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戦国異伝供書

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第七十話 独立その十

「是非な」
「はい、三河は治めますと」
 大久保が言ってきた。
「今より遥かにです」
「豊かになるな」
「そうした国です、ですから」
「腰を据えてじゃな」
「しかと治めていきましょうぞ」
「ではな」
 こう話してだった、家康は五十万石の領地の政をはじめた。そのことをはじめてそれがようやく地固めが見えたところで。
 信長は近畿の殆どと四国の四分の三を掌握し都に将軍を擁し七百二十万石の大身となった、そうしてだった。
 織田家の中に入れられていた今川家も変わった、家康は浜松でその話を聞いて話を伝えた雪斎に笑顔で話した。
「それはまた」
「徳川殿から見られてもですな」
「はい、よいことです」
 こう雪斎に答えた。
「まことに」
「左様でありますな」
「十万石ですか」
「そのお立場で、です」
「家を残して頂けますか」
「残念ですが守護ではないですが」
 それでもというのだ。
「織田様がです」
「それはよいことですな」
「そして拙僧はです」
「その今川家の家臣として」
「織田家にお仕えしています」
 織田家から見れば陪臣の身分でというのだ。
「そうなっておりまする」
「以前お話された通りに」
「そうして働かせて頂いております」
「他の今川家の家臣の方々と共に」
「そうなっておりまする」
「左様でありますな、それでなのですが」
 ここで家康は雪斎にこうも言った。
「今は徳川殿ですか」
「それが何か」
「竹千代ではなく」
「ははは、お立場が変わられましたので」
 それでとだ、雪斎は家康に笑って返した。
「ですから」
「今はですか」
「徳川殿とです」
 その様にというのだ。
「呼ばせて頂いております」
「左様ですか」
「そして徳川殿はですな」
「それがしはやはり」
 家康としてはというと。
「和上とです」
「呼んで頂けますか」
「それで宜しいでしょうか」
「はい」
 雪斎はまた笑って答えた。
「それでは」
「ではその様に」
「いや、しかし五十万石になられ」
「それで、ですか」
「雰囲気もです」
 こちらもというのだ。
「変わったと」
「風格が出ましたな」
「そうですか」
「これまでは家臣の雰囲気でしたが」
「今川家にいた頃は」
「実際にそうでしたし、ですが」
 それがというのだ。 
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