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★=職場体験編= ネームセレクト
前書き
ヒロアカ二次創作作者、読者あるある
・作者が原案で主人公を完全無個性でやろうとしていたことを知らずにデクが個性を得るストーリー展開そのものに無理解な苦言を呈す。
・オリジナル主人公をクラスに捻じ込むためになんとなく要らなそうな青山を消す。
・相澤先生含む先生たちの頭を悪くすることでオリジナル主人公の無敵さを演出する。
・爆豪はコケにしたいのでガチクズの単細胞にする。
・個性も身体能力という設定は無双の邪魔なので見なかったことにする。
・途中で飽きて書くのを投げる。
職場体験に伴うヒーローネーム決定とかいう眠いイベントがやってきた。
いや、申し訳ないが眠い。退屈なのではなく個性練習で超眠いのだ。『過剰摂取』も未来視と同じで眠くなる反動があるみたいだ。おかげで最近ブラックコーヒーばかり飲んでいる気がする。
まぁ、ヒーローネームは三名を除いてざっくり知っている。
なので気になる三人だけダイジェストでお送りしよう。
一番、削岩磨輪里。
「掘削悪滅回転ヒーロー、岩断粉砕究極螺旋滅土竜ッ!!」
「ちょっとまとまりがないわね」
そういうセンスの持ち主だったな、そういえば。
爆豪とも青山とも違うタイプの問題児である。
しかし最後土竜と書いてまさかモグリューと読むとは思わなかった。著作権的に大丈夫か。
「スポンサーにニン〇ンドーがついてくれればなくはないけど、現実的とは言えないわね」
「むぅ。考え直します……あー、ミスター回原と被んないからイイと思ったのにぃ……」
彼女の言うミスター回原とはヒーロー課B組の回原旋のことだろう。切島・鉄哲コンビと同じ個性ダダ被り勢である。最終的に「暫定で……」と不満げに提出された「イモータル」が採用された。
「永久とか不朽のイモータルとモーターで、なんか私の回転は止まらないぜ的なアレです。ハイ」
(((テンション低い……)))
相当漢字を使いたかったらしい。
ちなみにそのあと『烈怒頼雄斗』が出たことで息を吹き返した削岩は「威猛多瑠」に書き換えていたけど。
二番、付母神つくも。
『なんていうか、危ないことが起きたときに一番最初に体を張れるヒーローでありたいなってことと、空を飛べて射撃武器いっぱいあるから……と、『トップガン』で行きたいと思いますっ!!』
「ヒーロー名にトップの名を冠するとは思い切ったわね!」
結構意外ではあったが、体育祭以降かなりやる気を出している今の彼女ならトップをねらえ的に頑張れそうだ。ヒーロー名ガンバスターでも違和感ない武装だし。ただ、襲撃事件以降若干俺を避けてる気がするのはちょっぴり気になるので今度問い質してみよう。
三番目、研爪来人。
「断罪ヒーロー、パニッシュバイト」
「爪なのに牙なのか」
「牙のが格好いいだろ?」
若干のどや顔。当人は割と気に入ってるらしい。しかし断罪ヒーローって若干の陰を感じなくもない。路地裏で取り締まりして指とか折りそうだもん。
「それでいいんだ。悪いことしたらパニッシュバイトが捕まえに来る、みたいな感じで広まれば犯罪意識の抑制になるかもしれないし」
……体育祭の時の事件、まだ俺の耳には事情は入っていないが、ラインでそのうち話したい、許可は出てると伝えられたので今は待ちの時間だ。こいつ謎なんだよなー。原作いない勢というだけで謎多いけど。
で、最後に俺こと水落石拓矢。
「十手ヒーロー、ゴヨウマル!」
「御用だ御用だ、ってやつね! でもその名前だと時代劇の和の雰囲気を連想させるんじゃないかしら。実際の姿と名前のミスマッチは知名度認知の足枷になるわよ?
「成程……ちょっと考え直します」
割と真っ当な指摘を受けてしまった。
ヒーローとは俺が目指すべき未来像。
……デクくん助ける以外なんも考えてねぇ!!
俺の心は空っぽ(エンプティ)だ!
「未来見えない系ヒーロー、エンプティ」
「ネガティブな意味なのは印象が悪いわよ。ヒーローは希望を与える存在でなくっちゃ!」
「成程……もっかい考え直します」
俺はどうしたいのか……俺は別に世界中が平和になれとか目に付く人間余すことなく幸せにしたいとか考える程精神が超越していない。なので、誰かの希望になる程度でいいのではないだろうか。
「という訳で、目の前の人に頼られることから始めます。ユアホープで!」
「ふーん……それも十分青臭いと思うけど……そういうのは好きなのでOK!!」
「あざっす、ネムちゃん先生」
「ミッドナイトとお呼びッ!!」
――こうして、俺はユアホープというパッとしない名前のヒーローとして職場体験学習に参加することとなる。
このユアホープという曖昧な名前が、俺の想像以上にたくさんの人の希望になることを、この時の俺はまだ知る由もなかったのである。
= =
「が、かはっ……」
短い悲鳴と共に、大地に転がる躯が鮮血をびちゃりと散らす。
それを見下ろす男は、静かに左手に持った剣に付着した血を左手で拭い、血払いと共に納刀する。くだらないものを見る目でその躯を見つめた男は、不意に足元にいる犬のような生物の腹を軽く蹴る。
「食うて良いぞ」
その生物――ぎょろりとした眼球に剥き出しの脳を持つ生物は、ばっと顔を上げて口を開き、布のような器官を広げて死体と広がる血痕に被せる。ぐちゅ、じゅる、ずるる、と不快な水音を立てて布のような器官がゆっくり格納され、やがてそれがあった場所には生物の唾液以外何も残っていなかった。
つまらぬ世の中になった、と男は鼻を鳴らす。
嘗て、ある男に幾つかの個性を与えられ、男は人斬りになった。
刀が格好いいとか、剣道の腕を人斬りに使わないのでは意味がない、とか。
最初はそんなことを思って人斬りの道を究めた。
しかし、ヒーローという存在が法制化され大衆に媚び、個性が拡大していく中で、剣の道は自然と廃れていった。それに伴い、嘗て最も焦がれた真剣同士の斬り合い――真剣勝負の場も減っていった。
今やヒーローで剣をまともに扱える者はおらず、真剣を振り回し人を斬りたい者は総じて裏の存在。それも、殆どが武器を掲げて思い上がっただけの素人だ。今回斬った男もヴィランとしてそこそこの実力がある剣士だという話だったが、拍子抜けにも一太刀で血の海に沈んだ。
男は別段自分を善とも悪とも定めてはいないが、世間ではどうやら偽善に分類されているらしい。くだらない、と思う。別に斬る相手などどうでもよい。そこに死合いの緊張感が欲しいだけだ。
男は自分の手を見る。
ここ最近、皮膚の老化が早まってきた。
嘗てあの男に与えられた幾つかの個性によって身体能力は全盛を保ってきたが、代償に支払ってきた寿命の残量がそろそろ限界を迎えようとしているのだ。死ぬ間際まで全盛の身体でいられれば、別段これ以上長く生きようとも思わない。人斬りを楽しめる時代は過ぎ去り、もう戻れないのだ。ならば仕舞いにするのも悪くない。
最後に死合う相手はどうするか。
剣士ではないが最強と名高いヒーローのオールマイトか……或いはこのご時世に人斬りを行っているというステインというヴィランに賭けてみるか。
と――。
「客人か。名乗るがよい」
「お初にお目にかかります。黒霧と申します。突然の来訪をお許しください」
振り返らずとも気配で理解する。
空間移動タイプの個性だろう。そこには靄が服を着たような男がいた。
「嘗てオール・フォー・ワンの護衛として剣を振るった男、ヴィラン名『ソードブレイカー』……『彼』の紹介にて参りました。貴方にある男を斬って頂きたく……」
「ほう……間接的とはいえあの先生からの仕事とは何十年ぶりか……」
自分にとって最も都合のいい雇い主にして悪の権化、オール・フォー・ワン。オールマイトに敗れて以降姿を消したと聞いていたが、その時にはソードブレイカーはとうに彼の統率を離れていた。申し出た訳ではなく、面白い仕事を回す機会がないからと互いの同意の上での決別だった。実に清々しい別れだったし、また働いてほしいというなら断る気はない。
「しかし、黒霧と申したか……わしもどうせやるなら楽しい仕事にしたいし、老い先も短いでな。つまらぬ仕事であったならお断りじゃぞ」
「お気に召されるかどうかは分かりませんが……この男を斬って欲しいのです」
「ふむ? 子供……ふぅむ……」
差し出されたターゲットのプロフィールと写真を見て、暫くソードブレイカーは唸った。子供という時点で余り気が進まない仕事だったが、いくつか気になる点があり、捨て置くのもつまらないと思ったからだ。
「剣道経験者でありながら、個性の影響で公式試合出場を認められず……真志真流の最後の継承者がヒーローの卵とは皮肉なものよ。……顔くらいは見てやろう。斬る価値なくばわしは去る。それでよいか」
「十分です。それでは――」
「いや、敵連合にはゆかぬよ。言った通りわしは生い先が短い。先のない老人を抱えていては次の時代に進み辛かろう。足取りと日程が掴めたらドクターを通して知らせよ。我が愛犬、土食はドクターに貰った脳無の兄弟。通信機能もある」
書類を見終えたソードブレイカーはそれを土食の前に落とし、「食うて良いぞ」と呟いた。
土食が貪ることで破れしわくちゃになった紙の隙間から――『水落石拓矢』の文字と、
青色の髪の少年の顔が垣間見えた。
後書き
ちまちま。
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