ツンデレバレンタイン
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第四章
「ちょっと来なさい」
「おはようもなしに?」
「おはようって言ってあげるわ」
言われてすぐに返す。
「これでいいわね」
「うん、おはよう」
「挨拶からっていうのよね」
「一日のはじまりはね」
「うっかりしてたわ、とにかくね」
「とにかく?」
「ちょっと来なさいよ」
またこう言うのだった。
「いいわね」
「何処かな」
「人気のないところよ」
実は具体的な場所は考えていない。
「そこでよ」
「人気のないところって」
「ええと、そこは」
チョコのことだけでそこまで考えていないのだ。
だが今必死に考えて言うのだった。
「そうね、屋上よ」
「そこなんだ」
「そこに行って」
そうしてというのだ。
「お話しましょう」
「お話って」
「そこに行けば言うから」
自分のペースに乗り切れてなくそこからボロを出してばれるのかと思い内心不安に感じつつ応えた。
「いいわね」
「それじゃあ」
「屋上に行くわよ」
「わかったよ」
岸田も頷いて、そのうえで。
真帆は彼を自分達のクラスがある校舎の屋上に出た、そこでだった。
すぐにだ、精一杯の勇気を振り絞ってチョコレートを両手に持って岸田に差し出して言った。
「家族にあげて余ったからあげるわ」
「えっ、チョコレートだね」
「見てわかるでしょ」
紙に入れているそれを差し出して言うのだった、赤い紙に入れて丁寧に包んでピンクのリボンで止めている。こちらも上手く出来ている。形はハート形だ。
「それは」
「うん、じゃあ」
「それとね」
勇気をさらに出してだ、真帆は岸田に言葉を続けた。
「付き合ってあげていいから」
「僕とだよね」
「そうよ、そうしてあげていいわよ」
顔を真っ赤にさせただけではない、死にそうなそして今にも泣きだしそうな顔で彼に対して言った。
「あんたがいいならね」
「それじゃあ」
岸田は真帆の告白に一呼吸置いてから答えた。
「僕でよかったら」
「いいって言うのね」
「いや、実はね」
岸田は微笑んで話した。
「気付いていたし」
「そう言うの」
「前に阿倍野に行った時に」
「天邪鬼とか言う娘が出た時になの」
「もうね」
その時にというのだ。
「わかってたし」
「あ、あの時はその」
「僕あまり鋭い方じゃないけれど」
それでもとだ、岸田は真帆にさらに話した。
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