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GATE ショッカー 彼の地にて、斯く戦えり

作者:日本男児
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第3話 外交

ファーストコンタクトの後、アルヌスの自衛隊基地にて、双方の外交官が国交開設に向けた事前協議を行うということなった。とりあえずは両国及び両世界の紹介程度にすませる予定だ。


一見、世界征服したショッカー世界には他国との交渉が仕事の外務省など、不要だったのではないのかと思うだろうが、実際は世界征服後の方が多忙だった。最初こそ、外務省など不要として廃止が検討されていたが、1988年に異次元よりクライシス帝国が50億人もの人民の移住を求めて交渉を要求したことで政府は外務省に交渉を要請。外務省の巧みな交渉で当時、問題となっていた鏡の中の世界、ミラーワールドに生息する人食いの化け物、ミラーモンスターによる神隠し問題をクライシス帝国と共闘することによって解決し、その見返りとしてミラーワールドにクライシス自治区を設置したことでなんとか存続させることができた。その後もグロンギ族を始めとする人類とは異なる異種族と初めて接触した際に交渉をする為、今でも政府の主要機関として残っていた。


陸上自衛隊アルヌス基地 会議室 

「日本国 外務省外交官の菅原浩治(すがわらこうじ)です。」

「ショッカー 外務省外交官のクリス・ピーターソンです。」 

菅原はクリスと名乗る白人の外交官が流暢な日本語を話したことに驚いた。

「!!日本語を話されるのですか!?」

「いえ、喉に埋め込んである超小型自動翻訳装置のおかげです。大きさはミジンコほどですが、これのおかげで相手が未知の言語を話していても会話が成立するのです。」

菅原はショッカー世界の科学力の高さを垣間見たような気がした。


菅原は日本側の世界と日本国を紹介した映像をノートパソコンで再生してクリスに見せてプレゼンする。

「我々の世界は人口73億人、200以上の国家があり、我が国、日本国はユーラシア大陸の東側に位置しており、37万8000キロメートルと1億2600万人の人口を有する島国です。豊かな自然と長い歴史を誇り、国花は桜、通貨は円です。さらに政治体系は民主主義であり、国と国民の象徴でもある天皇と呼ばれる方もおります。北アメリカ大陸にあるアメリカ合衆国とは安全保障条約を結んでいます。」



しかしクリスは菅原の予想に反して、表情一つ変えなかった。そんなことは知っていたからだ。むしろ征服前の日本国から何も変わっていないことに安心感と呆れを覚えそうになっていた。

だがそれと同時に………

(日本側の世界……あの映像、やや古くないか?いつ頃の映像だ?)

クリスは映像に映っていた日本側の世界がショッカー世界の水準から見てややレトロに見えたことに違和感を感じた。

そしてクリスは恐る恐る菅原に尋ねる。

「Mr.菅原、貴国の世界の現在の西暦は何年ですか?」

「西暦2016年ですが……そちらはどうですか?」

2016年と聞いて、何かを察したような顔をしたクリスを見て菅原が尋ね返す。

「…我々の世界の西暦は2073年です。」

一気に会議室の雰囲気が重くなる。

菅原はショッカーとの技術格差がどれくらい離れているのか気になり、質問した。

「……1つ質問したいのですが……あなた方から見て我々の技術力は西暦何年頃と同じくらいですか?」 

「……その、失礼ですが貴国の技術力は我々から見て…総合的に……1990年代レベルです…はい。」

「我が国の……技術力が……1990年代レベル………。」

菅原は卒倒しそうであった。ショッカー世界とは軽く半世紀以上は差があることを知ってしまったからだ。

それから、菅原は顔面蒼白のまま、日本側の世界の紹介を始めた。
アメリカやロシア、中国などの大国の話やEUなどの国家間の共同体、その他にも世界や経済の情勢の話をした。
クリス達、ショッカー世界の人間からすれば、偉大なる大首領様がいなかった「ifの世界の話」であり、統率の取れていない混沌とした世界のように感じた。

「では日本国は何故、この世界に?」

しばらくしてからクリスは菅原に質問した。この回答によってはショッカーは日本国との全面戦争を覚悟しなければならなかった。

「我が国は『門』から現れた『帝国』と名乗る武装勢力に銀座を攻撃され、一般市民を虐殺されました。よって、この世界へは容疑者首謀者の逮捕と補償獲得の強制執行、並びに調査の為、来ました。あなた方と敵対するつもりはありません。」

クリスは菅原が帝国を武装勢力、皇帝を首謀者と呼んだことを疑問に思った。
しかし、1つのことを思い出した。

(そうか、日本国はまだ憲法9条を守っているのか……。)

ショッカー世界での日本国は1973年に滅亡し、ショッカーが直々に統治する日本エリアとなった。そして当たり前ではあるがその時に日本国憲法は消滅していた。

確かに交戦権の否認を謳った憲法9条を守ったまま帝国軍と戦うには帝国を武装勢力として「逮捕」の名目で軍を…もとい自衛隊を送るしかない。

(難儀なこった。さしずめ国内ではまだ自衛隊の派遣に賛否が別れてるな。
これは使えるぞ。)

クリスが今後の対日外交に頭を巡らす。


「そろそろ休憩時間ですね。日本国の皆様、ありがとうございました。」

「ええ、次はショッカーの紹介ですね。お手柔らかにお願いします。」

菅原はハハッと苦笑いしながら退室した。


数十分後……………。


「次は我々、ショッカーの番です。」

(どんな国何だ?SFチックな世界なのか?それとも……。)

菅原は覚悟を決める。心の中では相手が平和的な勢力であることを祈っていた。

「まず初めに私達、ショッカーには国名に当るものが存在しません。なぜなら我々の世界はショッカーによって統一されており、他に国がないからです。」

「なっ!?世界を統一!!??」

「ええ、我々の世界はショッカーによって1973年に世界統一政府が発足しました。各国の軍隊は防衛軍として統合され、それ以来、民族間の争いは起こっていません。」

「そんな馬鹿な!!それに世界を統一しているとしたら人口はどれくらいいるのですか!?!?」

「人口は550億人おります。」

「はぁッ!?!?550億人!?!?地球に550億人もどうやって住んでいるのですか!?!?」
 
とうとう菅原が取り乱して、立ち上がる。

「えーと、居住地域としましては、まずは地球。地表、地下及び深海の3つですね。さらにミラーワールドや火星などの宇宙空間も加えると…。」

「ちょっと待ってください。ミラーワールドとは何ですか!?それに火星!?あなた方はテラフォーミングまで行っているんですか!?」

!!!!!!!

(我が世界で常識となっているミラーワールドを知らないだと!?それに火星移住にそこまでの反応を見せるとは、日本国の技術力はどこまで低いのだ!?)

今度は逆にクリスが驚かされることになった。ミラーワールドと言えばショッカー世界では1980年代にはその存在が判明しており、さらに火星の地球化に至っては1990年代には完了して移住が始まっていたからだ。2016年になってもミラーワールドを未だ発見していない日本世界に完全に呆れ果てていた。

「ミラーワールドというのは、簡単に言えば鏡の中の世界のことです。我々はそこに数ある異種族の自治区を設置しております。そしてミラーワールドには250億人が植民しています。さらに宇宙空間では火星のみならず水星、木星、金星、土星など、及びそれらの衛星にも植民しております。」


菅原は開いた口が塞がらなかった。
鏡の中の世界や太陽系の惑星の植民などと言われてもあまりにSF過ぎてにわかに信じられなかった。さらに菅原は1つだけ分からない単語が出てきたので恐る恐る訪ねた。今度は明らかに生気が抜けたような声だった。

「……先程から異種族という言葉が出てきますが、あなた方の世界には人類以外の種族がいるのですか?」

「はい、代表的なものを挙げるならば
異次元空間である怪魔界の滅亡から逃れようと移住を求めてやって来た『クライシス人』。古代の戦闘民族『グロンギ族』。死者が蘇った存在『オルフェノク』。他にも、動植物が巨大化して人間並みの知能を持った『獣人』などがいます。彼らの中には人間社会で共存している種族もいますし、自治区を作ってそこの中だけで生活を営んでいるものもいます。」


ここまで聞いて菅原は口をパクパクさせながら放心状態のまま立ち尽くしていた。


(本国にどう報告すればいいんだよ!
ここまでの技術格差があるなんて!!
それに異次元人!?死者の復活!?
国内だけじゃなくてアメリカに中露、それにEU諸国が何て言うか!?)

菅原はこれから待ち受けるであろう出来事に嫌気がさした。

その後、クリスは帝国と戦争に至った経緯を説明した。菅原は納得し、ようやく席に着いた。

(絶対にショッカーと対立してはいけない!!
もし戦端を開けば我が世界への『門』は奪われ、日本は負ける……いや滅びてしまう!!)

菅原はポーカーフェイスのまま、決心した。

そして以下の4つが同意事項として決定した。


ショッカーと日本国の同意事項

〇日本国とショッカーは互いに国交樹立に向けた話し合いを継続すること

〇日本国とショッカーは不可侵条約締結に向けた話し合いを継続すること

〇為替レートを早急に整備すること

〇共通の敵である帝国との戦争を比較的速やかに終結させるべく、共闘すること





数日後、日本政府が緊急記者会見を開き、ショッカーの存在と同意事項の内容を公開した。

「我々は『特地』にて、我々と同じく帝国に侵攻されたもう1つの『門』の異世界勢力『ショッカー』と接触し、国交樹立に向けた協議を行いました。」

「……………………。」

少しの間、カメラのフラッシュすらやみ、沈黙が訪れる。
そして、記者達が一斉に質問をした。


「それはどういうことでしょうか!?」
「特地とは別の異世界があったということですか!?」
「ショッカーについて詳しく教えて下さい!!」
「国会の承認無しにそんなことを行ったのですか!?」


また、この会見でショッカー側の世界の情報、特に技術格差や政治体制などがオブラートに包んで公開された。
またショッカーと日本国との交流の為、ショッカー側の人物数人が日本側に送られることが決定していることが発表され、大きな話題を呼んだ。
また、米中露などの諸外国は特地とショッカーに関する情報収集を強化した。



国会議事堂前

「独裁国家との国交締結に反対!!」
「ショッカーとの共闘はかつての軍国主義への道だ!!」
「自衛隊は異世界の侵略軍と手を組むな!!戦争より友好を!!!」

群衆が首相官邸や各省庁の前に集まり、プラカードを掲げて怒号をあげる様は正に狂気そのものだった。

東京ではいつものようにプロ市民達が的外れな平和デモを行っていた。
行われているのは国会議事堂だけでなく首相官邸及び各省庁の前でも行われていた。

国内メディアも彼らを英雄視する報道を行い、日本国とショッカーとの国交樹立を邪魔するような報道を垂れ流していた。

これらの国内世論が複雑に絡み合い、恐ろしい結果を招くことになるとはこの時、誰も知る由もなかった。




日本エリア 東京 ショッカー本部ビル
極秘地下20階 

  

     『世界統治委員会』

1975年に日本エリアにて世界中を世界征服後に東アジア以外の地域の統治をやりやすくする為、アフリカを『ゲルダム団』に、北米大陸をGOD機関に、南米大陸を『ゲドン』、ヨーロッパを『ネオショッカー』、オセアニアを『デルザー軍団』、地球の地下及び深海は『バダン』、月や火星などの地球外惑星は「ゴルゴム」等の6つのショッカーの下部組織にそれぞれ管轄区を振り分け、統治を行わせた。それからそれらの統治に関わる人物の会議の元に設立されたのが「世界統治委員会」である。
多くの不可解な事件や事故に関与していると言われており、そして存在自体も極秘である。
なお、その後は5つの下部組織のみならず、「財団X」等の大企業やクライシス自治区を始めとした異種族の自治区のトップも参加するまでになった。
 

「第257回世界統治委員会議を開始する。今回の議題は『門』の向こうの勢力、帝国との戦争についてだな。さて我がショッカーはどうするべきだろうか?さて、諸君、意見を。」

白いスーツの上から裏地が赤い黒マントを羽織った白髪の老人が会議の開始を宣言した。

すると白い服を来た透明なカプセルを被った血管が浮き出た顔した紳士が手を上げる。

「では、『デルザー州』のジェネラルシャドウ、意見を。」

「はい、死神博士。我がデルザー軍団は帝国の占領、帝国軍の解体、そして彼の地に一部の人民の移住を求めます。なぜなら我が州の人口は数年後にはピークに達する見込みだからです。」

すると赤い兜と黒い服、白マントを纏った怪人……アポロガイストが挙手した。

「GOD機間もそれに賛成だ。我がGOD州も同じく増加の一途を辿る人口問題を抱えている。
異世界に我が州の人口の少しでも送り出したいところだ。さらに異世界の調査の結果、ミラーワールドの存在も確認できた。これを利用しない手はないのではないか?」

ショッカー側の調査では異世界にもミラーワールドがあることが判明しており、さらにいいことにミラーモンスターやそれに類する存在も確認されていなかった。よってこの委員会や防衛軍でも異世界はショッカーが世界各地で抱える人口問題を一気に解決できる唯一の方法として見ていた。


「我々、クライシス自治区としても移民は賛成なのだが……不確定要素が1つだけあるぞ?
日本国だ。彼の国が我々の邪魔をする可能性はないのか?」

黒マントを羽織った金色に輝く鎧とマスクを身に纏った将軍と呼ばれる男、旧クライシス帝国将軍であり、クライシス自治区副長官のジャーク将軍が発言した。

「それに対しては大丈夫でしょう。
彼の国に送った工作員からの情報では
日本軍……いや、ジエイタイでしたかな?彼らは憲法で軍隊の保有と交戦を禁じられているのです。」

ゲドン州長官の十面鬼ユル・キミルが両腕を組んで言う。

「何!?帝国に一般市民を虐殺されておいてか!?!?では異世界に逆侵攻してきたのは何故だ!?さらに軍隊を否認だと!!それではどうやって国を守るというのだ!!??彼らに誇りはないのか!?」

「クリス外交官の報告によると彼らは異世界を『特地』と呼び、それまで未確認だった土地と住民がいた日本国内として、特例法を制定してジエイタイを派遣したようですね。
強弁もいいところですが…………。」



まさか国を守るはずの自国軍を否認する……そんな国家があろうとは。
会議室になんとも言えない呆れた空気が流れる。

「しかし我々は帝国とは違い、日本国から見れば圧倒的な技術力を誇る未知の勢力です。武力衝突するようなことにはならないかと。
仮に我々に挑んできたとしても特地にある日本国の戦力は3個師団程です。ここで我々と戦えば、我々は傷1つ負うことはありませんが、日本国は自衛隊の師団を3個も失い、最悪、『門』を奪われて侵攻され、国家そのものが消滅することを考えるでしょう。だから対立ではなく、共闘を選んだのでしょう。」


すると、白い詰襟の無表情の男がドアを開け入室する。

「遅れてすみません。
財団Xから参りました。
加頭順(かずじゅん)と申します。」

そう言うと加頭と名乗る男は席に着こうと円形テーブルに近づくが、その際、持っていたアタッシュケースを落としてしまった。
だがすぐにヒョイと拾い上げる。

加頭は表情一つ変えずに謝罪する。

「貴様!遅刻とはたるんどる!!
それにさっきの謝罪、本気なのか!?
悪びれた様子は見られなかったぞ!!」

アポロガイストが立ち上がり激昂する。

「本気です。
よく言われるんですよ。感情が込もってないから本気だと思わなかったって。」

「じゃあ、感情を込めて誠意を見せろ!!常識だろ!!??」

アポロガイストが立ち上がって剣を加頭に向ける。

加頭も通常のガイアメモリより強力なゴールドメモリをアタッシュケースから取り出すと立ち上がりメモリを起動する。


『ユートピア!!』


するとメモリが勝手に動き出し、専用装着式ベルトに刺さってユートピア・ドーパントに変身した。

一触即発の空気が会議室を包む。

「そこまでにしろ!!仲間割れとは嘆かわしい!!席につくのだ!!」

死神博士が2人を制止し、2人は渋々、席に着いた。


会議はその後も続き、その議題はいつしか、帝国から日本国、そして日本世界の国々との外交に関するものに変わっていった。
 
 

 
後書き
次回予告 

連合諸王国軍が倒され、ショッカーと日本国は合同で異世界の調査を行う。
その際、異世界の怪物……炎龍が襲ってきて………。


乞うご期待!! 
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