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何処かが悪くても

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第二章

 由加里は保健所に連絡してその犬を引き取った、その子を見てだった。由加里の父はすぐに気付いた。
「話は聞いていたが」
「ええ、目がね」
 由加里はその犬を見つつ父に答えた。
「見えないの」
「そうなんだな」
「一度病院に見せる?」
 娘は父に提案した。
「そうする?」
「そうだな、若し治るならな」
 それならとだ、父は娘に答えた。
「それならな」
「治さないといけないわね」
「そうだな、しかしな」
「しかし?」
「この子は随分怯えているな」
 その犬を見ての言葉だった。
「かなり酷い目に遭ってきたか」
「野良犬だったし」
「結構大きくなっているから」
 母もその犬、見ただけで目が見えないことがわかる犬を見て言った。見れば実際にその犬はこちらに顔を向けているが視点が定まっていない。
「飼われてきて」
「それでか」
「多分目が見えなくなって」
「捨てられたか」
「そうかも知れないわね」
「そうなんだな、じゃあとりあえずな」
「ええ、お医者さんに見せましょう」
 母もこう言った。
「しましょう」
「それじゃあな」
 父も頷いた、そうしてだった。
 実際に獣医に見せるとだった、獣医は由加里と彼女の両親に話した。
「どうも最初からですね」
「見えないですか」
「その様です」
 犬のその目を見て由加里に話した。
「どうやら」
「そうですか」
「それで暫く飼われていましたが」
「目が見えないので」
「前の飼い主の人が愛想を尽かして」
 そしてというのだ。
「捨てたのだと思います」
「酷いことですね」
「世の中そうした飼い主の人がまだいまして」
 獣医もそのことについては暗い顔で述べた。
「それで」
「そうですか」
「ですが貴女達が飼われますよね」
「はい」
 由加里は獣医にはっきりと答えた、その犬を観ながら。
「そうします」
「なら可愛がって下さい、目が見えなくても」
 それでもとだ、獣医は由加里に答えた。
「この子も生きていますから」
「命があるからですね」
「命があるなら大事にされるべきです」
 獣医の言葉は切実なものだった。
「ですから」
「それで、ですか」
「はい、是非です」
 何があってもという言葉だった。
「お願いします」
「わかりました」
 由加里は獣医に答えた、そうしてその犬を連れて家に帰って両親に部屋の隅で小さくなっている犬を見て話した。 
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