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ドールハウス

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第五章

「大丈夫かしら」
「確かに悪いものは感じないけれど」
「憑いてはいないのね」
「ええ、けれどね」
 それでもとだ、未来はアリスにさらに話した。
「私まだ物凄く悪いものを感じるから」
「それでなのね」
「いつもこんな中にいたら」
 それこそというのだ。
「絶対にね」
「悪いことがあるのね」
「ええ、そう思うから」
「じゃあお婆さんにもお話するのね」
「そうした方がいいと思ってるわ」
 未来はアリスに強張った顔で話した、そうしてだった。
 老婆が持って来てくれたミルクティーとティーセットをご馳走になり。
 老婆が台車に乗せて運んできてくれたそのドールハウスを見せてもらった、それはビクトリア朝の豪邸であり。
 着飾った何人もの美しい少女達の人形があった、その人形達を見てだった。未来はその顔を一瞬にして真っ白にさせたが。
 アリスもだ、未来と同じ様に。
 その顔を蒼白にさせてそれで思わず声を出した。
「これは」
「そ、そうよね」
 未来もアリスに応えた。
「このドールハウスは」
「何、これ」
 霊感はないと自分で思っていた、だがそのアリスも。
 そのドールハウスにおぞましいマイナスのものを感じた。
 怨念、憎悪、恐怖、絶望。そうした感情だろうか。どす黒く渦巻きそれが無限に湧き起こっている。それでだった。
 アリスは思わず老婆に尋ねた。
「あの、何かないですか」
「何か?」
「このドールハウスをお持ちになってから」
「最近頭が痛くて。関節痛にもなって」
 老婆はアリスの問いに困った顔で答えた。
「主人も肩が前よりもずっと凝るって言って腰も」
「そうですか」
「お家全体が凄く重い感じで」
「そうですよね」
「このドールハウス凄く奇麗でお人形も可愛いけれど」 
 老婆はアリスに困った顔で述べた。
「そうして」
「それで、ですか」
「しかも」
 老婆はさらに話した。
「孫達がこのドールハウス見たら火が点いたみたいに泣き出して」
「あの」
 今度は未来が老婆に言った。
「このドールハウスどうして手に入れられたんですか」
「実はネットの通販で。お人形を探していて」
「それで、ですか」
「イギリスから出品されていて。主人は英語読めていて安いというから」
「買われたんですか」
「そうだけれど」
「あの、すぐにです」 
 未来は老婆に焦った様な、そして心から恐れている様な顔で言った。
「このお人形確かな霊媒師の人か宗教家の人に見てもらって」
「それでなのね」
「お祓いしてもらうなり手放した方がです」
「いいのね」
「すぐにそうされた方がいいです、私実は霊媒体質みたいですが」
 老婆にもこのことを話した。
「物凄く感じます」
「私はそうした体質でないですが」
 アリスも老婆に話した。
「それでも感じますから」
「だからなのね」
「本当にこれは」
 このドールハウスはというのだ。 
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