パウチの砦
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第四章
「どっちがどっちかはっきりわかるわね」
「そうね、人相が悪い人達と普通の顔の人達でね」
「小人さん同士戦っていて」
「善悪までわかる感じね」
見れば彼等はアイヌ語というか北海道の方言で喋って言い合っていた、聞けば攻める普通の人相の者達が人相の悪い者達をしきりに責めていた。
人相の悪い者達は居直りそのうえで奇岩達の中に籠っていた、そうしているがやがて普通の顔の小人達がだった。
人相の悪い小人達を圧倒的な数で押し奇岩達を占領していった、すると人相の悪い者達は後ろの方に逃げていった。
すると普通の顔の小人達は勝った勝ったと喜び立ち去っていった、戦利品の食いものや宝は持ち去ったが捕虜は手に入れていなかった。
その戦を最後まで見てから奈津美は理恵に話した。
「終わったわね」
「そうよね」
「どうやら」
「そうなったわね」
「普通のお顔の人達が勝ったわね」
「小人さん達の中で」
「人相の悪い小人さん達逃げたし」
見れば彼等は次第に戻ってきている、そうして奇岩達の方に入って敵が去った方に対して悪態をついている。
「戻ってきてるけれど」
「あの人達が負けたわね」
「間違いなくね」
「そうなったわね」
「何で戦争したかわからないけれど」
「それでもね」
「勝ったのはあの人達ね」
戦争の趨勢は明らかだった、そしてだった。
理恵は奈津美にこう切り出した。
「まあ何があったから見たから」
「それでっていうのね」
「山登り再開する?」
「そうね、まだ時間あるし」
「それで頂上まで行って」
「景色も楽しむのね」
「そうしない?」
こう提案するのだった。
「これから」
「そうね、山登りより凄いもの見たけれど」
「それでもね」
「今はね」
まさにというのだ。
「折角だから」
「そうしましょう」
こう話してだ、そしてだった。
二人は再び山登りをはじめた、途中で昼食の時間になったのでそれを食べて頂上に着くと景色を楽しんで山を下りた。
二人は暫く北海道旅行を楽しんだ、理恵にとっては里帰りを。そうしてだった。
奈津美は彼女の実家に戻り二人は暫し別れ夏休みが終わってから東京にある二人が通っている大学で再会した、この時にだった。
理恵は奈津美に講義がはじまる前の講堂でこう話した。
「層雲峡のことだけれど」
「あの小人さん達の戦いね」
「あれね、一方はコロボックルだったけれど」
それがというのだ。
「もう一方はパウチっていう小人だったのよ」
「北海道の小人ってコロボックルだけじゃなかったの」
「そうなの、後で私もアイヌのお年寄りに知り合いがいてこのことお話したら」
「教えてもらったのね」
「人相の悪い方がね」
そちらがというのだ。
「パウチって言って悪い小人だったのよ」
「そうだったのね」
「もう悪さばかりして」
そのパウチという小人達はというのだ。
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