DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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愛しい女(ひと)
<ダーマ神殿>
「な………何で…此処に居るの………?」
「リュカ!!」
リュカの驚きの声に、美女は笑顔で抱き付きリュカの名を叫ぶ!そして徐に唇を重ね濃厚で濃密なキスをした。
「母さん、どうかしまし………うわっ!!」
あまりの出来事に驚き固まるアルル達の後ろから、16.17歳の金髪の美少年と6.7歳の黒髪の美少女が現れ、現状を見て絶句する!
「…ぷはっ…ティ、ティミー…それにマリーまで…どうして此処にいるの!?…っん!」
リュカは何とか美女の強烈なキスから口を離し、美少年と美少女に疑問を投げかけたのだが、再び美女にキスで口を塞がれ、それ以上喋る事が出来ないでいる!
「まぁ素敵!お父様とお母様がラブラブですわ!」
「ちょっと母さん!こんな公衆の面前で…それに父さんに状況を説明しなきゃならないんですから…」
美少女はキラキラした瞳で二人に見とれ、美少年は辟易した表情で二人を引き離す。
「え?なに!?ビアンカ…どういう事?…ちょ…ティミー…説明してよ!…あれ?マリー…?何で君まで居ちゃうの?」
珍しく混乱気味のリュカとアルル達を、ティミー達が使用している部屋へ誘い、現状の説明を始める。
「…父さん…落ち着いて聞いて下さい…父さんは本に吸い込まれ、物語の中に居るのです!」
「あ゛!?何言ってんの?大丈夫、お前…?」
「父さん…憶えてないんですか?本に吸い込まれた事を…」
「それは憶えてるよ!落書きしたら本のヤツが怒って、僕をこの世界に放り出したんだ!」
「そうです…そして父さんが行ってきたこれまでの冒険は、物語としてあの本の白紙のページを埋めているのです!」
ティミーは重い口調で、これまでの状況説明をリュカにする。
「へー…じゃぁ、この物語の結末は?」
「…いえ、まだ物語は途中で…」
ティミーとは対照的に軽い口調のリュカ…
「相変わらず頭が固いな、お前は!だから何時まで経っても右手が恋人なんだよ!」
「(イラッ)父さんこそ相変わらずですね!」
「いいかいティミー…此処は物語の世界ではない!僕等の住んでいた世界とは別ではあるが、此処も現実世界なんだよ。あの本に書き綴られているのは、いわば伝記の様なモノだ…しかも現在進行形で綴られる…」
「た、確かにそうですが…表現の違いでしょう!状況は変わりませんよ!」
「違うね!物語だったら、基本ハッピーエンドになるだろうが、現在進行形の伝記は何が起こるか分からないんだ!この先、死ぬ事だってあるかもしれない…スタンスが変わるんだよ!」
「くっ…で、では…尚のことこの世界から抜け出さないと!」
「うん。そうだね…で、君達はどうして此処に来ちゃったの?」
やっとこの世界へ飛ばされた経緯を話し始めるティミー…
・
・
・
「………と、言うわけで僕が吸い込まれ、助けようと手を差し伸べてくれた二人と共に、この世界へと放り出されました…」
「な!!こ、この馬鹿野郎!!」
(ドカッ!!)
急にリュカは激怒し、ティミーを拳で殴りつけた!
「お前、助かりたい一心でビアンカを巻き込んだのか!?よりによってビアンカを!!」
「リュカ!許してあげて…ティミーは悪くないの!私が手を掴んだからいけないの…」
「お父様ー!お兄様を叱らないで下さい!不幸な事故なんですぅ!」
リュカに殴られ、口から血を流すティミーを庇う様に、ビアンカとマリーがリュカに抱き付く!
「お前にとってビアンカは只の母親なんだろうが、俺にとっては命より大切な存在なんだ!…それなのにこんな危険な世界に連れてきやがって!手を捕まれたとしても、振り払うぐらいしろよ!」
「…も、申し訳ありません…父さん…」
口の血を手で拭い、項垂れるティミー…
体を震わせて怒るリュカに、アルル達は声を出す事が出来ない。
そんな状況を打破してくれたのは最年少の少女だった!
「酷いですわ、お父様!!お母様の事は心配するのに、私がこの世界へ来てしまった事では怒らないんですのね!」
頬を膨らませリュカを睨むマリー。
「あ、いや…違うって…マリーの事でも怒ってるよぉ…」
「でも私の名前は出ませんでしたわ!」
「いや…それは咄嗟だったから…」
「お兄様も咄嗟の事でお母様と私の手を掴んでしまったんですわ…お父様と同じです!もう許してあげて下さい」
さすがのリュカも反論できなくなる…
リュカは目を瞑り深く深呼吸をする。
そして目を開けティミーに近付き、切れた唇に手を当て『ホイミ』を唱えた。
「あ、ありがとうございます…でも、これくらいでしたら自分で治せますから…」
「僕が付けた傷だ…僕が治さないとね………娘に嫌われたくないし…」
どうやら家族間の傷も治った様だ。
「さて…ビアンカがこっちの世界に来ちゃったという事は…アルル、悪いんだけど…僕はこれ以上旅を続ける理由が無くなっちゃた…」
「はぁ~!?い、いったい何を言ってるんですか?旅をしながら元の世界へ戻る手立てを探すんでしょう!?」
リュカの信じられない言葉に、みんなが驚き睨む!
「うん。僕が元の世界へ帰りたかった理由はビアンカなんだよね。大好きなビアンカが、向こうの世界に居るから帰りたかったんだけど…こっちに来ちゃったからねぇ…帰る理由が無くなっちゃった!もう王様なんかやりたくないしぃ…ビアンカとこっちの世界で、イチャイチャ平和に暮らすのもありじゃね?」
「ありじゃありません!仕事はどうするんですか!?現在、国は大変な事になってるんですよ!」
「じゃティミーがアルル達に付いて行って、元の世界に帰ればいいじゃんか!ついでに王位を継いでよ!そうすれば僕が帰らなければならない理由も無くなるし!うん。そうしよう!…頑張って、ティミー国王陛下♥」
「いい加減にして下さい、リュカ国王陛下!グランバニアの国民は、貴方の情けない息子の事より、貴方自身を望んでいるんですよ…たった数年で国力を倍にした貴方を…」
「ちょ…ちょっと待ってよ!え!?何?国王…陛下?リュカさんが…?嘘…マジ…!?」
リュカ親子の会話に割り込み、ウルフが話を脱線させる。
「前に言ったじゃん…王様してた事…忘れちゃった?」
「た、確かに…言ってた…け、けどさ!」
「ウルフ君!悪いんだけど、後にしてくれないかな…確かに父さんは、いい加減で、チャランポランで、不真面目で、女誑しで、トラブルメーカーだけど…これでも立派な国王なんだ!嘘みたいだけど、国民の支持が極めて高いんだ!だから説得の邪魔をしないでくれ」
「ご、ごめんなさい…」
「いや、謝る事はないよ。…それに君達にも死活問題なのでは?…確かに父さんはトラブルを引き寄せるし、戦わず歌を歌い傍迷惑だけど、危険な旅路では生存率を上げる効果もあると思うんだ!」
「わぁ…息子の言葉から、父への尊敬の欠片も見つけられない…」
「何を今更…大分前からでしょ」
「えぇぇぇ!マジッスかビアンカさん!気付かなかったなぁ…」
アルルはイチャ付く夫婦に詰め寄り説得をする。
「リュカさん!元の世界に帰らないのは構いませんけど、この世界を平和にする旅には来て下さい!まだ私はリュカさんから学びきってません!」
「え~…危険な事は嫌いなんですけど~」
「何だよ!リュカさんどうせ戦闘しないんだからいいじゃんか!」
「どうせ戦闘しないんだから、行かなくてもいいじゃんか!」
「「「くっ!」」」
ティミー・アルル・ウルフが説得するも、揺らがないリュカ。
そしてビアンカが、マリーにそっと目配せをする…
「お父様…お父様とお母様が帰らないのならば、私もこの世界に残ります!…でもアレですよね…この世界ってどこもかしこも治安が不安定で、私みたいな幼い少女は攫われちゃうかもしれませんよね…攫われちゃったら、あーんな事や、こーんな事をされちゃうかも…平和な世界かぁ…まぁ私はお父様とお母様が居れば幸せですけどね!」
「マリーをダシに使うなんて…ズルイよ!」
「ふふふ…ごめんなさいリュカ。でも、勇者様が2人も居る旅なのだから、そんなに危険じゃ無いわよ…それにアルルちゃん達も強くなってきてるじゃない」
「………僕等の勇者様の装備が情けないんだけど…コイツ、グランバニアの剣しか装備してないよ!」
「仕方ないじゃないですか!僕はグランバニアの兵士なんだから!それにこの剣はザイル君が作ってくれた特注品ですよ!」
憤慨するティミーを見てビアンカも援護に回る。
「そうよリュカ!ティミーはもう一人前なんだから…装備は関係ないわ!…それに私は帰りたいわ…お父さんが向こうの世界に居るのだから…」
ビアンカの一言が決め手だったのだろう…と言うか、最初からビアンカが説得していれば早かったのに…
「分かったよ!ビアンカにお願いされたら、断るわけにはいかないじゃんか!」
辛うじてリュカの随行が決まり、安堵する面々…
そして、やっと互いの自己紹介が始まった…
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