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戦国異伝供書

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第七十五話 逐一その五

「問題は相手が何時来るか、ですか」
「出来れば、ですな」
「こちらの用意が整い」
「そこですぐに来て欲しいですな」
「左様ですな」
「当家としてはな、しかしこちらが守りを固めるのを見ると」
 六角家がというのだ。
「動かぬ」
「ですな、相手も愚かではありませぬ」
「こちらがあからさまに守りを固めていると」
「幾らこちらの兵が少なくとも」
「それでもですな」
「動かぬわ」 
 どうしてもというのだ。
「六角家もな」
「ですな、ではです」
「ここはどうして六角家を動かすか」
「それをですな」
「考えていきますか」
「うむ、ここはあえてな」
 新九郎は考えつつ話した。
「動くか」
「動く?」
「動くといいますと」
「どうされますか」
「うむ、それはな」
 新九郎は家臣達に自分が考えたことを話した。
「一つ策がある」
「策ですか」
「それを用いてですか」
「そのうえで、ですか」
「六角家を動かしてな」
 そうしてというのだ。
「そこで外でじゃ」
「戦いそしてですか」
「決めますか」
「そうするか」
「して殿」
 ここで宮部が言うことはというと。
「六角家で後藤殿が誅されましたな」
「そのことか」
「はい、そのせいで家中が乱れたといいますか」
「乱れが表に出て来たな」
「はい、そうなり」
 そしてというのだ。
「当家につこうという国人も出てきました」
「それもよいことじゃな」
「それでどうされますか」
 宮部は新九郎に問うた。
「その者達は」
「当家に従いたいならな」
 それならとだ、新九郎は宮部に答えた。
「拒まぬ」
「来る者はですな」
「そうじゃ、迎え入れてな」
 そうしてというのだ。
「働いてもらう」
「そうされましか」
「そしてな」
 新九郎はさらに話した。
「戦の時にはな」
「働いてもらいますか」
「そして六角家のこともな」
「話してもらいますな」
「それまで六角家に仕えておった」
 それならばというのだ。
「あの家のことも知っておろう」
「だからですな」
「知っていることは話してもらう」
 そうしたことはというのだ。
「全てな」
「そうしてもらいますな」
「うむ、そしてな」
 新九郎はさらに話した。
「戦の用意をさらに進め」
「さらにですな」
「我等から動くか」
「美濃に、ですな」
 阿閉が言ってきた。 
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