いつもと違って
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第二章
「そこはな」
「どうしようもないから」
「だからだっていうのね」
「その二つは」
「そうした家で育ったからな」
柄と口の悪い家でというのだ。
「けれど親父もお袋もちゃんと働いててな」
「それで道は外れてないから」
「だからっていうのね」
「その二つは」
「ああ、もうそれは個性でな」
そういうことでというのだ。
「いいだろ」
「全く、いつもそう言うんだから」
「柄と口の悪さはいいだろって」
「それでなおさないから」
「なおせないものなんだよ」
もう生まれも育ちもそれだからだとだ、真理子は言ってだった。
とにかく如何にもという感じの柄と口の悪さだった、だがそんな彼女でも交際相手がいてその相手は。
同じ学年で一年から同じクラスの吉岡文哉だ、スポーツ刈りを思わせるが少し違う黒髪と素朴な感じの小さな目が目立つ面長の顔を持っている。すらりというよりはひょろ長い感じで背は一七五程である。部活はバスケ部でその縁で真理子と知り合って交際している。
その文哉にもだ、真理子はよく言われていた。
「真理子ちゃんってやっぱり」
「ああ、柄と口はな」
「そうだよね」
「もうこの二つはな」
どうしてもというのだ。
「そういうことでな」
「そうだよね」
「納得してくれよ」
「うん、ただね」
「ただ。何だよ」
「何かその感じが変わる時あるよ」
「えっ、嘘だろ」
文哉の今の言葉にだ、真理子は驚きの声をあげた。
「あたしがかよ」
「そうなるよ」
「それは何時だよ」
「その時にね」
まさにとだ、彼は言うのだった。
「わかるよ」
「だからそれは何時なんだよ」
「その時になったら言うよ」
「ったくよ、訳がわからねえな」
真理子は文哉の今の言葉に顔を赤くさせて言った。
「一体何か」
「だからそれはね」
「その時にかよ」
「言うから」
「一体何時なんだよ」
「じゃあ今度ね」
文哉は真理子に自分のペースで話した。
「デートしようね」
「えっ、デートかよ」
「そう、デートしようね」
「ああ、デートか」
交際しているからその経験はある、だから真理子も応えには淀みがなかった。
「それかよ」
「うん、何時にしようかな」
「あたし今度の日曜空いてるからな」
真理子は顔を真っ赤にさせて答えた。
「部活休みだしな」
「僕もだよ」
「じゃあ丁度いいな」
「それじゃあだね」
「今度の日曜な、場所は」
「野球観戦どうかな」
「って横浜スタジアム行くのかよ」
野球と聞いてだ、真理子は自分達が住んでいる横浜のその球場を真っ先に思い付いた。二人共横浜ファンなのだ。
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