仮面ライダーの力を得て転生したったwwwww
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第5話
──その光景は、余りにも非現実的で。だけど、今起こっているソレは現実なんだと思い知らされる。
『シッ!!』
『だぁぁっ!!』
2つの異形が、激しい応酬を交わす。殴る。蹴る。ソレらを、互いは紙一重に防ぎ、反撃をするといった膠着状態。
赤と青のハーフボディを纏った異形が笑いながら攻撃を浴びせるのに対し、白とピンクのーーアラタ君が変身した異形は、何かを振り払うように雄叫びをひたすら上げて反撃する。
私はアラタ君が目の前で異形となった時、信じられなかった。嘘だって、これは何かの間違いだって言って欲しかった。
だけど、大きく変わってしまった彼の背中を目の前にして、そんな言葉をかける事は出来なかった。
私の言葉1つで、彼の心に傷つけてしまうんじゃないかって。
同時に、彼の事が分からなくなる。思えば彼の態度はどこかよそよそしくて、変に気を張っていた。かと思えば、寝惚け眼な彼は私と変わらないただの男の子のようで。
知りたい。彼の事をもっと。異形の身を纏ってまで、命をかけて戦う理由を。
だから。
「・・・・・・お願い」
私は信じてるからね。私は両手を合わせて、彼の無事をひたすら祈った。
ーーー
──ヤバいか。
仮面の下で、アラタは焦りを感じていた。
今相対しているアナザービルド。今のヤツからは慢心が見られない。無駄のない、純粋に自身を殺しに掛かる攻撃にひたすら防御に徹する。
ヤツ自身が分かっているかどうかは知らないが、圧倒的に不利だ。ヤツは五体満足に対し、俺は変身前に攻撃を受けて手負いの状態。だけど俺が倒れれば、琴音やまだ逃げ遅れた人達に標的にするかもしれない。だから、ここで倒れるわけにはいかない。
『どうした! 随分と、動きが鈍いようダナァ!!』
『勝手に・・・・・・言ってろ!』
アナザービルドの煽りにイラつきながらも、放たれた右ストレートを左手で逸らしながら、返しで右肘を敵のボディめり込ませて吹き飛ばす。地面に転がったアナザービルドに追い討ちを掛けようと接近してーー
いや・・・・・・なんであいつは笑ってる・・・・・・?
アナザービルドがニヤリと笑っている事に気づく。あらゆる可能性。ビルドの力。そのハーフボディでもあるタンク。そこまで考えついて、俺はようやく罠にハマったのだと悟る。
だが分かっていても、躱すにはコンマ数秒遅かった。俺のガラ空きの胴体にアナザービルドの右足が当てられる。直後、足裏が戦車の車輪の如く回転し、アナザージオウの装甲越しから俺の身体を削りに来た。
『ぐあぁぁっ!!?』
『オラ立てよ・・・・・・まだ終わってねぇ・・・だろ!』
『ぐふっ、がぁ、あっ・・・・・・』
アナザージオウは大きく地面を転がる。アナザービルドはアナザージオウの首を掴むと、これまでの鬱憤を晴らすように、何度も何度も顔面を殴ってくる。 1発、また1発と思う度に意識が飛びそうになる。もう一発攻撃をもらう、といったタイミングで何故かアナザービルドは攻撃を止め、ある方向に視線を向ける。
『・・・・・・らにも、・・・・・・もらうか』
『ぐぉっ! がっ・・・・・・』
アナザービルドは何か呟くと、アナザージオウの身体は宙に舞い、地面に打ち付けられる。打ちつけた衝撃に思わず悶える。だが、距離を取れた今ならーー
しかし立ち上がった所で、鉛のような何かがコチラへと放たれた、両手で防ぐ。地面に転がっていた物を見て、放たれた方向へ視線を変える。
そこには、得物を取った兵士達。アーミー色の服装に、銃、グレネード、ナイフ。その後ろで、桑や石等といった物を持つ人達。 物は違えど、そこには俺に対する憎悪の視線が込められていた。
「出てけ! 化け物が!!」
「お前らのせいで俺達の生活は滅茶苦茶だ!!」
「人殺し!!」
「消えろ!!」
どれだけ罵倒されようと、彼らにとっては俺達は敵でしかない。容赦なく浴びせられる銃撃の嵐。 琴音がただ1人止めてと叫ぶも、銃声に為す術もなく掻き消される。
手を交差してやり過ごすが、体力の残っていない俺に無力化する余力も無く、地へと這い蹲る。
『ぁ・・・・・・が』
『・・・・・・どうだ! 辛いか? 辛いよなぁ!? お前がこーーんだけニンゲンの味方をしたところで、周りは罵声を浴びせられるのだからなぁ! お前を排斥しようとする! そんなニンゲン達に、なんの価値がアル!』
大袈裟な動きを入れて煽る扇動者のようにそこまで言った所で、アナザービルドはアナザージオウの肩を叩く。
『正義の味方を騙るのなんてやめて、ニンゲン共を殺せ。強者に怯え排斥しようと躍起になる弱者など、この世界には要らない存在ダ』
『・・・・・・なに?』
俺が無言で這い蹲っている事を余所に、アナザービルド数少ない民衆たちへと狙いを定め、進んでいく。
それが、無性に腹が立った。
『るせぇ・・・・・・』
『ん?』
『うるせぇて言ってんだ!!』
気づけば、俺は声を荒らげて叫んだ。 その言葉に、得物を構えた民衆も、アナザービルドも、琴音も動きが止まる。
痛みを堪え、歯を食いしばりながらゆっくりと立ち上がる。
確かに俺のやってる事は偽善だ。今更正義のヒーローぶる行為なんて、それこそ醜悪極まりない愚行だ。そんなのは俺が良く分かってる。でも、ライダーの力は誰かを支配する為にあるんじゃない。
誰かの明日を、希望を、平和を、未来を、自由を守る為にあるんだ。
例えそれが歪で、偽物だったとしても。
その想いだけは、ホンモノなんだ。
『例えどれだけ傷つこうが・・・・・・嫌われようが・・・・・・それでも俺は戦うんだよっ!!!』
俺の気持ちに答えるように、時計の針を模した長剣と短剣が顕れる。俺は迷わずそれを掴み、アナザービルドへと突貫する。アナザービルドは蹴りを振るうが、左手に持っていた短剣の柄で叩き落とし、長剣で斬る。火花が飛び散るや短剣で左上段斬り、流れるように蹴りを入れる。
『うぉおおおおっ!!!』
『ぐっ! 正気かキサマ!? さっきも言ったはずだ!!キサマが幾ら人間の味方をした所でニンゲン共は必ずオマエを拒む!! そんな奴らに与える愛も平和もない!!』
『「ラブ&ピース」がこの世界でどれだけ脆く弱い言葉かなんて分かってる。けど!!』
双剣でアナザービルドを薙ぎ払う。 俺は自らの思いを、この場で叫ぶ。
『それでも謳うんだ! 一人一人がその想いを胸に生きていける世界を創る! そのために俺は戦う! 』
『貴様ァ・・・・・・!!』
そう逆上すると、アナザービルドの右足に赤と青のエネルギーが集約されていく。恐らく、次の一撃が最後。これで全てが決まる。そう悟ったアナザージオウは2本の剣を投げ捨て、ベルトに装着されたウォッチのボタンを押す。
《Finish Time・・・!》
カチカチという時計の針が進むような待機音が流れる中、ベルトを回転させる。
《Another TimeーBreαk!》
直後、右脚に紫とピンクエネルギーが収束し、力となる。 互いが互いを睨み合いーー
同時に跳躍。アナザージオウとアナザービルドはそれぞれエネルギーが込められた右脚を突き出した。
放たれたライダーキックがぶつかり合う。力と力がぶつかり合い、溢れ出したエネルギーが衝撃波となって周りを襲う。力の差は拮抗していた。民衆たちは身体を覆う中で、琴音だけは離れた場所ながらもそれを目逸らすまいと直視し続ける。
ーーアラタ君!!
心の中で彼女がそう叫んだ刹那、空中で爆発が起きる。アナザージオウとアナザービルドは同時に着地する。 各々が固唾を呑んで見守る。この死闘を制したのはーーー。
『ぁっ・・・・・・ぐあぁぁぁああああ!!?!』
アナザージオウだった。 アナザービルドは身体中からスパークを放ち、爆散。爆発の中から、痩せこけた眼鏡を掛けた男が現れる。
男は軽く振り返り、アナザージオウへと微かに問う。
「・・・・・・何故、俺は負けた? 力も、実力も互角。・・・・・・いや、この戦闘だけにおいては俺が有利だった、筈なのに」
『・・・・・・俺には守る者があって、お前にはそれがなかった。それだけの事だ』
アナザージオウは琴音に視線を向けながら男の問に答える。男は微かに笑いながら、天を見上げた。
「・・・・・・意志の強さが、逆境を覆す、か。実に・・・・・・下らないな・・・・・・ 」
それが、男の最期の言葉となった。男がいたその場所には、アナザービルドウォッチだけが遺された。
『・・・・・・ぐっ』
それから僅かに遅れて、アラタの変身が解ける。そのまま地に倒れそうになるが、既の所で琴音が駆け寄ってアラタを支える。
「アラタ君!!」
「・・・・・・俺」
俺には構わなくていい、そう拒否しようとした直前で、琴音に抱き締められた。琴音の声は震えていて、瞳から透き通った涙が彼女の頬を濡らしている。
「アラタ君が、死んじゃうんじゃないかって思った。怖かった。また目の前で居なくなっちゃうんじゃないかって・・・・・・!」
俺を離すまいと、彼女の両腕に力が籠っているのが背中越しから伝わってくる。俺は解放されてる右腕で、彼女の頭を優しく撫でた後、涙を拭ってあげる。
「・・・・・・俺は死なないよ。 絶対」
「生きててくれて・・・・・・良かった」
まだやるべき事は沢山ある。根本的な問題は解決出来てはいない。
だけど。今だけは、せめて。
泣きじゃくる琴音の涙が収まるまで、俺はただひたすら彼女の頭を撫で続けた。
ーーー
「あーあ。僕のアナザーライダーがやられちゃったか」
「いい気味ね。 早くも1人失うとか」
「まだ負けたわけじゃない。そんな事言ってると、オーラも足元をすくわれるよ」
タイムジャッカーが根城としている建物内。 遠巻きからアナザージオウとアナザービルドの闘いを映像で監視していたタイムジャッカー達。だがアナザービルドが脱落した事が分かるや、ウールがそう愚痴を零す。その事をオーラにおちょくられるが、ウールは淡々として言い返す。
早くも2人に険悪なムードが流れる中で、スウォルツが口を出す。
「だが、ようやく事が動いたということだ。残るアナザーライダーは19人。各々が欲望の為に命懸けで闘う。そして最後の1人となった者が立てるーー王座を決める戦争がな?」
スウォルツは部屋内にポツンと置かれた椅子に視線を向ける。 ウールはその椅子を見てニヤリと笑い、オーラは興味無さそうに髪の毛を弄る。
「じゃ、私用あるから」
オーラはそう言うと、ウールスウォルツの居た部屋を退出する。少し歩いたところで、オーラ立ち止まるとスカート越しに手を当ててアソコを弄る。
「んっ・・・・・・」
映像越しからではあったが、アナザービルドと戦った青年。オーラ自身、最初に1度出会った際はパッとしないと切り捨てたが、この闘いでアラタに対する認識を改めて興味を引いたようだ。
オーラの穿いていた下着から、透明な液が太腿を伝う。それ掬って糸を引くと、オーラはそれを愛おしそうに舐めた。
「んっ・・・・・・アイツに抱かれたら、どんだけ気持ちよくなるかしら♡」
オーラはスウォルツとウールには見せない笑みを零し、何処へと消えていった。
残るアナザーライダーはあと、19人。
ーーー
──かくして、アナザービルドはアナザージオウに打ち倒された。偽物でありながらも、魔王の力を持つだけのことはある。
──しかし、戦いが終わったのではなく、また新たな戦いが始まるのである。
「・・・・・・探せばなるまい。我が魔王と同等の資質を持つ者を。それが、我が魔王の要請であるなら尚更」
強風が吹き荒れる荒野に降り立つ青年はそう呟くや、羽織っていたマフラを振るう。マフラーは形状を変えて青年を包むと、荒野から姿を消した。
後書き
next Another Rider Time
→→→2016
ケッチャコ回でした。 オーラちゃんはビッチキャラとなったのだ(無慈悲) という訳でココから熱量上げて頑張りますかね。
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