仮面ライダーの力を得て転生したったwwwww
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Another Riders War
第1話
とある廃墟。 そこでは一体の黒と緑のハーフの異形ーー『アナザーダブル』が今まさにと、痩せこけた男の首を掴みあげていた。
何とか異形の手から逃れようと踠く男に、異形は呆れるように問い掛ける。
「ぁっ・・・・・・が」
『・・・・・・最期に、何か言い残す事はあるか?』
異形にとっては、せめてもの慈悲の言葉。だが人間にとっては、死刑宣告のようにも聞き取れる。
「何で・・・こんな・・・・・・ことを!?」
『・・・・・・決まってるだろ? 人殺しが最高だからさ』
アナザーダブルの、男に手に入れる力が増していく。尚も男は足掻くが、微塵も動かず。そのまま異形は、力任せに男の首をへし折った。
『ちっ、今日はここまでか』
アナザーダブルは死体となった男を投げ捨て、周囲の気配が無くなった事を確認すると、朽ち果てた窓格子へと美を踊らせ、風と共にどこかへと消えていく。
それから半歩ほど遅れて、青年が遅れて部屋へと突入してきた。
「クソ、間に合わなかったか・・・・・・」
青年ーーー『アラタ』は、荒れた息を整えながら抉られた瓦礫、無残にも殺された人々の遺体、辺りに散乱した鏡に映る自分へとそれぞれ視線を向けながら、ふとあの日を思い出す。
──今の俺は、自分の信じていた理想を叶えているか?
「・・・・・・何やってんだよ、ホントに」
──
アラタは俗に言う、転生者だ。前の世界の事も、己自身の事も、擦り切れていくように朧気になりつつあるが、これだけはハッキリと自覚できた。自分はこの世界の異物であると。 そしてこの世界に飛ばされる前──微かな意識の中で出会った、名も知らぬフードを被った大男に出会った時の事も。
「アンタは、誰だ?」
『お前は今、死と生の狭間にいる。このまま何もしなければ、お前は死ぬだろうな。・・・・・・だがこれを使えば、お前は死から逃れ、ライダーの力を手に入れられる』
フードの男はそう言うと、懐から黒いウォッチ型のアイテム・・・・・・確か、「ブランクライドウォッチ」のようなものを取り出し、俺に突きつけてきた。
「・・・それを使えば、仮面ライダーになれるのか?」
『…………勿論だとも。 お前の望んだ力が、な…………』
「分かった・・・・・・アンタの提案に乗るよ」
あの時、思えば何故彼処で要求を呑んでしまったのだろうと情けなく思う。 目の前の男の威圧に呑まれたから? 死ぬのが怖かったから? ・・・・・・多分、それとも違う。
俺はただ、『仮面ライダー』になりたいと思ってしまったんだ。颯爽とバイクに乗り、敵を蹴散らし、人間の自由と平和を守る正義の戦士の姿に。
子供の頃から憧れてやまなかった、正義のヒーローに。
『契約完了、だな』
フードの被った男がその下でほくそ笑んでいた事も知らずに、俺は異物として俺知る世界に限りなく近い別世界へと飛ばされた。
現実を突きつけられたのは、それから転生して間も無くの事であった。 新しい世界に降り立ってすぐ、俺は人が怪物に襲われているのを発見した。 俺は無我夢中で謎の男から渡されたアイテムを使って変身して交戦した。怪物を退けた後、俺が未だその場に固まっていた人の元へ歩み寄ると・・・・・・
『嫌・・・・・・来ないで、化け物っ!!!』
「あ、おいちょっと待てよ!?」
俺が助けた人は、俺を化け物と罵り脇目も振らずその場を走り去っていく。 状況の呑み込めない俺は困惑する最中、不意にひび割れた鏡に自分が変身した姿を映りこんだのを見たと同時に、ジリジリと後ずさる。
──違う。
「なんだよ、これ・・・・・・!?」
──違う・・・・・・!!
映し出される鏡には、俺の変身した姿は俺の知っている「仮面ライダー」とは程遠く禍々しく、まるで怪人のようで。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっ!!!!!!!?」
『ZI-O・・・・・・』
アラタは変わり果てた己自身に対して、ただただ震え、恐れ、絶叫を上げることしか出来なかった。
俺があの男から貰ったのは、仮面ライダーではなく、 ライダーもどきの怪人だったのだと、ようやく悟った。
──
何故彼は「仮面ライダー」ではなく、「アナザーライダー」なのか。それは、余りに単純明快な事だ。
彼には、単に素質がなかったのだ。仮面ライダーたるに相応しい素質が。
五代雄介のような、みんなの笑顔を守るために涙を仮面の下で隠して、拳を振るう優しさがなく。
津上翔一のような、皆の未来を守るために戦う決意もなく。
城戸真司のような、目の前にいる人を守るために戦う純粋なる願いもなく。
乾巧のような、戦う罪を背負う覚悟もなく。
剣崎一真のような、友も世界も救うために己を異形に出来るほどの自己犠牲もなく。
ヒビキのような、己を鍛鉄する努力もしたことなく。
天道総司のような、天の道を行き全てを司る程の、運命を掴む力もなく。
野上良太郎のような、己の信念を曲げぬ意志の強さもなく。
紅渡のような、親子に渡り受け継がれていく絆もなく。
翔太郎やフィリップのような、愛する街を守るために戦うハードボイルド精神があるわけでもなく。
火野映司のような、目の前にある手を掴むためなら自分を惜しまない狂気を胸に秘めているわけでもなく。
如月弦太朗のような、仮面ライダー部や天ノ川学園高校の全校生徒とのドデカイ友情や絆があるわけでもなく。
操真晴人のような、絶望を希望に変える魔法があるわけでもなく。
葛葉紘汰のような、誰も見捨てずに泣きながら前に進む強さがあるわけでもなく。
泊進ノ介のような、市民を守る強い正義感があるわけでもなく。
天空寺タケルのような、命を燃やして戦う覚悟があるわけでもなく。
宝生永夢のような、目の前の患者を救う為に、自分自身から生まれ、人を殺めたパラドを共に償うという形で許すドクターとしての信念もなく。
桐生戦兎のような、愛と平和の為に大きな力を皆を守る為に使う正義のヒーロー精神があるわけでもなく。
門矢士のような、世界の破壊者であろうとも世界を巡る旅をしているわけでもなく。
常磐ソウゴのような、今を生きる民の為に最高最善の魔王になるという強く優しい欲望があるわけでもなく。
彼はただテレビで彼等の活躍を見て、その姿に憧れただけの、ただ子供だったのだ。 そんな彼が、安易にライダーの力を手に入れられることなんて、あるはずが無いのに。
たかが20年。されど20年。 歴代平成仮面ライダー達が命を懸けて戦ってきた歴史の重さを、彼は何処かで軽んじていたのだ。
瞬間瞬間を必死に生きた者達。凸凹な時代を、枷に縛られることなく想うがままに駆け抜けてきた平成ライダー。
一視聴者でしかない、普通の彼が安易に強大な力を求め、手に入れたら。
ライダーもどきの怪物に成り下がる事は、ある意味当然だったのかもしれない。
ある日、突然投げ出された殺伐とした非日常に投げ出され。
命のやり取り。
心無い罵声。
拒絶。
ただの青年だった彼を変えるには、それで十分過ぎたのだった。
──
アラタがこの世界へ渡ってから2年が経った。
この世界は、俺を含めた20体の『アナザーライダー』の存在によって崩壊寸前まで追い込まれてる。 紛い物でも、「仮面ライダー」の力をある程度所有しているアナザーライダーの猛攻は、人間達の抵抗も紙屑も同然。
アナザーライダーの力を手に入れた奴らは、何奴も此奴も、借り受けただけに過ぎない物をまるで自分の物のように振る舞い、人間を傷つけ、虐げ、殺していく。 男は例外なく殺し、女は犯し、尊厳を奪い、殺す。
尤も、ある意味アラタもそんな奴らと同じ存在なのだが。
そして立ち寄った先々でまた、目の前で何度繰り返されたか分からない光景が俺の目に映る。
それは、一方的なまでの蹂躙。 銃を持った10人の人間による一斉射撃をものともせず、赤と青の禍々しい仮面ライダービルド・・・・・・『アナザービルド』は1人、また1人と薙ぎ払っては殺し、ボトルを向けて人間を吸収していく。
周りを囲っていた9人の兵士達は消え失せ、アナザービルドはその中で唯一生き残っていた少女へと狙いを定める。
『次は・・・・・・お前だ』
「いやっ・・・・・・! 来ないで ・・・・・・!」
少女の懇願など聞く耳も持たず、アナザービルドは距離を縮める。
本当ならば今すぐにでも助けなければ行けない状況。
「・・・・・・」
しかし、アラタは見て見ぬ振りをした。怖かったからでも、足が竦んだからでもない。己の自身の意思で、見限った。
この世界は弱肉強食。強い者が生き残り、弱い者は死ぬ。俺もそう言い聞かせて、多くの人間を手に掛けた。 だから気にかけることはないと、踵を返そうとして。
ふと、地面に尻餅をついていた小さな少女がアラタに気づく。その少女は恐怖に震えながら、口を微かに動かす。
『助けて』と。
今にも消え入りそうな声で、そう呟いた気がした。飽きるほど聞いた命乞い。でもその言葉は何故か俺を動かして、その女とアナザービルドの間に立ち塞がらせる。
『・・・・・・何のつもりだ、キサマ』
「さあ。俺が一番知りたいよ」
何故身体が動いたのか、それについては今やどうでも良いことだ。現に、後ろにいた女の子もスキをついて逃げ出し、目の前にいるアナザービルドにも自身の存在を把握された。
『・・・・・・退け。 でなければ次はキサマだ』
殺伐とした環境に身を置いていたせいで慣れつつあるが、殺意の篭った敵意を向けられるのには慣れそうにもない。 同種でも、少しばかり脚が竦む。 それを精一杯の強がりで隠しながら、俺は問う。
「なあ、お前は何を望む?」
『は?』
「俺達に力を与えた奴等が言っていただろう。『最後に勝ち残ったアナザーライダーが、新しい王として、この世界に君臨する』ってな。アンタはどんな王になりたいか、気になってな」
アナザービルドは一瞬だけ俺の質問に面を食らったようだったが、それもカカカッ、と口を開く。
『あぁ? そんなモンどうだっていいんだよ。俺は選ばれたんだ、仮面ライダービルドとしてな! この力があれば、俺を見下していた奴らも皆ぶち殺せるっ!! 最高っっじゃねぇかッ!!』
「・・・・・・そうか」
アナザービルドの狂気を孕んだ叫びを、自分でもゾッとするほど、冷たい声で返答する。 奴のあり方は、ラブアンドピースを胸に抱えて戦い続けたあの人とはあまりにも違く、醜く見えた。
そして同時に、コイツの行いを許容すれば俺は奴と同じように、心まで本当の怪物になってしまうと思った。
・・・・・・それだけは、絶対に認めてはならない。
だから、今だけは在り方は本物であろう。
例え、姿がライダーの形をした異形であろうとも。
この身が地獄へ堕ちようとも。
彼等に変わって、俺がコイツを倒そう。
「・・・・・・」
アラタはアナザービルドに敵意を剥き出すかの如く睨み、ボロボロとなっている上着のポケットから禍々しいソレを取り出して、押す。
『ZI-O・・・・・・』
それは、己を異形へと姿を変える為のアイテム、『アナザーライドウォッチ』。
それを起動すると共に腰に現れた黒い『ジクウドライバー』の右側のスロットへと装填する。
強大な力が溢れてくるのが、俺の中で伝わってくる。
本来は人間の自由と平和を守る戦士になる為の言霊を借り受けるように、告げる。
「変身」
その言葉と共に、俺の体を禍々しいアーマーが包む。胸からボディの中心部分に沿って、壊れかけの時計のベルトのような何かが走り、白いボディが光に照らされて眩く光る。顔は白目を向き、剥き出しになった歯茎は傍かも「仮面」を脱いだ人体模型。そして頭部と胸部に刻まれた「ZI-O」と「2019」という記号。
全ての変身行程を終えたアラタは、異形──ー『アナザージオウ』へと姿を変えた。
後書き
完結までよろしくお願いします。
感想、評価等お待ちしております。
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