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ドリトル先生の林檎園

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第十一幕その七

「川の中で激しく組み合って」
「そこまでしてなんだ」
「ようやく勝ったって話はあるよ」
「そうなんだね」
「けれどね」
 それでもと言う先生でした。
「総大将同士の一騎打ちになると」
「そこまではだね」
「そうそうね」
 幾ら一騎打ちがあってもというのです。
「ないね」
「そうなんだね」
「上杉謙信さんは自分を毘沙門天の化身と思っていて」
「そのことは有名だね」
「若しくはその加護があると信じていた人で」
 それでというのです。
「自分が真っ先に敵に刀を抜いて馬に乗って突っ込む人だったんだ」
「勇敢だったんだね」
「自分が戦で死ぬとか怪我をするとかね」
「考えなかったんだね」
「アレクサンドロス大王みたいにね」
「あの人は凄いよね」
 トートーもこの人のことは知っています。
「まさに英雄だよね」
「あっという間に大帝国を築いたのよね」
 ポリネシアも言います。
「マケドニアから出て」
「ペルシャを倒してインドまで行くとか」
 しみじみとして言うダブダブでした。
「物凄いわよ」
「エジプトまで征服して」
「若くして亡くなったけれど」
 チープサイドの家族もアレクサンドロス大王についてお話します。
「あっという間にね」
「物凄い帝国を築いたわね」
「あの人は自分をアキレウスの生まれ変わりと思っていたから」
 だからと言う老馬です。
「戦いで死ぬとか傷付くとか思っていなかったんだったね」
「戦争の指揮も凄くてご自身も強かったし」
 ジップは先生からこのお話を聞いていて知っているのです。
「それでだったね」
「あの人も総大将だったけれど」
 チーチーは謙信さんとこの人を両方思っています。
「そうしていたね」
「普通はしないんだよね」
 ガブガブは普通の戦いのお話をしました。
「総大将自ら突っ込むとか」
「だから川中島でも」
「実際に総大将同士で一騎打ちをしたか」
 オシツオサレツは二つの頭で考えています。
「それはね」
「流石にないかな」
「確か謙信さん一騎で武田軍の本陣に入ったんだよね」
 最後に老馬が言いました。
「信玄さんのところに」
「実は謙信さんは一万以上の軍勢が囲んでいるお城に三十人もいない兵を連れて具足も付けずに乗り込んだこともあったよ」
 ここでこのお話もする先生でした。
「敵軍は驚いて道を空けたけれどね」
「うわ、それも凄いね」
「無茶苦茶するね」
「本当にアレクサンドロス大王みたい」
「そんなことする人日本にもいたの」
「一万以上の大軍に三十人以下で乗り込むとか」
「それも鎧も着けずに」
「それで突っ込んだよね」
 皆も驚きを隠せません。
「そんな人だったんだ」
「本当に毘沙門天みたいだよ」
「そりゃ敵も驚いて道を空けるよ」
「そんなことをする人には」
「だからこの川中島でも」
 その戦いでもというのです。
「本当にやったと言われても」
「不思議じゃないね」
「そして信玄さんと一騎打ちをしていても」
「それでもね」
「そうだよ、そんな謙信さんと戦える人は」
 それこそというのです。 
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