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ヘルウェルティア魔術学院物語

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第十二話「決闘」

「エルナン・ハルフテルはいるか!」

定期テストの結果が出てから三日が経った頃、Gクラスの教室に一人の男がやってきた。整えられた金の短髪に鋭い目つき。そして体中からにじみ出る圧倒的な覇気。明らかにただの生徒とは言えない姿であった。

「……俺だけど」
「お前がそうか」

俺はこの三日の間に慣れてしまった返事に溜息をつきたくなる。
この三日の間にGクラスには他クラスの生徒が殺到した。全員が「エルナン・ハルフテルは誰だ!?」と声を上げておりその度に俺は答えていた。幸いいちゃもんを付けられることは無かった。既に二重魔術を俺が使ったという事実が出回っており明らかに格上の俺と戦おうとする者は現れなかった。その為俺を見る度に「何でお前みたいのがGクラスにいるんだ!」と声を荒げるだけだったな。一回だけ「どんな卑怯な手を使ったんだ!」と言っている奴もいたが運悪くHRの時間となりディートハルト先生に説教を食らっていたな。
今回もその類かと思い朝から憂鬱な気分になっていた。

「俺はカール・フォン・アルタウスだ。今年の学年主席と言えば分かるか?」
「ええ、存じてますよ。で?その学年主席様がなんの用ですか?」

カール・フォン・アルタウス。定期テストで2位だった奴だ。そして、自ら名乗った通り今年の学年主席であった。噂によると二重魔術を使用できる人物だとか。つまりこいつはこの時点で既に一人前の実力を有していると言う事になる。
……まあ、複合魔術の中で一番簡単な二重魔術を扱えるくらいで一人前と言われている現状だ。魔術師の家系とかならこの位で出来るのだろう。俺の場合は魔術抵抗のせいで使った事は無い。テストの時が初めてだったからな。魔術が使えないなら知識だけでもと調べまくった結果だ。

「まずは定期テスト1位おめでとう。まさかGクラスの生徒に抜かれるとは思わなかった」
「そりゃ、ね。誰だってそうでしょ」

実際入学してから最初の定期テストでGクラスの生徒が活躍した事はないそうだ。これはディートハルト先生に聞いた話だけどどんなに良い生徒でも380が現界だったらしい。

「それで?わざわざそれを言いに来たのか?」
「まさか。確かに今の言葉は本心だが狙いは別にある」

そう言うとアルタウスは俺に向けて指をさしてくる。

「エルナン・ハルフテル!カール・フォン・アルタウスは正式に君に決闘を申し込む!」
「何……っ!?」

まさかの言葉に俺は驚くも同時に成程とも思った。今の今まで文句しか言ってこない奴ばっかりだったからな。いつかこういう奴が来ても可笑しくはないな。

「別に構わないが今やるのか?」
「いや、既に場所は取ってある。学園内にある第一競技場で行う。日時は明日。どうだ?何か言いたい事はあるか?」

成程、断っても無理やりにでも参加させるつもりだったか。これでは相手が用意した土俵で戦うことになる。明らかに俺が不利だ。
俺はルナミスさんの力がなければ大した魔術も使えないが相手は今年の学年主席にして既に二重魔術を使える魔術師だ。このまま戦えば敗北は確定となる。……心苦しいが頼んでみるか。

「……放課後、もう一度来てくれ。その時までにこちらの望みなどを確定させておく」
「分かった。一応言っておくが今回の決闘は俺が君の実力を確認したいがために行われる物だ。こちらがなにか要求する事は無いから安心してほしい」
「それはありがたいね」

アルタウスはそれだけ言うと自身の教室へと戻っていく。そして入れ替わりでディートハルト先生が入って来た。

「ん?なんだ。どうかしたか?」
「い、いえ。何でもないです」
「そ、そうです!何でもないですよ!」

ディートハルト先生は状況が分かっていないようで俺が誤魔化すとクラスメイトがそれに続いてくれた。ディートハルト先生はその様子に眉を潜めつつ教壇に立った。

「んじゃ、早速HRを始めるがその前に……。ハルフテル」
「は、はい!」
「お前に決闘状が届いているぞ。相手はAクラスのカール・フォン・アルタウスだ」

どうやら既にディートハルト先生の許可も貰っていたようだ。これじゃ完全に事後承諾じゃんか。まぁ、ディートハルト先生も「目立った以上決闘なんかが来るだろうが俺のところに来る者は全て通すからな」って言っていたな。
ディートハルト先生は口調はかなり投げやりだが生徒思いなせんせいだということはわかる。そしてその言葉も俺なら出来るという信頼の者なんだろう。とは言え最初の決闘が学年主席になるとは思わなかったけど。

「場所は第一競技場、日程は明日の放課後だ。準備しておけよ」
「はい……」
「安心しろ。後で細かいルールなどを教えてやる。それに相手は学年主席だ。決闘の中で見えてくる物もあるだろう」

確かに、実戦程いい鍛錬はないけど最初にしてはいきなりすぎますよ。何で学年主席なんですか?BやCとかじゃないんですか?それだって素の俺からすれば格上なのに。
俺はそう心の中で呟くが決して口には出さずにそのまま飲み込むのであった。
 
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