戦国異伝供書
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第七十九話 初陣その十三
「本山城から出て来て」
「そしてじゃな」
「我が軍に戦を挑んできます」
「数はあちらの方が多いな」
「はい、ですが」
それでもというのだ。
「臆することはないですな」
「全くな」
元親は平然とした顔のまま述べた。
「それならばな」
「迎え撃つ」
「我等は雪渓寺の方に出陣する」
その長浜城からというのだ。
「さすれば敵はな」
「どう動きますか」
「おそらく日出野に出てな」
この地にというのだ。
「そこに布陣する、だからな」
「我等はそこで、ですか」
「戸ノ本においてな」
その場でというのだ。
「戦うことになる」
「そしてですな」
「数は敵の方が上であってもな」
「勝ちまするな」
「そしておそらくな」
元親はさらに話した。
「敵の城の一つ潮江城だが」
「あの城もですか」
「本山家は軍勢をあらかた出してじゃ」
そのうえでというのだ。
「こちらに来るからな」
「敵の軍勢を破れば」
「その時はな」
「潮江の城は空になりますか」
「だからな」
それ故にというのだ。
「ここはじゃ」
「あの城もですか」
「攻め落とす、わかったな」
「それでは」
「して若殿」
泰泉寺は親貞が頷くと元親に言ってきた。
「槍の使い方ですが」
「戦の場においてじゃな」
「はい、若殿の槍捌きはお見事です」
「しかしそれはじゃな」
「やはり道場でのこと、戦の場での槍は」
これの使い方はというのだ。
「敵の目と目の間をです」
「急所の一つじゃな」
「そこを狙ってです」
「突けばよいな」
「そうすれば多少外れましても」
「敵を倒すことが出来るか」
「人の顔はそこだけでなく目や鼻、口に顎、額と急所が集まっております故」
だからだというのだ。
「槍はです」
「敵の目と目の間じゃな」
「そこを突いて下され、そして総大将ならです」
親貞はさらに話した。
「迂闊にはです」
「前に出ずか」
「総大将はよく狙われるので」
だからだというのだ。
「どうかです」
「迂闊にはな」
「その様に、ただ勇敢に戦われることは」
「よいな」
「やはり総大将が勇敢ですと」
それでというのだ。
「違いまするので」
「ではな」
「はい、これよりですな」
「長浜城からな」
「さらにですな」
「雪渓寺の方に出陣してな」
そのうえでというのだ。
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