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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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065話 文化祭編・一つの未来(03) 時間逆行

 
前書き
更新します。 

 




ネギはタカミチから学祭で起きた事などを事細かく聞かされていた。
ネギはそれでどうしてそこまでして教えてくれるのかという疑問に、つい聞いてしまった。

「タカミチ……どうして僕にそこまでしてくれるの……?」
「それは、もちろん君達が本来いる時間に戻れるようにするためと……そうだね」

そこでタカミチは今までよりも暗い顔になって、

「士郎を…救いたいんだ。でも、もう僕の手では彼を救う手立てはない……彼は僕の親友と言っても過言じゃない…。だからね、ネギ君」

タカミチはネギの肩を掴んで涙を流しながら、

「君達が士郎を救ってやってくれ……士郎はまだこんなところで人生を終えていい訳がない。やっとだ……この世界に来てやっと彼は仮初でもいい、それでも確かな平穏をイリヤ君と一緒に取り戻したんだ。どうか……」

そう懇願するタカミチの顔はネギを信頼しての顔であった。
しかしネギはそこである事を聞いた。

「もしかして、タカミチは士郎さんの過去を……」
「ああ…。知っているとも。彼らの辿ってきた悲しい人生を…。報われてもいいのに自ら地獄へと進んでいった過程もね」
「…………」

それでネギは士郎との約束を思い出した。
口約束でも士郎はネギに過去を見せてくれると言ってくれた。
その士郎がすでに死んでしまっては約束も果たすことができない。
ネギは、諦めきれない。

「タカミチ…僕は、どうすればいい?」
「それはネギ君自身が考える事だ。超君の事は君に伝える事は伝えた。僕が最後に躊躇ってしまった理由もね。最後に決めるのは君自身の大いなる決断なんだ。失敗してしまった僕達にはなにも言えないからね…」
「…………」

それで顔をこわばらせるネギ。
どうすれば超を止める事ができるのか今もなお頭の中で必死に考えている。
超の正義…。ネギの信じる正義あるいは逆の―――……。

そこでタカミチは一回席を外して誰かと通信をしていた。
そして、

「どうしたの…?」
「君を助けに来たのさ。…………君の仲間達がね」

そう言ってタカミチは外へと出て行ってしまい、そして扉はまた重く閉じられた…。
ネギの思案は止まらない。
超をどうするのか……。そしてどうやったら士郎を助ける事ができるのか……。




◆◇―――――――――◇◆



side 桜咲刹那


申し訳ないですがガンドルフィーニ先生達を倒した私達は地下への入り口を発見して侵入していきました。
それでも螺旋階段が30階もあるなんて聞いていません。
私と、体力がついているアスナさんに古、楓に、鍛えているお嬢様は大丈夫そうですが、宮崎さん、早乙女さん、綾瀬さん、長谷川さんはさすがに辛そうですね。

「楓。先行してもらえないか? お前ならすぐに降りる事ができるだろう?」
「そうでござるな。拙者、先にいっているでござる」

そう言って楓は螺旋階段の真ん中の空いているスペースを飛び降りていった。

「おい!? そんなに簡単に飛び降りても大丈夫なのか!?」
「ご安心を。楓は甲賀忍者。これしきの高さなどものともしません」
「あー……思っていたけどやっぱ忍者なんだな…。あたしの常識が塗り替えられてく~…」

長谷川さんはそれでぶつぶつと言い始めましたが、もう慣れてもらうしかありませんね。
そして私達もしばしして地下最下層へと降りていったのですが、そこで予想外の光景を目の当たりにする。
あの楓が傷だらけで倒れているのだ。

「楓! どうした!? 誰にやられた!?」
「くっ……士郎殿(・・・)と高畑先生にでござる……」

その名を聞いた瞬間、私の中で何かが騒ぎ出した。
誰だ…?
士郎さんを語る不届き物は……?

視線を向ければそこには確かに士郎さんと高畑先生の二人に、後幻想種のケルベロスに乗っている背の小さい子が立っていた。
二人とも無表情でこちらを睨んできていた。

「なんで!?」
「士郎老師アルか!?」
「え!? だって、なんで……」

皆さんが動揺していますが私は至って冷静です。怒りの感情が滲み出そうですがね。
見るとお嬢様も私と同じ感想なのだろう、怖い顔になっていた。
士郎さんはおもむろに口を開き、

「俺はなんとか医療スタッフに緊急処置をしてもらい、息を吹き返したんだ…」
「そういう事だよ。桜咲君」

しかし、そんな戯言など誰が信じるものかと思う。
それは全員同じ感想のようで表情が怒気に彩られていた。

「……そうですか。でしたら士郎さん、一つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「なんだ、桜咲…?」

桜咲、ですか…。懐かしい響きですね。
まだ出会った頃はそう呼ばれていた。
ですが!

「なぜ、私の事を『桜咲』と呼ぶのですか? いつも通りに『刹那』と呼んでください」
「ッ!」

それでケルベロスに乗っている子供が焦った感じを出し始めました。
もしや、本体はあの子供か…?

「あんたはニセモノや! だって、ウチとせっちゃんの士郎さんとの間で結ばれた仮契約(パクティオー)カードはもう死んでもうてるんやから!!」

お嬢様が涙を流しながらカードを出した。
それで私も出した。
カモさんがそれを見て確信したのか。

「…ああ。確かにこりゃ死んでるっすね…」
「だから、あなたは偽物です! ですから引いてください。特にそこの子供…。私の自制心がまだ効いているうちなら痛い目は見ませんから」
「うっ……うるさい!」

そう言って叫んだ子供は私に向かって士郎さんと高畑先生の偽物を放ってきますが、もう遅い…。
すでに私の夕凪に気は充填しておいたんだ。
後は放つのみ。

「魔法の幻覚でしょうね、ですが容易い……受けてみろ! 神鳴流奥義―――……斬魔剣!!」

問答無用で偽物を切り裂きました。
手応えもなし…。当然ですね。

「さて……そのケルベロスで私に対抗いたしますか? 降伏するならよし、まだ歯向かうのでしたら……痛い目を味合わせますよ…?」

夕凪を子供の首筋に添えながらそう言う。
だが、多少大人げなかったのは認めますが魔法が解除されたのかそこには一人の少女と周りに士郎さん、高畑さん、ケルベロスの人形が転がっていました。

「あ……う……」
「侮りましたね」
「う、うわーん……!」

少女は泣き出してしまいました。
まぁ多少は威圧を放っていたのですから当然ですか。
それで少女を宥めた後に理由を聞いた。
すると思った通り、パパがオコジョにされちゃうからなにかお手伝いしたい…と。

「そうですか」

背後で「桜咲さん、こえぇ…」「刹那も冷静アルネ」「お、傷がなくなったでござる」などなど聞こえてきますが、今は些細な事です。

そして少女は奥の方へと逃げて行ってしまいました。
私達も追おうとしますが、そこで長谷川さんが、

「おい待てよ! なんでお前らそこまでできるんだよ!? 下手したら幻覚でも死んでいたかもしれないんだぞ! それに、私達はあくまでただの中学生だ。そこまで肩入れする必要はないんじゃないのか!?」

長谷川さんの言い分は分かります。
ここにいる人達の半数以上がまだこちらの世界を知らない人ばかりですから。
ですが、

「長谷川さん、それでも私とお嬢様は士郎さんの道に付いて行くと決めているのです」
「そうや。だから今まで必死に修行を頑張ってきたんやからな」
「だからってよ…」

辛そうな顔になっている長谷川さん。
その気持ちは何となくですが察せます。
まだ引き返せる。覚悟をするには尚早いと言いたいのでしょう。
そこにアスナさんが、

「ネギは一人にはできないしね」
「はい。ネギせんせーと離れ離れになってしまうのは嫌です!」
「超りんの野望も止めないとだしね」
「士郎老師を助けるアルよ!」
「にんにん♪」
「日常と非日常……それの境目を踏み越えてしまった以上はもう覚悟は決まっているです」
「…………ッ! ああ、もう……本当にてめぇらって奴は…」

長谷川さんもなにか覚悟を決めたようでそれ以降は何も言わずに付いてきてくれました。
そして少女が向かった先には、今度こそ本物の高畑先生と弐集院先生がいました。
私達はそれで構えを取りますが、高畑先生は笑みを浮かべながら、

「行きなさい…」
『えっ…』
「立場上協力はできない。でも、10分くらい居眠りをしちゃうなんてことはたまにはあるからね」
「あ、ありがとうございます!」

それで高畑先生の間を抜けていく途中で、アスナさんには『がんばって』と声をかけて、私には、

「士郎を救ってくれ…」

そんな、懇願する声が聞こえてきた。
それで私は無言で頭を下げた。





―――Interlude



「頑張るんだよ、アスナ君。それにみんな……」

一同を見送ったタカミチはたばこでも吸おうかなと思っていた時だった。

『高畑先生……』
「ッ! 相坂くんか」

そこには幽霊の相坂さよが浮いていた。

「こんなところまで来てどうしたんだい…?」
『はい…。お伝えしておかないといけない事がありまして…』
「それは…?」
『私、士郎先生と使い魔の契約を結んだ仲だったんです…でも、士郎先生は死んじゃった後、私どうすればいいかと考えたんですが、それなら士郎先生の魂を呼び寄せればいいんじゃないかと思って…』

そう言いつつさよは手のひらを広げるとそこにはおぼろげながらも小さい霊魂があった。

「もしかして、この魂って……」
『はい。士郎先生のです。私の目覚めた能力でなんとか拡散せずに現世に留められています…』
「目覚めた能力って…それよりなら士郎は…?」
『はい…。今はまだ表層意識が薄いのか目覚めていませんが、私の能力『魂を1ランク上に昇華』でなんとかそのうち目を覚ますと思います…』
「本当かい!?」






さよが語った能力。
『魂を1ランク上に昇華』。

これは士郎達のもとの世界では第三魔法『魂の物質化』に似た能力になる。
士郎の死がきっかけで目覚めた能力ゆえにまだうまく使いこなせていないが、どうにかできれば死者蘇生も可能にできる能力である。

…………だが、本来の時間軸の彼女がこの能力に目覚める事は滅多にないだろう。
必死にあがいた結果、発現した能力なのだから。







「ああ……これでどうにかイリヤ君に顔向けできるかもしれない。彼女ならどうにか魔術でできるかもしれない」
『はい…。それなんですがー……当分は士郎先生の魂は私が預かっていても構いませんか…?』
「なぜだい…?」
『今はこうしてなんとか話し合えていますが、デメリットで私が今すぐにでも意識を手放すと士郎先生ともども悪霊化してしまうかもしれませんから…落ち着くまで私が責任をもって面倒を見ます…』
「そうか……そういう事なら仕方がないな。任せたよ、相坂君…」
『はい…それでは失礼しますね』

さよはそれで士郎の魂ともどもどこかへと消えてしまった。
それでも士郎を蘇生できるかもしれないという事態にタカミチは今もどこかで戦っているイリヤ達の説得に骨を折る思いをするだろうと気を引き締めた。



Interlude out―――




…………一瞬、士郎さんの気配を感じましたが、気のせいですよね。
ソレより今はネギ先生となんとか合流出来て世界樹の根っこの中心部に向かっています。
カモさんの話によりますと、世界樹の魔力で動くカシオペアはまだ最深部の魔力が一週間くらいならまだ残っているかもしれないというもの。
しかし、安心したのもつかの間、世界樹の光がどんどんと消えていってカシオペアも動かないまま。
さらにはドラゴンの出現とあっては逃げるしかありません。

「もー! こんなとこまできてー!」
「泣き言は助かってから言いましょう、アスナさん!」

そして最下層中心部まで来たのでしょう。
そこにはなにやら祭壇らしい建造物があり、その中心におそらく世界樹の核が置かれていました。
あれならおそらくは!

「ネギ先生、カシオペアは!?」
「いけます!」
「でしたら急ぎましょう! もうあのドラゴンも間近に迫ってきています!」

そしてみんなで手をつないで離れ離れにならない様にしますが、そこでネギ先生がなにかを迷っているようです。

「ネギ先生…超さんをどうにかできるとかは今は保留にしましょう。今は士郎さんを助ける事だけに気を向けてください!」
「は、はい! みんな、掴まってください! いきます!!」

そしてネギ先生はカシオペアを起動した瞬間、私達は時間が巻き戻るような感覚を味わい、一瞬の意識の混濁の後に、目を開けるとなんとそこは空の上でした…。

皆さんが「落ちるー!!」と叫んでいるところで、ついぞ先ほどまで感じられなかった仮契約(パクティオー)カードに力が戻ってくる感覚を味わい、

「士郎さん! 助けてください!!」
「士郎さん、助けて!!」

私とお嬢様は必死に叫びを上げました。
そして、







―――――まったく……君たちは一体なにをしているのだね…?






もっとも聞きたかった人の言葉が聞こえてきた瞬間、私たち全員はなにかの布に巻き取られていつの間にか士郎さんの『剣製の赤き丘の千剣』の上に乗せられていました。

「大丈夫か、みんな?」
「士郎、さん……?」
「ああ。士郎で間違いないが、みんなしてどうしたんだ…? そんな泣きそうな顔になっていて…」
「「「「士郎さん(老師)!!」」」」
「うぉっ!?」

私とお嬢様はすぐさまに抱き着きました。ああ、士郎さんの温もりを感じられる…。
ちゃんと生きている…。
イリヤさん、必ず士郎さんの事は守ります。見ていてください…。

「とりあえず落ち着こう。なぜか、プスンプスンッと言い始めて静かに落ちていっているからな?」

それで私達はどこかの屋上へと降りました。
でもそこでネギ先生がカシオペア使用による魔力の枯渇で倒れてしまい、カシオペアにも罅が入ってしまっていました…。
やはり一週間のロングスパンはネギ先生でもきつかったようですね…。

でも、まだ時間は昼過ぎ辺りとみました。
対策を取らないとですね。
気を引き締めよう。

「…………まぁいいんだが、説明の一つでもしてほしいものだが」

そうですよね。説明しませんと……。



 
 

 
後書き
最後に士郎を登場させました。
さぁ、反撃タイムですね。

未来のさよちゃんがなにげに強キャラになってましたね。 
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