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戦国異伝供書

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第七十一話 黄色から紺色へその二

「この通り」
「左様ですな」
「それは何より。して」
「何でしょうか」
「ちらりと浅井殿のお話が出たでおじゃるな」
 話の最後の方でというのだ。
「それで、でおじゃるが」
「次はそれがしがですか」
 その長政が応えた。
「お話を」
「お願い出来るでおじゃるか」
「おお、そういえば浅井殿のお話はどうだったか」
 信玄も笑って言ってきた。
「興味がありますな」
「確かに。浅井殿は天下の柱のお一人」
 謙信も言ってきた。
「それだけに」
「それがしのこともですか」
「是非です」
「お話して頂きたいです」
 信玄も謙信も言うのだった。
「浅井殿がよければ」
「そうして頂けますかな」
「面白い話とも思えませぬが」
 長政は少し謙遜して述べた。
「しかしそこまで言われるのなら」
「お話をですな」
「して頂けますな」
「さすれば」
 長政は応えた、だがここで言うのだった。
「ただ、それがしの話は市と会うまでで」
「ご正室のですな」
「ははは、室は市一人ですので」
 長政は政宗に笑って返した。
「ですから」
「奥方様とお会いするまでの」
「そこまででよいでしょうか」
「楽しみですな」
 政宗は笑って述べた。
「それでは」
「これよりですか」
「お聞かせ下され」
「さすれば」
「では茶を」
 雪斎がここで言ってきた。
「煎れますので」
「茶を飲みながらですか」
「はい、他の方々と同じく」
 こう長政に言うのだった。
「お話して頂けますか」
「茶とはまた結構なことを」
「浅井殿もお好きと聞いたので」
「はい、上様がお好きなので」
 義兄にあたる彼がとだ、長政も答えた。
「よく馳走になっております」
「上様から直接ですな」
「こうして大坂や安土にいた時は」
「ではこの度も」
「昨日頂きました」
「それがしも一緒でした」
 家康も笑って言った。
「その時は」
「そうでしたか」
「南蛮の菓子もいただきました」
「上様は甘いものがお好きなので」
 長政は信長のこのことも話した、酒が飲めぬ彼はそうしたものをこよなく愛しよく口にしているのだ。
「それで、です」
「浅井殿もですか」
「はい、頂きました」
 その南蛮の菓子をというのだ。
「そうしました」
「そうでしたか」
「それで今もですな」
「はい、茶を」
 それをというのだった。 
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