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アルゼンチン帝国召喚

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第十五話「列強の落日3」

第十五話「列強の落日3」
「くそ!ふざけんな!」

パーパルディア皇国中央部に位置する場所にてとあるパーパルディア皇国兵士が涙を長祖ながら必死に銃を撃つ。彼の目の前には数えるのも億劫な72ヶ国連合の兵士たちがいた。彼らはパーパルディア皇国の都市を落としそこに保管してあったマスケット銃などを奪い武装していた。その為時折銃による反撃が行われていた。

「このままじゃ突破されるぞ!増援はまだ来ないのか!」
「無理だ!どこも手一杯だ!現有戦力でどうにかするんだ!」
「そんな事言ったって……!」

上空では72ヶ国連合に加担するリーム王国のワイバーンとパーパルディア皇国のワイバーンロードの空中戦が行われている。圧倒的な強さを見せるワイバーンロードだが一匹につき数匹ずつで対応するリーム王国のワイバーンに苦戦していた。そもそもパーパルディア皇国のワイバーンロードは数が少なくなっている。開発されていたワイバーンオーバーロードに至っては空中に出ることなく全滅している。
南部で飛び立てばアルゼンチン帝国によって撃ち落とされるかそもそも飛ぶ前に破壊され唯一戦闘らしい戦闘が起こっている72ヶ国連合相手でも苦戦していた。

「ダメだ!敵が入って来るぞ!」
「くそ!中央は何してるんだよ!俺たちを見捨てたのか!?」

兵士たちが当てにしている中央もエストシラント空爆時に既に崩壊していた。そもそもここの軍勢はまだましな方であった。他では指揮系統が存在せずバラバラに動いたり指揮権をめぐって中で争ったりしていた。そこを突かれ陥落した都市は多い。

「ぐぁ!?」
「突破された!もう駄目だ!」
「逃げろぉ!」

そしてついに防衛戦は突破されパーパルディア皇国軍は一気に瓦解する。既に兵力は押し返すだけの力も数もなくなっており突破されたとこrからじわじわと浸透されていく。

「パーパルディア皇国の人間を決して生かすな!」
「殺せ!仇を取るんだ!」
「絶対に生きて返さない!」

パーパルディア皇国に虐げられてきた元属国の72ヶ国連合の兵士たちは怒りに任せてパーパルディア皇国人を殺していく。本来なら止めるべき指揮官も同じように殺戮を行っていた。
それほどまでに属国たちの恨み、怒りは大きかった。

「……ん?なんだ?」

ふと、都市の外れ、南側の城壁で殺戮を行っていた一人の兵士が聞きなれない音を耳にする。キュラキュラと独特の音に混じって聞こえる靴音。それらは少しづつ大きく、近づいてきているようだった。

「まさかパーパルディア皇国の増援か!?」

男は思わず双眼鏡で確認する。もし予測が正しければ規模によっては撤退を考えなければいけない。男は遥か彼方から迫って来る音を確認する。






そして、見つけた。






自分たちが、72ヶ国連合がこうしてパーパルディア皇国を相手に反乱を行え得ている元凶。






文明圏外のはずの、パーパルディア皇国にせめて来るまで誰も知らなかったような国。




僅かな日数でパーパルディア皇国を圧倒し滅亡へと向かわせている国。






赤き十字を囲む深海の如き碧。




それらの間で調停を成す純白。






アルゼンチン帝国が誇る戦車部隊の姿があった。


「あ、ああ……!」

男は双眼鏡を落としそうになる。男にもパーパルディア皇国だけではなく自分たちにも牙を抜くアルゼンチン帝国の報告は入っている。そして、決して勝てない事も。
72ヶ国連合の兵士たちは恐怖する。パーパルディア皇国という大国を呆気なく潰す、超大国が自分たちごと滅ぼそうとやってきている。自分たちに出来るのは抵抗して死ぬか抵抗せずに死を受け入れるかの二択のみ。逃げ切る事など出来ない。必ず追いつかれ殺される。
そんなアルゼンチン帝国が遥か彼方とは言え双眼鏡で見える距離に迫ってきている。それも馬よりも早い速度で。

「知らせないと……!」

男はその場から動こうとしたがそれも一瞬だった。
男がいた城壁は戦車から放たれた砲撃により呆気なく瓦礫と変え男も血肉へと変貌したのだから。
72ヶ国連合にとってパーパルディア皇国を超える悪魔の牙が自分たちに届いた瞬間だった。









「これが……、アルゼンチン帝国の戦い方ですか」

グラ・バルカス帝国の軍人ミレケネスは作戦参加中のグレート・ディアボロス級原子力戦艦の一番艦グレート・ディアボロスの指令室で作戦の詳細が書かれた紙を見ていた。作戦の詳細が書かれている紙にしては神は二枚しか存在せずそれも片面にかかれているのみだった。
それだけアルゼンチン帝国はパーパルディア皇国を倒すのにそれだけで勝てるという表れでもあった。

「……祖国では難しいな」

グラ・バルカス帝国でもパーパルディア皇国を倒すのにそれなりの日数がかかるだろう。勿論レイフォルの様に簡単に降伏する間も知れないがその時は現在の様に元属国が独立し支配には大分時間がかかっただろう。
既に作戦の大半は終了しているらしく紙に書かれた作戦の九割が終わっている。同盟国だという神聖オーストリア・ハンガリー帝国軍も順調に侵略出来ているそうだ。

「……何とかしてアルゼンチン帝国の技術を手に入れられればいいが」

難しだろうなとミレケネスは考える。自国の優位を失うようなことをするとは思えない。むしろ不快に感じるかもしれない。幸いなのはアルゼンチン帝国とは遠く離れている事だ。多少の失敗くらいで敵対するとは思えない。

「……ミレケネス殿」
「ああ、ヴィーグ大佐か」

ミレケネスに話しかけたのはグレート・ディアボロスの艦長メイシュ・ヴィーグ大佐だった。アルゼンチン帝国の象徴とも言えるグレート・ディアボロスの艦長を務めている事からも分かる通り優秀な人物で戦術面では海軍内でも一、二を争う実力者である。

「まもなく作戦が始まります。ここに留まりますか?」
「ええ、この船の事をもう少し見ておきたいので」
「分かりました。何かあったら知らせてください」

そう言うとヴィーグは自分の持ち場に戻る。ミレケネスは改めて前方を見る。グレート・ディアボロスを中心にした大艦隊。これらは北上し、リーム王国を焼き払うのだという。それが完了すれば立案された作戦は完了しパーパルディア皇国、リーム王国の全土併合を行うのみであった。
ミレケネスはアルゼンチン帝国の自国にも劣らぬ貪欲さと時刻より優れた技術力に冷や汗をかくのであった。
 
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