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慣れていけばいい

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第二章

「そうしてあげましょう」
「そうしてあげよう」
 太郎は妻の言葉に頷いた、そしてだった。
 二人は警官から犬の名前を聞いた、名前はなかった。大渓はそんなもの名付けずただ虐待していただけだったのだ。
 だが性別は聞けた、雄だったので。
「名前はグレッグにしようか」
「そうね、いい感じね」
 妻は夫の考えた名前に反論しなかった。
「この子に合ってるわね」
「よし、じゃあこの子はグレッグだ」
「そう呼んであげましょう」 
 名前は決まった、そしてだった。
 グレッグは二人の家に入った、だが。
 グレッグは家に来ても二人を恐れ部屋の隅に行くとそこで二人を怯えきった目でみながら震えるばかりだった、その彼を見て。
 太郎は芳恵にこう言った。
「少しずつでもね」
「慣れていってもらうのね」
「僕達にね」
「そうしてあげるのね」
「まずはご飯とお水をあげて」
 食べて飲まないとどうにもならない、それでだ。
「そっとしておいてあげよう」
「そうしてあげるのね」
「この子は毛並みも悪いしかなり痩せているよ」
「碌に食べさせてもらえてなかったのね」
「だからね」
 それでというのだ。
「ここはね」
「ご飯とお水を用意してあげて」
「食べて飲んでもらおう」
「そうしてもらうのね」
「そうしよう」
 こう言ってだった。
 二人でドッグフードを入れた皿と水を入れた皿を出してだった、グレッグをそっとした。するとグレッグは。
 二人は怯えたままだったがご飯と水には警戒しつつ少しずつ近付き食べて飲みはじめた、その食欲はかなりのもので。
 全て平らげた、太郎はその様子を見て微笑んで言った。
「うん、全部食べて飲んだから」
「まずは安心ね」
「あとトイレも用意したら」
「そこでしてくれたらね」
「いいね、ただトイレは置いても」 
 それでもとだ、夫は妻に話した。
「言わないでおこう」
「あれこれとは」
「あそこまで怯えているから」
 だからだというのだ。
「ここはね」
「あえて言わないで」
「トイレは置くだけで」 
 グレッグが今いる部屋にというのだ。
「そしてね」
「そっとしておいてあげるのね」
「そうしよう」
 こう言ってだった、そのうえで。
 トイレは置くだけにした、すると。
 食べて飲んで暫くしてからだった、グレッグはそこで用を足した。そしてまた部屋の隅に戻ったが。
 その様子を見て太郎は芳恵に言った。
「トイレもしてくれたし」
「このことも安心ね」
「トイレは僕達で処理してご飯とお水も」
「また入れてあげればいいわね」
「そうしたらね、だからね」
 それでというのだ。
「後は穏やかで優しい声をね」
「かけてあげればいいわね」
「笑顔をね、そして少しずつ」
「私達に慣れてもらえばいいわね」
「そうしていこう」
「酷い目に遭ったのなら」
「今度は楽しい目に、いやどんな子でもね」
 それこそという口調でだ、太郎は言った。 
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