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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第八十一話 張飛、陳宮を庇うのことその六

「そうしてその娘は帰ってもらいますわ」
「それではその様に」
「そうするってことで」
 顔良と文醜が応える。こうしてだった。
 陳宮はテリーに案内されてだ。天幕に入った。その彼女に対してだ。
 袁術がだ。最初に声をかけた。
「御主が董卓軍の使者じゃな」
「あの、ねねは」
「むっ、何じゃ?」
 袁術は陳宮の今の言葉に妙なものを察した。見ればだ。
 陳宮は強張った顔で身体をかちこちにさせてだ。そのうえで声も震えていた。その姿は。
「どうもあの姿は」
「そうよね」
 曹操陣営の筍の従姉妹達がその陳宮を見てひそひそと話す。
「宣戦布告の使者じゃないわね」
「その使者なら堂々として言って来るのに」
 それでもだった。彼女はだ。
「あんなに強張って」
「妙な感じね」
「宣戦布告の使者じゃないとしたら」
「何で来たのかしら」
「陳宮よね」
 今度は曹操が陳宮に問うた。
「そうよね。確か董卓の軍師の一人の」
「恋殿の軍師です」
 陳宮は俯いた姿勢でこう返してきた。
「ねねは呂将軍の軍師です」
「呂布のか」
 趙雲が言った。
「そうだったな。御主は呂布の軍師だったな」
「そうなのです」
「ではその呂布の軍師としてここに来たのか」
「はい、そうなのです」
 また答える陳宮だった。
「ねねは恋殿の軍師としてここに来ました」
「なら一体」
 陸遜が陳宮に問う。
「何の御用でしょうか」
「宣戦布告に来たのではないわね」
 孫権が実際にそうではないと指摘した。
「そうね。それではないわね」
「あの、ねねは」
 どうしてかとだ。身体を震わせながら言うのだった。
「ねねがここに来たのはです」
「どうしてなのだ?」
 張飛が問い返す。
「どうしてここに来たのだ?」
「皆さんに御願いがあって来ました」
 それでだというのだ。
「どうか。呂布将軍を助けて下さい」
「敵将を助ける!?」
 曹仁が目を丸くさせて言った。
「それはまた奇妙な話ね」
「そうね。呂布は私達がこれから戦う相手なのに」
 曹洪もそのことを言う。
「それで助けて欲しいって」
「どういう理屈なの?」
「実はなのです」
 陳宮はだ。山崎から聞いたことをだ。劉備達に話したのだ。
「月殿は宮廷に幽閉されているのです」
「やっぱりね」
 話を聞いた曹操がすぐに言った。
「そんなことだろうと思ってたわ」
「わかっていたのです?」
「どう考えてもあの娘のやることじゃないからね」
 だからだ。それはわかるという曹操だった。
「どうせ張譲でも暗躍してるんでしょ」
「そうですね。あの行動はどう見ても」
「十常侍のやり方です」
 郭嘉と程昱も言う。
「では彼等は生きていて」
「董卓さんを隠れ蓑にして」
「その疑いもあります」
 陳宮も実際にそのことは否定しなかった。彼女も軍師だ。山崎との話の後でそのことを考えてだ。実際に疑っているのである。
 
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