戦国異伝供書
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第七十五話 逐一その十三
「闇の旗といい」
「よい武具に見事な采配といい」
「そして骸もない」
「怪しいことばかりですな」
「異形か」
ふと宗滴はこうも言った。
「何かの」
「異形?」
「異形といいますと」
「言った通りじゃ」
まさにその言葉のままだというのだ。
「これはな」
「妖怪ですか」
「若しくは怨霊ですか」
「そうした類ですか」
「鬼か」
若しくはというのだ、一人が言った。
「そうした者達か」
「鬼とは」
「流石にそれはないのでは」
「幾ら何でも」
「怨霊にしても」
「妖怪でも」
「その類の者達は軍勢にはならぬ」
宗滴がここでまた言った。
「あくまでな、しかし魔王の下のな」
「天下を乱すという」
「あの存在達ですか」
「古来より本朝に祟っているという」
「太平記等に出ておるが」
こうした存在の者達はというのだ。
「そうした者達か」
「まさかと言いたいですが」
「この戦国の世自体もですか」
「魔王によるものだとすると」
「有り得ますな」
「そうやもな、とかくな」
今はというのだ。
「その者達のことを思い出してじゃ」
「気になられた」
「左様でしたか」
「この度は」
「うむ、まあしかし今はな」
今現時点ではというと。
「我等はこの一条谷に留まろう」
「そしてですな」
「また動くべき時に動くのですな」
「殿が判断されればな」
宗滴は内心朝倉家の行く末に不安を感じだしていた、義景の考えや識見について。だがそれは言わず浅井家と六角家の戦と天下の今後を見るのだった。
第七十五話 完
2019・11・23
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