戦国異伝供書
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第七十八話 紺から紫へその六
「上洛もな」
「目指せと」
「お主なら出来るからな」
「それでは」
「うむ、頼むな」
「わかり申した」
こう話してだ、そのうえでだった。
国親は弥三郎を暖かい目で見つつその成長を楽しんでいた、だが彼は相変わらずおどおどとして背丈こそ高いがひ弱に見えて。
頼りないと殆どの者が思った、だが。
弟の弥五良は兄の学問を見て驚いて言った。
「兄上、もうですか」
「もうとは」
「はい、それだけの書を読まれたのですか」
「読んで覚えることはな」
それはとだ、弥三郎は弥五良に答えて述べた。
「苦ではなくな、むしろ楽にな」
「読めてですか」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「頭に入る」
「だからですか」
「大したこととは思わぬが」
「いえ、もうそれだけの書を読まれ」
そしてとだ、彼は兄に言うのだった。
「覚えておられるとは」
「素晴らしきことです、そしてですな」
「うむ、書をさらにな」
「読まれますか」
「うむ」
こう言って新しい書を手にするのだった。
「そうする」
「さらに励まれますか」
「是非な、それとな」
「それにですか」
「武芸もな」
そちらもというのだ。
「励みたい、馬に乗り」
「槍もですな」
「今日もしようぞ」
「お供します、ですが」
「どうしたのじゃ」
「兄上は学問を武芸を欠かしませんが」
「毎日励むとな」
そうすればとだ、弥三郎は弟に微笑んで話した。
「必ずそれが結果として出るな」
「はい、日々の精進こそがです」
まさにとだ、弥五良も兄に答えた。
「人を育てます」
「そうであるな、わしはやがて長曾我部家の主となる」
「だからですか」
「今から学問と武芸に励みな」
「そしてですか」
「主となった時に思う存分働ける」
「そうなる様にしておりますか」
「そうじゃ、ではな」
「これからもですな」
「励みな」
そしてというのだ。
「己を高めたい」
「その意気です、では」
「今はな」
「励みましょうぞ、それではそれがしも」
弥五良はまた話した。
「お供させて頂きます」
「ではな」
「はい、これより」
弥五良は兄に応えてだった。
彼と共に鍛錬に励んだ、学問にしても武芸にしても彼は兄に何とかついていくのが精一杯で弟の矢八郎に話した。
「兄上は必ずじゃ」
「主となられた時はですな」
「すぐに頭角を表されてな」
そうしてというのだ。
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