とあるの世界で何をするのか
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第一話 いきなりアレイスター前っ!?
「……ぅ、はあぁ~あっ」
「ようやくお目覚めかね?」
朝、起きてみるといきなり声を掛けられた。
「ん……はぁっ!?」
声のしたほうを見てみると、円筒形の水槽に逆さまになって浮いている人(?)が居た。俺が驚いたのはそんな変な人が居たからでも、逆さまになって水中に浮いているからでも、ましてやそんな状態で俺に声が届いているからでもない。その人がアレイスター・クロウリーだからだ。
「さて、君には色々と聞きたいことがあるのだが」
「はぁ……」
どうやら今回は『とある魔術の禁書目録』の世界に飛ばされて来たらしい。もしかしたら『とある科学の超電磁砲』という可能性もあるが、どっちにしても同じ世界であることに変わりはない。
「まずは簡単なところから聞こうか。君はどうやってこの学園都市に入り込んだのかね?」
老若男女……の他に、確か聖人と囚人だっけか? まぁ、何にでも見えるという触れ込みはあながち間違ってないなぁ、と思いながらアレイスターの話を聞く。だが、声はどう聞いても男の声だった。
「どうやってと言われても、自分で意図して飛んできたわけじゃないんで何とも言いようがないんですが、しいて言うなら……神のお導き?」
「ほう」
思わず普通に答えてしまったが、どうやらアレイスターはお気に召さなかったようで、少し怒気を含んだ声が返ってきた。まぁ、寝起きで多少頭が回転していなかった部分もあるが、ここは学園都市だ、『神のお導き』という答えはまずかっただろうか。このままだとさすがにまずそうなので、一応フォローを入れておくことにする。
「自分でも何がどうなってここに来たのかは分からないんですよ」
「その割には、ずいぶん落ち着いているようだが?」
「そうですね。もう何度目か忘れるぐらい経験してるんで……ところで、俺はいきなりこの場所に現れたんですか?」
俺は立ち上がると自分の足元を指差してアレイスターに聞いてみた。
「いや、君が現れたのは第7学区にある公園のベンチだ。監視カメラで発見した後、君がこの学園都市の生徒ではないことが分かったので、部下に命じてこの場所まで運ばせたというわけだよ」
「なるほどね」
意外にもアレイスターは普通に説明してくれた。まぁ、恐らくアンダーラインで見つけたのだろうが、そんなことはとてもじゃないが口に出来るわけがない。
「では、君が何者なのかを聞かせてもらおうか?」
「名前は神代騎龍、歳は……」
そこまで言って俺は止まった。転移を繰り返しているので分かるのだが、転移後の年齢はいつもばらばらなのだ。十代半ばから後半辺りが多いが、たまに二十台中盤ということもあった。自分の声から今までの中でもかなり若い方だと思うが、俺は慌てて自分の姿が確認できる鏡のようなものがないかを探した。
「ふっ、そんなことを聞いているのではない。君はこの世界とは違う場所から来たのだろう」
鏡を探していた俺の視線がアレイスターに向く。どうやらそのぐらいのことはお見通しのようだ。
「君がただの学園都市外部からの侵入者なら、こんな場所へ連れて来たりはしないさ」
「はぁ……まぁ、それなら無理に隠しておく必要もないか……」
とは言っても、一から全てを説明すると何時間あっても足りないし、アレイスター相手に全部手の内を晒すわけにもいかないので、色々な世界を転移して回ってることと、転移のタイミングは俺が寝てる時だけということ、転移時に年齢が戻されるが戻される年齢は一定ではないということ、転移した世界で何かを成し遂げたあとしばらくするとまた別の世界に転移させられることなどを話した。
「それでは、君はこの世界で何かを成し遂げればまた別の世界へ行くということか」
「多分そうなると思います」
一度だけ何を成し遂げたのか分からないままに飛ばされたことはあったが、それ以外はだいたい俺の周囲で起きた事件が一件落着して落ち着いた頃に飛ばされている。
「具体的に何をすればいいのか、というのは分からないのかね?」
「ええ、そこまでは」
それが分かるならどの世界に飛ばされても苦労はしない。
「それで、君がこの学園都市に飛ばされて来たということは、成すべきことが学園都市にあると見てもいいのかね?」
「それも分かりません。ただ、今までの経験では、飛ばされた地点の近くか最初に出会った人に関係する事件を解決した時に、次の世界へ飛ばされたってことが多かったですね」
というよりは俺が転移した世界で即厄介ごとに巻き込まれるというのが今までのパターンだ。今回もまず間違いなくアレイスターがらみ……というか『とある魔術の禁書目録』の世界でアレイスターがからまないことはないか。
「ほぉ、それでは君にはこの学園都市で生活してもらうことにしよう」
確証は持てないが、微妙にアレイスターが嬉しそうに見えるのは、気のせいではないと思う。恐らく俺というイレギュラーが入ることを楽しんでいるのだろう。
「それは願ったり叶ったりなんですが、俺は何をしたらいいんです?」
いきなり暗部行きとは言われないだろうが、俺の処遇によってかかわる人間が違ってくるのだ。特に上条さんにかかわると魔術師側にもかかわりを持つことになる。
「普通に学生生活を送ってもらうさ。当然、戸籍なども作っておくし生活費も心配する必要はない。ただ、能力開発だけは受けてもらうよ」
「能力開発……」
俺の原作知識が間違ってなければ、能力開発を受けた生徒が魔術を使用すると血管が破裂してしまうとかで、大きな魔術を使うと死に至る可能性もあったはずだ。俺はこの世界の魔術は知らないが、今まで行った世界で魔法を覚えて魔術の行使も出来るようになっている。もしかしたら他の世界で覚えた魔法が全て使えなくなる可能性もある。さすがにそれは厳しいものがあると、思わずつぶやいてしまった。
「ああそうだ。この学園都市では学生たちに能力開発を行い、超能力を発現させているのだよ」
どうやらアレイスターは俺のつぶやきが能力開発を知らないという意味だと思って説明してくれたようだ。
「へぇー、ならその能力開発をすれば俺も超能力が使えるようになる……と?」
もし魔法が使えなくなって能力もたいして発現しなければ土御門みたいになってしまうな、なんて考えながら少しは超能力に興味があるような反応を返してみる。
「そういうことだ」
「それなら能力開発を受ければ、俺は普通に学生生活を送っていいんですか?」
さすがに俺にはこの場で能力開発を断る口実が見つけられなかった。しかし、確かこの世界の魔術は才能がない者しか使えないから才能のある者、つまり能力者が魔術を使うと反動がある、みたいな設定だったはずだ。となると、他の世界で覚えた魔法はその設定に当てはまらないはずだ。
「ああ、構わない。君の発現する能力によってはさまざまな機関から研究の依頼もあるだろう。もし無能力者と認定されても、最低限の生活ができるだけの奨学金は支給されるから心配はいらないさ」
「はぁ……ありがとうございます」
研究に関しては、高位能力者ならだいたい参加してるという話だったはずだからいいだろう。それに、無能力者となっても、上条さんは暴食シスターを養うことができていたし、それに超電磁砲の佐天さんも普通に生活していたし、多分大丈夫だろう。
「それでは、君をこれからの生活の場へと送り届けよう。戸籍に関してはすぐに創っておく。年齢に関しては、キリのいいところで今年から中学に通う12歳ということにしておこう」
「12歳……」
思わずつぶやく。自分の声の感じや視点の低さなどから若い方だとは思っていたが、俺の思っていた以上に低めの年齢をいわれて少し落ち込んだ。だが今年から中学に通うということは、まだ4月にはなってないということ。原作開始前だとすれば、初春さんや佐天さんたちと同学年ということになる。
「ふっ、今の見た目ではその程度にしか見えないぞ」
俺のつぶやきをどういう風に捕らえたのか、アレイスターがそんなことを言ってきた。
「それでは、能力開発と学校などの手続きに関しては追って連絡する」
アレイスターがそう言い終った瞬間、俺の横に何者かが現れた。
「うゎをぅっ!?」
いきなりのことで驚いてしまったが、その人物は結標淡希だった。肩にかけているだけのブレザー、横から見ているので胸に巻いているサラシまでは確認できないが、下はやたらと短いスカート。エロいといえばエロい格好なのだろうが、実際に間近で見ると……引くな。なんてことを考えてる間に俺は窓のないビルの外に転移させられていた。
「ん」
外に出たとは言っても、裏路地みたいな場所。結標さんが言葉……というか声を出すと同時に指差した方向を見ると、路地の出口の先に車が止まっているのが見えた。どうやらあの車に乗れということらしい。
「あ……ありがと」
「ふんっ」
俺がお礼を言うとあまり他人とかかわりを持ちたくないのか、それともいわゆるツンデレなのか、結標さんはそっぽを向いてしまった。
車の近くまで歩いていくと、金髪・サングラス・アロハシャツの上に学ランの男が待っていた。
(おぉっ、土御門さんだ)
危うく声に出しそうになったが何とか抑える。
「君が神代君かにゃー? 寮に送り届けるよう頼まれたぜよ」
「はい、そうです。よろしくお願いします」
いきなり原作の主要キャラに会って顔がにやけそうになるが、必死に抑えながら挨拶をした。
車の運転は土御門さんではなく別の人だった。土御門さんの見た目は原作開始時に近い感じで、恐らく高校生……あ、原作開始前ならまだ中学卒業寸前ぐらいか。まぁ、車の運転が出来るわけない。しかし、会話もしないのに助手席の土御門さんが真後ろの席の俺に意識を集中させているのが丸分かりで、車の中は何とも居心地が悪かった。
「ここの201号室がお前さんの家で、これが鍵だにゃー。生活に必要なものは一通り揃えておいたから今日はゆっくり休むといいぜい」
「ありがとうございます」
車の中とは全然雰囲気が違う土御門さんから部屋の鍵を受け取る。
「じゃー、明日か……遅くとも明後日には身分証明書なんかの準備が出来るはずだから、その時に持ってくるぜよ」
「はい、分かりました」
土御門さんを見送ってから俺は自分の部屋へ向かった。寮は3階建てでその2階の一番端が俺の部屋だ。階段は2号室と3号室の間、そして6号室と7号室の間の2箇所にある。1号室から8号室まで廊下は繋がっているので、2箇所ある階段のどちらを使っても自分の部屋に行くことができる。近いほうの階段を使って自分の部屋の前に来ると、土御門さんから受け取った鍵を使ってドアを開ける。入ってみると中は普通に今までずっと住んでいてちょうど掃除が終わった状態です、といわんばかりの状況だった。ベッドには布団もあり、テレビも普通に見ることができ、冷蔵庫を開けると全て未開封の牛乳やジュース、ちょっとした食料なども入っていた。テレビで今日の日付を確認して、冷蔵庫の食品の賞味期限を見てみたが、牛乳でもあと5日ほど先の日付だった。
取り敢えず、俺は冷蔵庫の食品で簡単な食事を作り、食べることにしたのだった。
「ふむ、神代騎龍、神に代わる……か。さて、このイレギュラーが成し遂げなければならないことは、私のプランの進行にプラスとなるのかマイナスとなるのか……非常に楽しみだよ」
後書き
取り敢えず一話目は修正なしでも良さそうだったのでそのまま投稿してみました。
二話目以降は少し修正をしての投稿になりますので、多少時間が掛かると思います。
とか言いつつ、修正しました^^;
2012/09/29 最初に出てくる主人公の名前にルビを振りました。
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