ようこそ、我ら怪異の住む学園へ
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其の参 鏡の世界
第二十五話 立ち向かう
『あは。なに言ってんのかな、この人間。ねぇ、ちゃんと飼うなら躾はちゃんとしてよ。しーちゃん』
「……っ、元宮少年! なにを馬鹿な事を言って」
「任せてくださいよ」
借りますね、と一言声をかけてから、四番目の剣帯から刀を抜き取る。
なにがなんだかさっぱりわかっていない四番目だが、元宮は必死だ。刀を抜くと鞘をその場に置く。
そして、二番目に向けて構えた。
『……へぇ、ホントに抵抗するんだ』
「昔、刀の使い方を教えてもらったから……だから、僕だって戦えます」
「……勝てるかどうかはともかく!」と、自信なさげに叫ぶ元宮。
だが、四番目の目には確かに刀の扱い方を知っているように映った。少しだが、不安が薄れる。
びゅう、と一際強く風が吹き、四番目の視界を髪が遮る。
その瞬間。
ぼとり、という音に四番目が目を見開く。戦場に立っていた過去もあり、その音が鳴る理由を知っている。
ゆっくりと顔を上げてみると、そこには———
刀を振ったままの体勢で固まる元宮と、片腕を失った二番目がいた。
「…………え?」
四番目に生まれた疑問は二つ。
まず、何故自分ですら斬れない二番目の腕を、元宮のような貧弱そうな人間が斬ったのか。
そして、何故元宮は今の姿勢で固まっているのか。
だが、それを気にするより二番目の腕がすぐさま再生し、元宮へ今にも襲いかかろうとしている方が重要だ。
四番目は元宮が握ったままの刀に、「元宮を守れ」と“命令”した。
その途端、刀はまるで自我があるかのように元宮の手から滑り落ち、そして再度二番目の腕を斬った。
怪異が持つ武器は、“怪異の代わりに戦うもの”という意味を込めて、“杖代(つえしろ)と呼ばれている。
ヒロトの銃、アイカの糸、四番目の刀。全て杖代だ。
杖代は、その意味ゆえに持ち主の怪異の命令通りに自在に動くことができる。それこそ、生きているかのように。
今刀がひとりでに動いたのも、刀が四番目の杖代であるから。持ち主である四番目の命令に従い、元宮を守るために動いた。
二番目は小さく舌打ちをすると、大きく後ろに跳んだ。
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