| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八十一話 張飛、陳宮を庇うのことその九

 その中でだ。関羽が義妹を止めようとしてきた。
「鈴々、それは」
「待って、愛紗ちゃん」
 言おうとする彼女をだ。劉備が制止した。
「ここは」
「姉者、それでは」
「ええ、任せましょう」
 微笑んでだ。次妹に言うのだった。
「鈴々ちゃんにね」
「わかりました。姉上がそう仰るのなら」
 関羽もここは沈黙することにした。そうしてであった。
 彼女も沈黙を守った。そうしたのだ。
 今は皆張飛の言葉を見守る。彼女はさらに言った。
「陳宮を見るのだ!」
「見るって!?」
「そうなのだ、今泣いているのだ」
 その通りだった。その目は涙ぐんでいる。
「この涙が何よりの証拠なのだ。陳宮は嘘を言っていないのだ!」
「涙を」
「そうなのだ。御前も見るのだ!」
 陳宮を指差しながら。荀彧に言うのである。
「この涙。どう思うのだ!」
「私だってね。華琳様の筆頭軍師よ」
 その誇りに基いてだというのだ。
「多くの人材を見極めてきているのよ」
「ならわかる筈なのだ」
「ええ、じゃあ見させてもらうわよ」
 半ば売り言葉に買い言葉であった。そのうえでだ。
 荀彧は陳宮のその目を見る。その涙をだ。
 その目をじっと見てだ。そうしてだ。その澄んだ真剣なものを見てだ。
 唇を一旦噛み締めてだ。それから張飛に答えた。
「わかったわよ」
「ではどうなのだ」
「この娘は嘘を吐いていないわ」
 そのことがだ。荀彧にもわかったのだ。
「間違いないわ」
「その通りなのだ。陳宮は嘘を吐いていないのだ」
「じゃあやっぱり」
「鈴々は戦は好きなのだ」
 今度はこのことを話す張飛だった。
「けれど戦うべきでない相手、戦う必要のない戦はしないのだ」
「それが今だっていうのね」
「その通りなのだ」
 こう言うのだった。
「鈴々達の敵はそのオロカとやらなのだ」
「オロチな」
 草薙が張飛の言い間違いを指摘する。
「そこは覚えてくれよ」
「わかったのだ。オソイなのだ」
「だからオロチな」
 このやり取りはした。しかしだった。
 張飛のだ。その言葉を聞いてだ。
 最初にだ。孫策が言った。
「そうね。人を見極められなくてはお話にならないわね」
「その通りじゃな」
 黄蓋も己の主のその言葉に頷く。
「少なくともこの陳宮は嘘を言う者ではない」
「いい娘ね」
 孫策はその陳宮を見て微笑みもした。
「軍師としてはまだまだ未熟みたいだけれど」
「それはこれからじゃな」
 黄蓋も陳宮の軍師としての力量は見抜いた。それでもだった。
 少なくとも陳宮は信頼された。そのうえでだった。
 軍議が再開された。袁紹はあらためて一同に述べた。
「では。総攻撃は見送りますわ」
「そうするのね」
 曹操も袁紹のその言葉に頷いた。
「それじゃあまずは」
「オロチとやらですわ」
 話はそこに移った。
「その怪しい者達を除くことですわ」
「それで陳宮」
 曹操は陳宮に顔を向けて尋ねた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧