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ヘタリア大帝国

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TURN33 マニラ攻撃その二

 しかしその外の市街地ではだ。現地の者達がだった。
 物陰に隠れてだ。こうした話をしていた。
「それではだな」
「そづあ。時は近いかも知れない」
「日本軍が来たならだ」
「彼等に呼応して我等も蜂起しよう」
「独立しよう」
 こうした話をしていた。そしてだった。
 彼等のその中に一人の女がいた。
 赤紫のやや収まりの悪い髪を後ろの一条を残して短く切っている。藍色の瞳はサファイアの様であり気の強そうな感じだ。
 顔立ちは精悍で戦っている女の顔をしている。眉は細く口は小さい。顎が尖っている。
 緑の陸戦部隊の軍服にベレー帽、それに半ズボンという格好だ。その彼女がだ。
 仲間達にだ。こう言うのだった。
「待て、確かにエイリスからは独立すべきだが」
「何だ、ラスシャサ」
「どうかしたのか?」
「日本の意図だ」
 ここでこの女ラスシャサが言うのはこのことだった。見れば軍服の胸元は開き胸がかなり見えている。わりかし豊かと言える胸でである。
 だがその胸を意識せずにだ。こう言うのだった。
「あの国は何を考えている」
「何をとは?」
「我々のことか?」
「そうだ。エイリスは我々を植民地とその現地民としか見ていない」
 ラスシャサはまずはエイリスについて述べた。
「そしてそのエイリスからの独立こそがだ」
「我等の悲願だ」
「まさにな」
「その為に日本と呼応して蜂起する」
「その考えだが」
「ガメリカや中帝国は確かに連合国だ」
 エイリスと同じくだ。だが、だというのだ。
「しかし植民地には反対している」
「だからこそ我々の蜂起にも支持をする」
「そして独立もだな」
「祖国さんから聞いた」
 ラスシャサは自分の祖国、マレーシアのことを話した。同志達に。
「ガメリカと中帝国は太平洋経済圏を作ろうとしている」
「太平洋経済圏?」
「まさか太平洋全域を包括した経済圏か」
「それを築こうというのか」
「そうだ。祖国さんがアメリカさんと中国さんにこっそり言われたらしい」
 そのガメリカと中帝国の中心国家である彼等から直接だというのだ。
「エイリスの植民地には全て独立してもらったうえでな」
「何っ、ではあの二国は俺達の味方か」
「エイリスと同じ連合国でもか」
「太平洋経済圏を築く為に独立させてくれる」
「そして経済圏に入れてくれるのか」
「そう聞いている」
 ラスシャサはマレーシアからの話を同志達に話した。
「だからだ。日本が若し我々をエイリスと同じく我々を植民地として扱うのなら」
「その場合はか」
「俺達の取る立場は」
「ガメリカにつく」
 はっきりとだ。ラスシャサは断言した。
「その場合はな」
「では日本の対応はこれからか」
「様子見か」
「そうするのだな」
「フィリピンはハワイに去った」 
 マニラはそのままだがそれでもだった。
「しかし日本はすぐにインドネシア、トンガに攻め入るだろう」
「その時に奴等がどうしてくるか」
「それを見てからだな」
「俺達がどう動くのか決めるのは」
「それからだな」
「その通りだ。それからだ」
 ラスシャサは腕を組み確かな声で言った。
「日本につくガメリカ、中帝国につくかを決めるのはな」
「どちらにしてもエイリスからは独立できるな」
「いい展開ではあるな」
「そうだな」
「エイリスは衰退して当然だ」
 このことについてはだ。ラスシャサは規定として言い切った。
「何時まで植民地なぞにこだわっている」
「全くだ。俺達を何だと思っているんだ」
「貴族共だけが威張っている」
「そして俺達といえば二等扱いだ」
「二等国民でしかないなんてな」
「間違っている」
 これが彼等の意見だった。そしてそれは間違ってはいなかった。
 それが為にだ。ラスシャサはまた言った。
「では。今は様子を見よう」
「そうだな。ではな」
「今は様子見だ」
「そうするとしよう」
「さて、見るか」
 ラスシャサは腕を組んだまま冷静に述べた。
「日本の本性を」
 こう話してだった。彼等は今は様子を見るのだった。そうして。
 蜂起の時も見ていた。太平洋での本格的な戦いは枢軸、連合の対立軸を超えていた。それ以上に多くの国家や人間を巻き込み動きだしていた。


TURN33   完


                        2012・6・14
 
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