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アルゼンチン帝国召喚

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第三話「アルゼンチン帝国」

第三話「アルゼンチン帝国」
「こ、これほどの船が帆もオールもなく動くとは……」
「そして船の中とは思えない程清らかで美しい……。まるで光の妖精が住んでいるようだ」

使節団はオセウノの船内を見て感動していた。船に乗っているとは思えない程揺れはなく美味しい食材に様々な娯楽。使節団は想像以上の贅沢にアルゼンチン帝国が楽しみになっていた。
そして二日が過ぎた。

「あれが……アルゼンチン帝国」
「正確にはその自治領にあたる帝国領チリのパルバライソです」
「これほどの都市とは……」

初めて見る高層ビル群に使節団は驚きを現している。
そしてホテルに一泊しアルゼンチン帝国の帝都インペリオ・キャピタルへ向けて出発した。途中、大陸横断鉄道に乗った時には子供の様にはしゃぐほどだ。
インペリオ・キャピタルに付いた時には完成したばかりの帝都の様子に驚き更に建設された時期を聞き更に驚いていた。

「これほどの町、技術……。どれも素晴らしいですな」
「ええ、それでいて決して高圧的ではない。好感が持てます」

インペリオ・キャピタルの中でも一級のホテルにてハンキとヤゴウは話している。

「技術の輸出に関しては明日の会議で、と言われましたが様子を見るにあまり期待はしない方がいいでしょう」
「懸念はアルゼンチン帝国が何を求めているか、だな」

ハンキはアルゼンチン帝国が覇権国家であると言うのを薄々理解していた。そんなこの国が一体何を求めているのか。最悪の場合従属を求めてくる可能性もあった。

「とは言え我が国には切れるカードなど少ない。更には西から脅威も迫ってきている」
「残念ですが明日の会議で聞くしかなさそうですね」
「アルゼンチン帝国が無理な要求を求めて来ないことを祈るばかりだな」

そして夜は明けクワトイネ公国使節団と総統アイルサン・ヒドゥラーによる会談が始まった。

「早速で悪いのですが貴国は我が国に対して何を求めているのですか?」

ヤゴウの言葉にアイルサン・ヒドゥラーは直ぐには答えずに一拍置くと話し始める。

「帝都に来るまでで理解してくれたでしょうが我が国は転移国家です。この世界の事については何も知りません。故に我が国が求めるのはこの世界の情報、そして報告にあった魔法についてです」
「成程……」

ヤゴウはアイルサン・ヒドゥラーの言葉に理解を示す。情報は何よりも大切だ。魔法についても知らないのであれば興味がわくのは当然といえた。

「そして我が国は貴国に対し一定の技術の輸出を行う準備があります。武器についてはまだ未定ですがそれ以外の技術、道路の整備や港の拡張などの技術を輸出しましょう」
「……成程」

悪くはない内容だ。武器については仕方ないと思うがそれ以外の技術が情報と魔法を引き換えに手に入る。アルゼンチン帝国の技術を輸入すればクワトイネ公国は更なる発展を行う事が出来る。ヤゴウはある程度まとめた後話す。

「分かりました。それだけの事をしてもらえるのです。我が国が持つあらゆる情報と魔法を渡すことを約束しましょう」

こうしてアルゼンチン帝国は異世界にて最初の一歩を歩みだした。アルゼンチン帝国は直ぐに技術を輸出しクワトイネ公国の発展を手伝っていく。クワトイネ公国も自分たちが持つあらゆる情報、魔法を教えていった。
アルゼンチン帝国が覇権国家であることも判明したがアルゼンチン帝国にクワトイネ公国を従属させようという動きはなく次第に肩の荷が下りて行った。同時にクワトイネ公国の南部に存在するクイラ王国も同じように友好関係を結ぶのであった。

「……このようにクワトイネ公国の近代化は少しづつ行われています。十年以内に自国で生産できるようになるでしょう」
「クワトイネ公国は異世界初の友好国だ。成るべく友好関係は続けていきたい」

アイルサン・ヒドゥラーはあげられてきた報告に満足げに頷いた。クワトイネ公国から得られた情報や魔法はとても有効的な物が多かった。特に医療面では革命と呼べるほどだ。

「しかしロウリア王国か……。邪魔だな」

情報の中にはクワトイネ公国の隣国ロウリア王国についてのものもあった。クワトイネ公国があるロデニウス大陸の統一を狙っており同時に人間至上主義を掲げているという。その為エルフが三割を占めるクワトイネ公国とは反りが合わず年々関係は悪化してきているという。
更には軍拡を進めており数年以内に攻めてくるのではと言われていた。

「ロウリア王国に送った使節団は追い返されてしまいましたからね。どうやら我が国を極東に出来た新興国と侮っている様です」
「不愉快だな。だが、自分たちの物差しで決めてしまうのは仕方がない事だ」

実際転移当初はアルゼンチン帝国も混乱したのだ。自分たちの常識を超えた出来事と遭遇しても直ぐに受け入れられる者はそういない。特に、国家となるとそれは皆無と言えるだろう。

「だが幸いなのはこれで我が国の次の進出先が決まった事だ。彼ら(・・)から要求されている事も達成できるだろう」
「成程、わかりました。なら軍隊の派遣許可を貰う事にしましょう」

アイルサン・ヒドゥラーの言わんとしている事を受け高官は直ぐに行動に移る。この事は海を渡り大使館を通じてクワトイネ公国へともたらされた。
 
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