ドリトル先生の林檎園
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第十二幕その七
「それではです」
「受け取って頂けますか」
「有り難く、ですが悪いですね」
ここでも謙虚な先生でした。
「お礼だなんて」
「とんでもない、では明日早速です」
「作ってくれますか」
「そうさせてもらいます、先生はお身体が大きいですから」
このことはもう頭に入っている日笠さんでした。
「沢山作りますね、それでメニューは」
「何でもいいですよ」
「そうですか?」
「僕は偏食はないですから」
つまり何でも食べられるのです、しかも美味しく。
「ですから」
「では鮭とほうれん草のおひたしとプチトマトでいいですか?」
「はい、全部好きです」
「お握りもですね」
「大好きです」
「なら沢山作ってきますので」
日笠さんは先生から貰ったお土産を両手に大事そうに抱えつつ満面の笑顔で先生に応えました、そうしてでした。
先生は日笠さんからお弁当をご馳走してもらうことになりました、先生はそのことに普通に喜んで研究室でも明日が楽しみだねと動物の皆に言いましたが。
動物の皆は先生にやれやれといった感じで言葉を返しました。
「違うからね、先生」
「日笠さんのお礼は」
「先生はわかっていないんだよ」
「いつも通りね」
「僕達もいつも言ってるけれど」
「それが困るんだよね」
「本当に」
これが皆の言うことでした。
「どうなんだろうね」
「何があっても気付かないって」
「先生の鈍さときたら」
「やれやれよ」
「僕達もやきもきだよ」
「何でそう言うのか言われないけれど」
それでもと言う先生でした。
「僕が悪いことはわかるよ」
「悪いっていうかね」
「どうなってなってるの」
「先生についてね」
「その鈍感さに」
「ううん、僕は鈍感かっていうと」
先生はミルクティーを飲みつつ考えるお顔になって言いました。
「そうだろうね」
「いやいや、普通の時は違うよ」
「普段はね」
「先生気遣い出来るし」
「よく気がついてくれるよ」
「人の気持ちとかね」
あくまで普段はというのです。
「本当にね」
「だからそういうのじゃなくて」
「どうかっていうと」
「本当にね」
「あることについては」
「自分で最初から絶対だって思ってるからね」
それでというのです。
「今も言うんだよ」
「どうかってね」
「そうね」
「そうなんだね、しかしね」
やっぱりわかっていないまま言う先生でした。
「皆僕に何かあるってだね」
「そう、思ってるよ」
「実際にね」
「何かとね」
「今日のことでも」
「日笠さんのことかな、日笠さんはね」
先生はどう思っているかというのです。
「大切なお友達だよ」
「そう思ってるよね」
「先生としては」
「だからお土産も差し上げたし」
「よかったっていうのね」
「僕にしてはね」
本当にというのです。
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