汚くなんかない

　　　　　　　　　　　　　　　汚くなんかない
　戻橋香蓮は道の端にいる一匹の小さな猫を見て言った、見れば前足の先と口の周りが白い黒猫だ。毛はボロボロで全身汚れている。
「あの子拾おう」
「あの子もか？」
「そう、それでジュリーと一緒に飼おう」
　それぞれの仕事の後で落ち合って同性しているマンションまでのデートを楽しんでいる中で彼氏の花田勝利に話した。淡い茶色のふわふわとした長い髪の毛と穏やかで優しい感じの顔が印象的である。背は一六〇程ですらりとしたスタイルでズボンがよく似合っている。
「うちでね」
「そうするか、しかし」
　勝利はその猫を見た、随分弱々しく道の隅にいるその猫を。
「また汚れた子だな」
「そうよね、けれどね」
「ああ、どんなに汚れていてもな」
「お風呂に入れたら」
　それでとだ、香蓮は勝利に話した。一八七ある長身でしっかりとした体格の彼に。髪の毛は角刈りでいかつい顔立ちである。
「もうね」
「それでだよな」
「奇麗になるから」
　だからだというのだ。
「構わないわ」
「そうだよな、じゃあ」
「今からね」
「その子拾って」
「お家に連れていってあげましょう」
　香蓮は自分からその猫を拾った、猫は怯えていたが弱っていたのか動きは鈍かった。それでだった。　
　猫を抱いてそうして勝利と共に二人のマンションに戻った、香蓮は家に帰るとすぐに猫を風呂場に連れて行き。
　身体を奇麗にした、するとまだ毛は乱れているが。
「奇麗になったな」
「そうでしょ、これでね」
　香蓮はその猫を見つつ勝利に話した。
「汚くないわ」
「汚くてもか」
「お風呂に入れてあげればね」
　それでというのだ。
「誰でも奇麗になるでしょ」
「人だってそうだしな」
「だから問題ないわ、じゃあこの子にご飯あげて」
「おトイレもだな」
「教えてあげて」　
　そしてというのだ。
「飼ってあげましょう」
「これからな、お前もそれでいいか？」
「ニャア・・・・・・」
　猫は勝利の言葉に戸惑った声で応えた、まだ怯えていてそして戸惑っている。それで声も弱いものだった。