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ヘタリア大帝国

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TURN30 左遷その六

「今親衛隊を北欧に送っても問題はない」
「そうでしょ。だからなのよ」
「北欧の治安は万全にしておきたい」
 こうした政治的判断も出た。
「それではだな」
「ええ、それじゃあいいわね」
「わかった」
 レーティアは頷いた。こうしてだった。
 ヒムラーは正式に北欧に派遣されることになった。ていのいい一時的な左遷だった。だがヒムラーはそれを受けても平然としてだ。こう僅かな腹心達に話した。
「かえって好都合だな」
「北欧だからですか」
「それ故にですね」
「ああ、だからだよ」
 余裕綽々の感じのいつもの軽い顔での言葉だった。
「北欧にはあれがいるらしいからな」
「サラマンダーですね」
「あれがいますね」
「その噂がありますね」
「そうさ。だからだよ」
 こう言ってだ。ヒムラーはその左遷を快く受けた。この話を聞いてだ。
 グレシアは己の席からだ。こう言ったのだった。
「何でにこにことしてるのかしら」
「内相ですか」
「北欧に行かれるというのにですね」
「ええ、左遷なのよ」 
 それはヒムラーもわかっている筈だ。彼とて愚かではないからだ。
「それでどうしてなのかしら」
「そうですね。おかしいです」
「何故あそこまで明るいのか」
「サ船であることは間違いないのに」
「それがどうして」
「まるでね」
 グレシアの勘が動いた。レーティアをも見出したその勘が。
「北欧に待ち望んでいるものがあるかの様にね」
「北欧は極寒の地ですが」
「雪と氷の星域です」
「そこにあるといえば何でしょうか」
「それは一体」
「アルビルダ王女みたいな可愛い娘はいるけれど」
 グレシアは美女、美少女はいると述べた。
「けれどそれでもね」
「何かが違いますか」
「それでも」
「ええ、美女以上の何か」
 また言うグレシアだった。
「それがあるみたいね」
「問題がそれが何か、ですね」
「一体何なのか」
 宣伝省のスタッフ達も首を傾げていた。
 そしてそのうえでだった。彼等も首を捻って述べた。
「とにかく北欧への一時左遷は決まりました」
「ではそのままいきましょう」
「とりあえずは」
「ええ。少なくとも今ベルリンに置くよりはいいわ」
 自分の地位を脅かされることも気になるがそれ以上にだった。
 レーティアにさらに取り入り何かをするのではないか。その危惧からだった。
 グレシアはヒムラーを北欧に送った。そうしたのだった。
 そのヒムラーは北欧に入るとすぐにだ。真の意味の腹心達にこう囁いた。
「じゃあいいな」
「はい、氷の中を調査して」
「そのうえで」
「伝承の通りならここにいるんだ」
 このだ。北欧にだというのだ。
「いや、隠れているんだ」
「あの大怪獣が」
「ここに」
「まあバルバロッサ作戦には間に合わなくてもね」 
 それでもだというのだった。
「あれは我々にとっての最大の切り札になるからね」
「そうですね。ソビエトに対しても」
「そして他の国々に対しても」
「俺は正直なところあの戦争はどうでもいいんだ」
 バルバロッサ作戦の成否、それはだというのだ。
 
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