、純とクリス、翼が駆けて来る所だった。

「翔、立花、終わったんだな?」
「ああ、終わったよ」
「ったく、心配かけさせやがって!」
「わぁ!?クリスちゃん、痛いよ~!」

翔に駆け寄る翼。響にアームロックを掛けるクリス。どうやら二人とも、翔と響を心配していたようだ。
いつも通りの平和な光景に微笑みながら、純は天道響に頭を下げた。

「ありがとう。二人が無事なのは、君のお陰だ」
「礼ならいい。それより、ビエラはどうしたんだ?まさか……」
「倒したよ。何とかね」
「倒した……!?クロックアップは!?」
「それは、後で本部に戻ってからね。今は皆、疲れてるだろうから」
「む、それもそうだな……」

ライダーシステムもなしに、純達がクロックアップをどう攻略したのか。とても気になるが、その前にやる事を見つけた天道響は、翼に声をかけた。

「翼、弦十郎さんに許可を貰えないだろうか」
「許可?何のだ?」
「厨房を使わせてもらいたい。疲れているんだろ?丁度いい時間だ。夕食は私が作る」

天道響の言葉に、響と翔が目敏く反応した。

「え!?ご飯作ってくれるの!?」
「まさか、天道料理まで完コピ出来たりするのか!?」
「味まではあの人に遠く及ばないが……この世界で一番の味だと自負している」
「じゃあさば味噌!さば味噌食べたいッ!」
「必要な材料は言ってくれ!今すぐ買ってくる!」
「お前らなぁ……がっつき過ぎだろッ!」

ここ数日、仮面ライダーカブトを一気見した影響でさば味噌を食べたがっていた響と翔は、既にテンションフォルテッシモだ。
呆れるクリスを横に、天道響は不敵に笑う。

「いいだろう。今夜の献立はさば味噌と──」
「マジで作る気かよ!?」
「へぇ、さば味噌かぁ。最近食べてなかったし、楽しみだね」
「司令から許可が降りたぞ。自由に使って構わないそうだ」
「よし。翔、立花、買い出しを任せる」
「「了解ッ!」」

そして、その日の夕方、翔達五人は天道響の手料理に舌鼓を打つのであった。



夕飯の席で、俺達は語り明かした。

天道が来たという平行世界の話では奏さんが生きていたり、小日向がシンフォギア装者になっている事に大層驚かされたものだ。

逆に天道響の方は、カブトの話題を熱心に聞いていた。
特に、カブト放送から13年後に放送された平成最後の仮面ライダー、『仮面ライダージオウ』内で描かれたカブトの後日談エピソード……特に加賀美カブトの件を感慨深げな表情で聞いていたのが、とても印象的だった。

あと、純達がカブト第1話にて天道がワームのクロックアップを破った方法を再現し、ビエラワームを倒した件も食い気味で聞いていた。
やっぱり、実際にカブトに変身して戦っている身からすれば、常人がそれを成し遂げたのは大きい事なのだろう。

夕食の後は、残る時間を最大限に使ってカブトを鑑賞していた。
全話、というわけにもいかなかったので、中でも特に良かった回と劇場版をピックアップしたダイジェスト上映会だったが。

ついでに平成仮面ライダー10作目記念作『仮面ライダーディケイド』のカブトの世界編、『ジオウ』のカブト回も見せたのだが……あれは一言で表すなら、アレだな。
語彙力を失ったオタク……みたいな。
平行世界扱いとはいえ、おばあちゃん登場。更に13年越しの加賀美カブトとなれば無理もない。
おばあちゃんとソウジの「語録」もちゃっかり暗記していた。

そして、今……。

「今回は本当に助けられた。共に戦えた事に感謝する」
「私は私の役割を果たしただけ。でも……その気持ちは受け取っとく」

ネイティブとの連戦の疲れを癒す為、二課で一晩休息を貰った天道響が今、自分の世界へ帰ろうとしていた。

今は本部の聖遺物保管区画、ギャラルホルンと呼ばれる完全聖遺物の前で、姉さんから一人ずつ、天道響へと別れの挨拶をしている所だ。

「そっちのあたしに宜しくな。お前の居場所は目の前にある。手放すんじゃねぇぞ、って言っといてやってくれ」
「ああ」
「僕からは、そうだね……。そっちの世界のクリスちゃんと、これからも仲良くしてくれると嬉しいな。知っての通り、クリスちゃんは寂しがり屋だから──」
「それは言わなくてもいいっての!」

言われる相手は平行世界の自分だと言うのに、クリスは慌てて純の口を塞ぐ。
そのやり取りに、天道響はフッと笑った。

「勿論だ、爽々波。お前こそ、クリスと末永くな」
「約束するとも。クリスちゃんと、世界で一番幸せになるって」
「なっ……ジュンくん……!?」

純の発言で真っ赤になるクリスに、周囲がドッと笑った。

そして、遂に俺達の番だ。

「本当にありがとう、天道。君に出会えてよかった」
「わたしも、色々あったけど、あなたに会えてよかった! また、会えるかな?」

響からの言葉に、天道は少し考えてから口を開いた。

「言ったでしょ。たとえ離れていても、心と心が繋がっている。たとえもう会えなくても、私が消えるわけじゃない」

やれやれ。こんな時まで天道総司らしく、かっこよく決める辺りが彼女らしいんだけど……別れの時くらいもう少し素直でもいいじゃないか。

というわけで、そんな天道にはこれを贈ろう。

「はいれ、俺達からのプレゼント。お土産だと思って持っていくといい」
「……これは?」
「大きい方が翔くんからで、こっちの薄い方がわたしからだよっ」

天道は渡された紙袋を、訝しげに見つめる。

「立花のは、大きさからしてCDか? 翔のは……何だ? 菓子か何かか?」
「中身は空けてのお楽しみだ」
「ふっふ~ん、帰るまで開けちゃダメだよっ!」
「……まあ、楽しみにしとく」

ちなみに中身はカブト関連楽曲が一枚になったCDと、某玩具会社から発売されているハイクオリティなヒーローフィギュア。

天道の驚く顔が見られないのは残念だけど、きっと喜んでくれるはずだ。

「翔、この言葉をよく心に刻んでおけ。あの人が言っていた……“男がやってはいけないことが二つある。女の子を泣かせる事と──”」
「「食べ物(ごはん)を粗末にする事だ」だ!!」
「……分かっているなら、それでいい」

またしても台詞を先取りされる天道。
しかし、今度は拗ねない。寧ろ、どこか晴れ晴れとした笑みを口元に浮かべ、天道はハイパーゼクターに触れた。

「またいつか!」
「今度はわたし達の方から行くからね!」

眩い光と共に、天道の姿はこの世界から溶けるように消えていった。

「またね……天の道を往くわたし」

これは、世界の壁を越えて二人の響が出会う、不思議な日の物語。
新たな絆が結ばれ、翔と響の信頼がより強くなった、とある一日の出来事だ。






そして……。



(奏が私と羽ばたき続けている世界、か……)



ゆっくりと、密かに忍び寄る暗雲に気が付いた者は、誰もいない……。 
 

 
後書き
天撃コラボ、完ッ!

コラボの申し出を受けてくれた、通りすがりの錬金術師さん。本当にありがとうございました!
プロフに「コラボとかしてみたいなぁ」と書いてあったので声をかけたのが切っ掛けとなったこの企画。最後まで完遂出来た事は互いにとってプラスとなる事でしょう!

伴装者も天道撃槍も、お互いG編に突入しましたね。
これからも応援してるので、無理ない範囲で頑張って下さい!

え?なんかラストが不穏だって?
ナンノコトカナー、ワカラナイナーw

まあ、勘のいい読者は「ヒロさんまた何か企んでるよ」程度に考えていただければw
あ、だからってコメ欄で展開予想なんて野暮はナシですよ。特に某氏は癖でやりがちだから注意!

それでは、次回もお楽しみに! 
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