戦国異伝供書
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第七十九話 初陣その二
「大器は晩成するものじゃ」
「大器はですか」
「だからじゃ」
それでというのだ。
「お主もじゃ」
「それがしは大器ですか」
「だからな」
それ故にというのだ。
「今は待つのじゃ」
「それでは」
「そこで頷くか」
「時が来ていないということは」
「そのことはか」
「そうではかとそれがしも思いまして」
それでとだ、元親は父に述べた。
「その時が来るまではとです」
「考えておるか」
「はい、時が来ていないからこそ」
「家臣達も言っておるとじゃな」
「それがしも思いますので」
だからだというのだ。
「従いまする」
「そうか、ではあの者達がお主について言うことも」
「その時にわかると思いますので」
「お主の真の姿がか」
「それがしが若し器でないなら」
その時のこともだった、元親は言葉に出した。
「弥五良にです」
「家督をか」
「そう思っております、そしてそれがしは出家して」
そうしてというのだ。
「この土佐からも離れ」
「そのうえでか」
「静かに暮らします」
「器でないならか」
「そう考えていますし」
「達観しておるな」
「左様でしょうか」
元親は父の言葉に応えた。
「それがしは」
「うむ、お主は長曾我部家の主の座にこだわっておらぬな」
「はい、あくまでそうでないならです」
「退くか」
「そう考えています」
「それだけのことか」
「言うならば」
こう父に述べた。
「そして器であれば」
「この家の為にじゃな」
「全てを捧げ」
「そうしてか」
「この家を必ず四国の主にしてみせます」
「そして上洛もじゃな」
「果たします」
こう答えるのだった。
「必ず」
「その意気はあるのじゃな」
「器であれば」
「その言葉確かに聞いた、わしはお主は器であると見ておる」
「長曾我部家の主であると」
「ならな、初陣の時を待て」
今はというのだ。
「そうせよ、その時は間違いなく来るからな」
「だからこそですな」
「その時を待て」
元親に対して強い声で告げた。
「その時までじゃ」
「そしてそれからも」
「そこでそう言うのが器じゃ」
「それがしは初陣が終わりではありませぬ」
「そうじゃ、むしろじゃ」
「初陣を終えて」
「それからじゃ」
むしろだというのだ。
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