おっちょこちょいのかよちゃん
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34 大雨に動き出す者
前書き
《前回》
雨の続く夜、羽柴家では奈美子の護符が反応する。かよ子の家族も公民館に避難しに行く途中、かよ子達は奈美子の護符の能力で出した戦艦に乗せて貰い、羽柴夫妻、さり、三河口と共に避難に遅れている人の救出活動を行う。そして隣町ではすみ子も大雨で公民館へ避難し、冬田は大雨で眠れずに好きな男子を探しに行く。さりの思いに奈美子の護符が応え、かよ子の友人のたまえの家族を救い出した時、かよ子はあの男子の家族を発見する・・・!!
冬田は羽根に乗って大野を探し続ける。
(大野くうん・・・、待っててえ・・・!!)
冬田は大野を捜索しながら大野から感謝され、「俺、お前が好きになっちまったよ」と言われる様子を妄想した。
(やあん、大野くうん・・・)
その時、冬田は飛行機が飛んでくるのが見えた。
「なんでこんな天気に飛行機が飛んでるのお・・・!?」
かよ子は杉山の家族を発見した。杉山の家は床上浸水しており、家族は二階に避難している。
「す、杉山君・・・!!これに乗って!!」
「え?山田あ!?」
杉山はかよ子が戦艦のような物体に乗っているのが見えた。
「乗ってくれ!」
三河口も促す。戦艦を何とか杉山の家の二階の窓に近づけた。
「お、おう!」
杉山達は戦艦に乗った。
「杉山君、無事で良かった・・・!」
「ああ、サンキューな。でも、これ、なんだ?」
「このおばさんが持ってる護符の能力で出した戦艦だよ」
「すげえ!」
かよ子はさりを紹介する。
「この人はそのおばさんの子だよ」
「かよちゃんの隣の家に住んでいた羽柴さりよ。宜しくね」
「ああ、どーも」
次にさりが三河口を紹介する。
「こっちは私の従弟の三河口健よ。今、私の実家で居候してるの」
「君が杉山君か。君の活躍も見ていたよ」
「そうなのか?」
「ああ、アレクサンドルとアンナの兄妹との戦いも、オリガや丸岡との戦いもかなり奮闘していたね」
「ああ・・・」
「皆、兎に角中に入って」
奈美子は杉山の家族を戦艦の中に入れた。
「おばさん、俺も何かできる事があったら手伝います!」
杉山はかよ子の母やさりの母に協力を申し出た。
「そうね」
「ちょっとさとし、出しゃばるんじゃないよ」
杉山の姉が注意しようとした。
「姉ちゃん、助けてもらったんだ、何もしねえわけにはいかねえよ!」
「何言ってんの、こんな大変な時に!」
杉山の母も息子を止めようとする。
「あ、あの、おばさん、お姉さん・・・!!」
かよ子は杉山の母と姉に顔を向けた。
「え?」
「す、杉山君は、私が困った時に色々と助けてくれたんです・・・。だから出しゃばりなんかじゃありません!私も本心では杉山君を頼りたいんです。私はおっちょこちょいだし・・・、それに、私・・・」
かよ子は恥ずかしがりながら台詞の続きを言おうとする。
「す、す、杉山君の事が好きだから・・・!!」
かよ子は告白した。杉山の姉や両親は杉山さとしに恋する女子が今この場所にいると分かって胸がざわついた。
「さとしが、好き・・・!?」
かよ子は自爆してしまったと感じた。
「はい・・・」
三河口も立ち上がる。
「杉山さとし君のお母さん、お姉さん。俺はかよ子ちゃんの隣の家に居候している三河口健というものです。こんな事言っては信じられないかもしれませんが、かよちゃんは以前に命がけの戦いをした事がありました。その時、息子さんやその親友の大野けんいち君の協力もあって乗り切ってきたのです。俺もさとし君の協力があると十分助かります。俺からもお願いします」
(お兄ちゃん・・・)
かよ子の両親もさりの両親も同感に思う。
「そうね、異世界からの敵を倒せたのも杉山君がいたからよね」
「そうだな、あの時は感謝してるよ」
「皆さん・・・。分かりました。では、私達も協力します。さとし、迷惑かけるんじゃないわよ」
「おう!」
杉山の家族も加えて一同は救出作業を再開した。
公民館の中、すみ子は震える。
「お兄ちゃん・・・!」
「すみ子?」
「やっぱり胸騒ぎが止まらない・・・!!」
「やっぱり異世界からの敵か?」
濃藤は妹の正常ではない様子に、自身も胸騒ぎが激しくなり始めた。
「父さん、母さん、俺、すみ子をトイレへ連れてくよ」
濃藤は両親にそう言って妹を外へ連れ出した。
「やっぱり来てるよ、敵が・・・!」
「そのようだな、行ってみよう」
「うん・・・」
すみ子はイマヌエルから貰ったあの銃を手放さず持っていた。高地にある公民館の玄関から見ると、低地の道路は地面が見えず最早水路のようになっている。
「お兄ちゃん、水の中、進めるようにやってみるよ・・・!」
すみ子は銃の引き金を引いた。すると、二人の周囲にボール膜ができて、閉じ込めた。
「これで濡れずに水の中に進めるわ・・・!」
「よし!」
濃藤兄妹は膜を低地の方へ飛ばし、浸水中の道路の中を進んだ。
飛行場に着陸した後、二人組の男は大雨の中、再び離陸した。
「弟よ、素晴らしいな!こんな大変な事になれば、人は動かぬはずがない!」
「ああ、後は例の物を手にして、その持ち主を抹殺するだけだな」
その時、二人は上空に飛んでいる「何か」を発見した。
「兄貴、女の子が空を飛んでるぞ!!」
「もしかしたら、『平和を司る世界』からの羽根を使ってるな!」
「ここは生け捕りがいいか?」
「そうだな、何か知っているかもしれんな、それで吐き出させるか」
飛行機は上空を飛行する少女に接近した。
大野は家族で避難する途中だった。だが、水位が上がり過ぎて、坂を登るにも大量の雨水がなだれ込み、苦労していた。
「くそっ、ひでえ雨だな・・・!!」
大野は為す術はないか考えた。
(『あれ』を使ってみるか・・・!!)
大野は嘗て杉山、ブー太郎、そしてまる子と共に森の石松から「能力の石」貰った。大野は植物を出し、自在に操る「草の石」である。大野はその能力を行使してみることにした。その時、芽が出て、巨大な葉を作り出した。
「よし、父さん、母さん、この葉の上に乗ってくれ!!」
「え?」
大野の両親は驚いたが、兎に角息子に従う事にした。そして大野は同じく避難に動く人々に呼びかける。
「この木の葉の上に乗ってくださーい!」
大野は人々を巨大な木の葉の上に乗せて公民館へ運んだ。
「よし!父さん、母さん、俺は他に避難に遅れてる人を運んでくる!」
大野は公民館を離れて救出に動き出す。
かよ子達は救出を続けると、そこにまた知っている少年少女を見つけた。長山と小春、そしてその両親である。北勢田の家族もいた。
「あ、長山君、小春ちゃん!!」
「山田!?杉山君も!」
「長山あ!お前もこれに乗れえー!」
「う、うん!」
長山は家族で戦艦に乗った。北勢田やその近所と思われる人達も乗せた。
「ありがとう!溺れるところだったよ」
「う、うん・・・」
「北勢田、無事で良かったよ」
長山は向かいの知り合いが見知らぬ高校生男子と知り合いで驚いた。
「お兄さん、この人知ってるのかい?」
「ああ、同じ学校だよ」
「長山君には紹介がなかったね。俺は三河口健。北勢田の学校の友人で山田かよ子ちゃんちの隣の家に居候しているよ」
「よ、宜しくお願いします。でも、これ、戦艦かい?凄いよ!」
「こ、これね、このおばさんが出してくれたんだよ」
「何か不思議な能力でかい?」
長山は鋭い。
「ええ、この護符の力でね」
さりは自分の母が持つ護符を指して答えた。
「私は羽柴さり、私のお母さんがこの護符を持ってるの」
「杖に護符、か・・・」
長山はかよ子の杖と奈美子の護符を照らし合わせて考える。
「どうしたの?」
かよ子は博識な男子に質問する。
「ああ、杖に護符ってそれぞれトランプのクラブとダイヤに当てはまるんだ」
「それがどうかしたのか?」
「トランプではスペードは剣、クラブは杖や棍棒、ダイヤはコインとか護符、そしてハートは聖杯、いわゆるカップを意味してるんだ。もしかしたら・・・」
「もしかしたら?」
「今、この日本のどこかにスペードに相当する物とカップに相当する物があってそれを誰かが持っているんじゃないかなってね・・・」
「そうね、会ってみたいわね」
そう話しているうちに他の助けを求める人が現れた。かよ子達は救出作業を再開した。
冬田は飛行機を発見した。そして自分の所へ接近する事に気付いた。
「ええ!?何で私に近づいてくるのお!?」
冬田は飛行機を避けようとした。しかし、飛行機は追ってくる。
「逃げても無駄だぜ・・・」
男は飛行機のドアから出て手榴弾を投げた。その手榴弾は紙飛行機のように真っ直ぐ飛んで、冬田の羽根の後方で爆破した。冬田はバランスを崩され、羽根から落ちそうになった。羽根の先を掴んでなんとか落下を回避した状態となった。そして飛行機に先回りされた。
「そこの嬢ちゃん、この飛行機乗りな!」
「ええ!?」
冬田は自分を攻撃した相手だと分かっていた。要求など呑める筈がない。
「い、嫌よお!!」
「なら力ずくだ!」
冬田は男に足首を掴まれ、羽根も縮んでしまった。
「何するのよお!」
「その羽根は異世界の羽根だろ。質問に答えて貰いたい」
「こんな大雨に何言ってんのよお!私は大野君を助けに・・・、きゃああ!!」
冬田は銃口を額に突き付けられた。
「こんな大雨を降らせたからこそ、探してんだよ。その羽根を使っているって事は異世界と繋がりがあるんだろ。異世界からの最大の武器である杖とか護符とか知っていたら教えろ」
「ツエ、ゴフ・・・?」
後書き
次回は・・・
「冬田美鈴、危機一髪」
冬田は二人組の男から異世界からの道具についての尋問を受ける。そんな時、先程の冬田を襲った爆発は大野、すみ子、そしてかよ子達にも発見されており・・・。
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