おっちょこちょいのかよちゃん
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31 帰って来た従姉
前書き
《前回》
久々の晴れの日、学校はプールの授業を行っていた。かよ子はまる子にたまえと話しかけて先生に注意されたり、タイル拾いでタイルを落としてしまったりとおっちょこちょいぶりを発揮してしまう。その後、かよ子は短冊に切実な願いを書く。一方、かよ子の隣の家に住む三河口は従姉が帰ってくると聞くのであった!!
とある雨の日の朝、かよ子は家を出ようとすると、母から止められた。
「かよ子、傘忘れちゃだめよ」
「あ、ごめん!」
雨の日だというのに傘を忘れるなど恥ずかしいおっちょこちょいをやってしまったと思った。その時、隣の家から三河口も出てきた。
「あ、三河口のお兄ちゃん!」
「ああ、おはよう、かよちゃん」
かよ子は母に行ってきますと言って三河口と歩いた。
「そうだ、かよちゃん、明日ね、俺の従姉が帰ってくるよ」
「ええと、あのお姉さんだっけ?」
かよ子は三河口の従姉とは幼稚園児の頃に会った事がある。自身が小学校入学と共に家を出て今は名古屋にいるという。
「そうだよ。楽しみかい?」
「うん、あまり会ってないからね」
「俺も楽しみだよ」
途中で二人は別れた。
かよ子は学校で降り続く雨を見ていた。そしてクラスメイトの女子の会話を耳にする。
「ねえ、ねえ、今年の七夕、雨みたいだよ」
「本当?織姫と彦星、会えないね〜」
かよ子はその会話を聞いて織姫と彦星を自分と好きな男子に例えてみた。そうなるととても辛くて切ない。特に、異常事態が起きている今年ならなおさらそれが現実になる可能性がある。
(七夕の日が雨でも、この願い事、叶ったらいいな・・・)
清水では七夕の後にも伝統的な祭事がある。それは日本平の花火大会、そして清水みなと祭りなどがある。以前は巴川にて灯篭流しもあったが、川の汚染の問題で休止中である。その為、今は川田守という人がその川を綺麗にするために活動している。
三河口は学校にてせっせと次の授業の科目の準備をしていた。そんな様子を奏子が遠くから見ている。
「ねえ、ねえ〜、そんなに三河口君が気になってんの〜?」
「え?」
奏子は友人の中川瞳に声を掛けられた。
「う、うん・・・。今度の日本平の花火大会に一緒に行きたいなって思って」
「じゃあ、聞けばいいじゃん」
「う、うん・・・」
奏子は好きな男子の所へと向かう。
「あの、三河口君・・・!」
「ああ、奏子ちゃん」
「今度、日本平でやる花火大会、一緒に行かない・・・?」
「うん、いいよ」
三河口はあっさりと承諾した。
「あ、ありがとう」
奏子は赤面しながら礼をした。
(三河口君とデートできるなんて・・・)
「奏子ちゃん」
「え?」
「今週末に従姉が帰ってくるんだ」
「そうなんだ。女子?男子?」
「女子だよ。名古屋に住んでるんだ。俺も気になってるんだが」
「へえ、楽しみだね・・・」
奏子はその三河口の従姉に会ってみたいと思った。
かよ子は冬田が嬉しそうな顔をしているのが見えた。
「冬田さん、どうかしたの?」
「ああ、山田さあん、実は明日から雨でしょ〜。私のおじいちゃんが新しいレインコート買ってくれたのよお〜。大野君に見せたらなんて言うかな〜、って思ってねえ〜」
「そ、そうなんだ・・・」
かよ子は何も言えなかった。冬田は確かに以前、大野、杉山、ブー太郎、そしてまる子と共に造った秘密基地を組織「義元」に乗っ取られた際に、その争いを鎮める為に貢献し、大野からは感謝された事がある。とはいえ、普段は大野に暑苦しくアプローチしているので、大野が「似合う」とか「可愛い」とか言うかは謎だった。それをはっきり言っても冬田を傷つける事になってしまうのでかよ子はとりあえず「大野君から『可愛いな』って言われるといいね・・・」とは言っておいた。
(雨か・・・。この前は折角晴れたのにな・・・)
かよ子は雨を憂鬱に思った。
東海道新幹線の車内。そこに一人の女性が名古屋から乗車していた。一時間ほどしてて列車が静岡に到着すると同時に下車した。そして静岡市と清水市を結ぶ列車に乗り換えた。清水市内の小さい駅にて降りるとそこからとある家に到着した。
「只今~」
「あ、さり、お帰り!」
さりと呼ばれたその女性は母親に上がられた。
「健ちゃんいる?」
「いるよ」
さりは実家に居候している従弟に会いに行った。その従弟は学校から帰って勉強疲れなのかその場で昼寝していた。さりは従弟の顔を覗く。
「健ちゃん、久しぶり~」
「・・・ん?」
三河口は目を開けた。その場に年上の女性がいた。三河口は従姉の羽柴さりだとすぐ気づいた。
「ああ、さりちゃん。ご無沙汰しております・・・」
三河口は従姉とはいえ、年上だからか常に敬語で接している。三河口は起き上がった。
「すみません、折角帰って来たというのに寝てしまって・・・」
「いいよ、気にしないよ」
「隣のかよちゃんは元気にしてんの?」
「はい、おっちょこちょいやってますけど元気ですよ」
「んじゃ、会いに行こうっと」
さりは隣家へと向かう。三河口も付き添った。
かよ子は母と話していた。
「お母さん、今日隣のおばさんのところのお姉さんが帰ってくるんだって」
「ああ、さりちゃんね。おばさんから聞いたわ」
その時、インターホンが鳴った。かよ子の母が玄関に向かうと、噂をすればの隣家の羽柴家の娘だった。その従弟もいた。
「こんにちはー!」
「あら、さりちゃん、久しぶり!」
「おばさん、久しぶりです!」
「あ、お姉ちゃん・・・!」
かよ子も玄関へと出た。そして相変わらずのおっちょこちょいをやってしまった。廊下を滑って転んでしまった。
「ああー!!」
「相変わらずのおっちょこちょいね」
かよ子は恥ずかしくなってしまった。
「で、さりちゃん、何かあるのでは?」
三河口が聞く。
「ああ、そうそう。折角帰って来たし、皆で私の家で食事如何ですか?」
「え!?いいんですか!?おばさん、驚きますよ!」
「いいって、いいって!」
こうしてかよ子の家族も羽柴家にて食事することになった。
(お姉ちゃんと食事するなんて久しぶりだな・・・)
かよ子にとって楽しみな食事となった。
かよ子とその両親は羽柴家で御馳走になった。羽柴家の食卓には味噌汁、おひたしがあり、山田家の食事と変わらないが、御飯はうなぎとの混ぜご飯、おかずはフライドチキンのような鶏にトンカツに味噌が乗っていた。
「すごーい!」
かよ子はあまり見たことのない料理に目を光らせた。
「これはひつまぶしって鰻料理よ。これは手羽先で、こっちは味噌カツ。みんな名古屋の名物よ」
さりが説明した。かよ子はよだれをたらしたい気分だった。
「うわあ、美味しそうだね!私も名古屋行ってみたいなあ」
「ちょうど静岡県の隣だから新幹線で一時間くらいで行けるよ。それ以外にも美味しい物はあるし、水族館やお城とかもあるよ~」
「うわあ」
「さりちゃん、帰るついでにかよちゃんも名古屋へ連れて行ったらいかがでしょうか?」
三河口がさりに聞く。
「何言ってんのよ、かよちゃんだって学校があるでしょ」
「ああ、そうでしたね」
皆はどれも名古屋名物の食事を楽しんだ。そしてかよ子は手羽先が上手く食べなくて苦労した。またいつものおっちょこちょいをやってしまったと思った。さりから食べ方を教えて貰ってなんとか食べられるようになった。
「手羽先は酒にぴったりだな」
奈美子の主人・利治はそう言う。
「もちろん、合うよ~」
利治は赤ワインと一緒に呑んだ。
「お。こりゃいける!」
「では、私も」
かよ子の父も便乗した。二人にとってもいい味で手羽先はワインにぴったりマッチした。やがて食事も終わり、かよ子達は自分の家へ帰る事にした。
「それじゃね」
「おやすみなさい」
かよ子はあと一言、さりに声を掛けようとした。
「あの、さりお姉ちゃん・・・!!」
「え?」
「明日、一緒に遊んでいい?」
「うん、いいよ」
かよ子は明日を楽しみにしながら両親と共に自分の家へと戻った。
異世界からこの現世に呼び出された男が今テルアビブを出て日本へと向かっていた。
「弟よ、この世界に戻って来られて嬉しいぞ」
「ああ、兄貴」
「ところで、日本の清水に何故拘る?」
「我々の計画を脅かす道具があるんだ。それを奪ってしまおうというのが房子さんの命令だよ」
「ほう」
「それに清水では大雨が降る予定だ」
「ならばその雨を強めようではないか。天よ、我に仕事を与えよ!!」
後書き
次回は・・・
「雨天の日曜日」
雨の日、外で遊べないかよ子は隣の家で三河口やさりと共に、まる子やたまえを呼んで人生ゲームをして満喫する。一方、テルアビブから二人の男が日本の清水へと向かう・・・。
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