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曇天に哭く修羅

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第一部
  おかしなこと

 
前書き
短い。 

 
「ただいまー」


【夏期龍帝祭】が始まって以来、何処かへ行方を眩ませていた《永遠(とわ)レイア》が黒鋼の屋敷に戻ってきた。


「あ、兄さん」


黒鋼焔(くろがねほむら)》はレイアに近寄る。


「紫闇は?」

「あそこ」


立華紫闇(たちばなしあん)》は打倒《クリス・ネバーエンド》を目指して修業に励んでいたが、今日も【打心終天】を会得できないでいた。


「レイアさん、帰ってたんですね。一体今まで何処に行ってたんですか?」

「私の学校だよ。別に出席しなくても卒業は出来るんだけど、たまには顔を出しておいた方が良いからね。留守を任せてる人も居るし」


そこへ《黒鋼弥以覇(くろがねやいば)》もやって来た。



「ほっ、ほっ、ほっ。久し振りに小僧の鍛練を見ておったがレイアまで揃うとはの。どうじゃ、お主も参加せんか? 体が(なま)っとらんか確認してやるぞい」


レイアは道着に着替えてから紫闇と共に焔と弥以覇に見られながら基礎能力を上げて地力を付ける為の訓練に参加。

肉体を酷使し【魔晄(まこう)】を枯渇させ、精神を磨り減らす苛烈な鍛練だが紫闇は歯を食い縛って耐え、滝のような汗を(したた)らせていた。

しかし、そんな彼の直ぐ近くでレイアは軽いジョギングでもしているかのように淡々と、平然とした顔で汗を掻かず、息も切らせず紫闇と同じメニューをこなす。


「やっぱり兄さんは化物だ」


焔は嬉々としている。

レイアの弟《エンド・プロヴィデンス》もそうだが二人は持って生まれた才器(もの)が自分達と比べて良いようなレベルに留まっていない。

紫闇もレイアの様子を眺めながら呆れているが修業は休むこと無く続けていた。

そんな彼がとある行動を取ると弥以覇が驚き焔が喜びレイアが関心して視線を向ける。


「どうしたんだよ三人とも。俺は別に何もおかしなことはしてないだろ?」

「いや、さっき紫闇の小僧がやったことは黒鋼流において間違いなくおかしい。何せ儂と焔が絶対に出来んことをしたからのう」

「見るのは兄さんとエンド君以来だね。この調子でどんどん強くなってくれ。打心終天と一緒にその技術も伸ばそう。今年だけでどれだけ強くなるのか本当に楽しみだよ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


修業が終わって一段落した後、紫闇はレイアに今まで何をやっていたのか尋ねる。


「さっきも言ったけど自分の学校に行った。それから留守を任せてる人間に会ってきたんだ。ついでに一部を除いた各学年の序列最上位を何人も野試合で負かしてやったよ。まったく生徒会長っていうのは仕事が多い」


紫闇は目を丸くした。

【魔術学園】の生徒会長は学園で最強の実力を持つ生徒が勤めていること殆ど。


(レイアさんが強いのは昔から知ってるし、この人なら会長やってても納得できる。でも去年の【全領戦】には居なかったよな?)


一体何処の魔術学園に通っているのかを聞いたことは無かったが、レイアの力なら個人と団体どちらかの部に必ず出ている筈だ。

彼が無名のままで居るなど有り得ない。

紫闇はそう確信している。


「レイアさんの学校ってレイアさんが全領戦の選抜になれないような所なんですか? 俺にはちょっと考えられないんですけど」

「私が無名のままなのは、正直なところ【天覧武踊/てんらんぶよう】に興味が無くて、【魔神】になってやろうっていう意思も皆無だから、まともに試合や大会へは参加してないっていうのが有るのかな」


他にも全く登校していなかったり、生徒会長という面倒臭い仕事を引き受ける代わりとして、他の人間に全領戦へ出場してもらったりしたのだという。


「どうりでレイアさんの【古神旧印(エルダーサイン)】が成長してないわけだ。俺ですら四割完成してるのに。一体何処の学校なんです?」


紫闇の問いに返ってきたのは。


「【鳳皇学園/ほうおうがくえん】」


【龍帝学園】のライバル校だ。


「……は? え、いや、マジっすか? マジですか? マジなんですか? あの(・・)鳳皇学園で間違いないんですか!?」


紫闇が叫ぶのも無理は無い。

日本全国に存在する八ヶ所の【学園領域】の一つ、近畿領域・奈良の魔術学園。

其処が去年出した全領戦の成績は。


「うん。全領戦で個人・団体の二冠を達成した所で間違いないよ。昨年は四人の魔神が死んだゴタゴタで【頂上決戦】はしてないけど」


紫闇が知る昨年の鳳皇学園団体メンバーは皆一年生にも関わらず、既に全員が魔神と同等の域とまで言われる程で、単一の学園生徒によるチームでは古神旧印のシステムが生まれて以来、最高という評価も有る。

個人戦で優勝したのも団体戦メンバーの一人であり、その人物は昨年まで史上最強と言われた《神代蘇芳(かみしろすおう)》を超えて自分に匹敵する、と蘇芳を殺した新しい最強から御墨付きを出されている程の逸材だ。


「そりゃレイアさんは強いわけだ」


現在世界中に在る魔術学園で団体戦をすれば間違いなく優勝するとされる鳳皇学園の代表達と『対等(ため)』を張れるのだから。

しかもそのメンバーから生徒会長を任せても良い程の信頼まで得ている。


「彼等と比べて私の方が強いとは言えない。一番弱くないのは確かだけど」
 
 

 
後書き
鳳皇学園の団体戦メンバーで現在の作品世界に居る魔術師トップ4に君臨する

白良々木眩/しららぎくらむ

ミディア・ヴァルトシュタイン

夢絶叶/むぜつかの

皇 皇皇/すめらぎこうのう

と指しで戦って勝てる可能性が有るのはレイアを含めて三人居れば良いかな。

三人以外に居るメンバーの内、二人は成長次第でトップ4に勝てるかもしれない。

残り一人はちょっと厳しい。 
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