ドリトル先生の林檎園
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第八幕その七
「個人情報を狙うことが多いね」
「プライベートを検索したりして」
「それで悪いことに使うから」
「そうしたことをするから」
「善人か悪人を見極めることの一つだね」
「このことは」
「そして先生は」
動物の皆は先生をあらためて見て思うのでした。
「そうしたこともしないから」
「いい人でね」
「そして紳士だね」
「それも立派な」
「いい人か紳士かはわからないけれど」
それでもと答える先生でした。
「そうした人ではありたいね」
「先生としてはね」
「どうしてもね」
「悪人や無頼漢でいるより」
「そちらの方でありたいよね」
「そう思うよ、僕としては」
本当にと言ってです、そしてでした。
先生は今は皆と一緒に林檎料理をアップルティーと共に楽しみました、そしてそれが終わってからでした。
皆であらためて農園の中を見て回らせてもらおうとするとです、そこに薄茶色のつなぎの作業服を着た長い癖のある黒髪を左右でツインテールにした少し吊り目のはっきりとした顔立ちの二十歳位の女の子が来ました。背は一六八位で胸がかなり目立っています。
その人から前から来たのを見てです、動物の皆は目を瞠って言いました。
「うわ、奇麗な人だね」
「モデルさんみたいね」
「作業服の着こなしもいいし」
「ここで働いている人みたいだけれど」
「ここにはこんな美人さんもいるのね」
「これはまた凄い美人さんだね」
「あの、ドリトル先生ですよね」
その人が先生に言ってきました。
「そうですよね」
「はい」
先生はその人に笑顔で答えました。
「僕がそうです」
「あっ、砕けた口調でいいですから」
女の人から先生に言ってきました。
「そこは」
「いいんですか」
「はい、あたしはこの口調ですけれど」
礼儀作法を守ったそれだというのです。
「それでお願いします」
「何か悪いけれど」
「悪くないですよ、先生達はお客様ですから」
だからだというのです。
「ですから」
「だからなんだ」
「はい、それでこれからのこの農園の案内役はあたしがします」
「貴女がだね」
「お祖父ちゃんに代わって、お祖父ちゃんこれから用事で長野の方に行きますんで」
長野市にというのです。
「あたしがやらせてもらいます」
「では宜しくね」
「はい、こっちこそ」
「そういうことでね、ただ貴女が下坂さんのお孫さんなんだ」
「下坂優花里っていいます」
自分から名乗ってくれました。
「高校を卒業してからこっちで働いています」
「高校を卒業してなんだ」
「はい、高校は農業高校で」
「将来この農園で働くからだね」
「そのことが決まってましたから」
それでというのです、もう案内ははじまっていて優花里さんは先生達を農園の中を先導して歩きながら案内しています。
見事な林檎園に加工品を造る場所、特にシードルの製造工場が目立ちます。働いている人達の表情は明るくて活気に満ちています。
その中を案内しながらです、優花里さんは言うのでした。
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