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ほのぼのなふたりの甘い日々(柳ぐだ♀)
前書き
現パロ・オニオンスープを二人で作って、食べる話(1,000文字程度)
CP色がやや強めです(多分)
「今日はスープにしようと思います!」
近隣からの厚意で新玉葱を頂戴してから二日目。料理の腕前は平均程度である少女と、手伝いならば可能な己――何とも不思議な組み合わせだと、自身ですら思う――二人で選んだのは、『おにおんすーぷ』なる一品だ。購入した料理本には、この頁以外にも複数の付箋が貼り付けられている。
「新玉ねぎはいいですねー、泣きながら切らなくていいって嬉しい」
「うむ。私としても、そう貴殿の涙を見たくはないものだ」
不意に、ゆっくりではあるが一定の速度で刻まれていた響きが止んだ。こちらも作業を中断し視線だけを横へ向ければ薄らと色づいた耳が目に入る――なるほど、随分と可愛らしい反応をなさるな。ふ、と息を漏らしたことが羞恥を煽ったのだろう、少女は先程より幾らか大きな音を立てながら動きを再開し始めたのであった。
「いい色だし、美味しそうな匂いだー」
少々炒めすぎたりもしたが最後の煮込み段階になる頃には、鍋からふつふつと食欲を刺激する香りが湯気を伴い立ち上っていた。嬉しそうに相好を崩す少女へ皿を渡し、取り分けてもらっている間に洗い物を済ませておく。
付け合せの菜とパンも卓袱台に並べ、それぞれ対面に座し手を合わせる。食前の挨拶を唱え口へ運んだ一掬いは、とろりとしていながらも香ばしく、味噌汁とは違えども臓腑を温めてくれる味であった。
「はあ……柳但さん、おいしいですね」
「そうだな」
己に気を遣って会話が続けられることなく、静かに食事は進む。初めは緊張故に硬い表情であった向かいに座る少女は今や、柔らかな面差しでパンを頬張っていた。ああ、なんと長閑な時であろうか――。
「あの……またこうやって一緒に料理をして、それで、また食べてくれますか?」
「――はて。私は以前、その問いに何とお答えしたかな」
「! 柳但はいじわるだあ……」
とうとう顔を覆って屈みこんだ少女の、隠しきれていない肌が赤らんでいるものだから――鳴る笑みを殺しきることが出来ず、さらに彼女を縮こまらせることとなった。人聞きの悪いことを仰られるなあ、そうからかいの言葉を落とせば不服そうな声色が明らかな期待を含んだ次回を強請るのだ。
「ならば、その様に」
差し伸べた手には何も重なりはしないが、飛び付いて来た一見か弱い身体を抱き留めることは実に容易い。――過ぎた願いは、やはりこの身を滅ぼさんと侵蝕を始めているが承知の上。少女の誘いを受け入れたあの日、確かにこの者と共に在りたいと思ったのだから。
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