戦国異伝供書
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第七十九話 初陣その十一
「戦える、お主はお主の目で見て頭で考えればな」
「よいのですな」
「お主はこれまでよく学んできた」
兵法、それをというのだ。
「それで多くを身に着けた」
「そしてその身に着けたものを」
「それを使えばよい」
「それだけですか」
「お主は既にわし以上の器じゃ」
だからだというのだ。
「安心して戦え」
「それでは」
「頼むぞ、あとじゃ」
「あとといいますと」
「戦で絶対に忘れてならぬものがある」
「兵糧と武具、それに銭ですな」
元親はすぐに答えた。
「そういったものですな」
「うむ、そうじゃ」
「左様ですな」
「そうじゃ、幾ら兵が強く兵法があろうともな」
「それでもですな」
「そういったものがないとな」
とてもというのだ。
「戦は出来ぬ」
「はい、それはです」
「お主は既にわかっておるな」
「そう言って頂けますか」
「お主の今の返事自体がな」
自分へのそれがとだ、国親は述べた。
「それじゃ」
「わかっている証ですか」
「人は飯を食わねばじゃ」
「何も出来ませぬな」
「そうじゃ、死んでしまう」
「だからですな」
「飯は必要じゃ、刀も槍も弓矢もなく」
そしてというのだ。
「さらにな」
「具足もなければ」
「戦は出来ぬ、そしてこうしったものはな」
それこそというのだ。
「銭がないとな」
「揃いませぬ」
「そうじゃ、飯は年貢で届くが」
「しかし」
「買うことも出来る」
飯即ち兵糧はというのだ。
「そして武具はどうしてもな」
「銭ですな」
「侍達に用意させるにしてもな」
「その侍達が持っていなえれば」
「やはり用意出来ぬ」
だからだというのだ。
「それでどうしてもじゃ」
「銭は必要ですか」
「左様、だからな」
それ故にというのだ。
「お主がここで銭を出したことはな」
「よかったですか」
「及第じゃ、やはりお主が長曾我部家の次の主じゃ」
国親は笑顔で話した。
「わしには何の憂いもない」
「それがしが長曾我部家の次の主で」
「それを今からですか」
「土佐の者達、そしてな」
「土佐の者でなくともですな」
「お主を見ている者達にな」
彼等にもというのだ。
「見せよ、よいな」
「その様にします」
「是非な」
国親は元親を慈しむ目で見つつ言うのだった、だが彼の身体はこの時からも日に日に悪くなっていき。
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