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黒檀の馬

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第一章

               黒檀の馬
 この時イスラムの天使であるマラーイカ達は天界において神に命じられた仕事の合間に機械で色々なものを造って遊んでいた。
 その中でだ、マラーイカの一人が仲間達にこんなことを言った。
「馬を造ってみないか」
「機械でか」
「馬を造るのか」
「そうしてみようというのか」
「そうだ、それもとびきりの馬を」
 まさにというのだ。
「造ってみないか」
「一体どういった馬なのだ?」
 同僚の一人がそのマラーイカに尋ねた。
「機械といっても色々だが」
「今言ったな、とびきりの馬だよ」
 そのマラーイカは自身の青い羽根を羽ばたかせて笑って同僚に答えた。
「我々や人が乗ればあっという間に世界のどの国にも行ける」
「どの国にもか」
「そう、そして空も飛び地面に降り立つことも出来る」
「そうした馬をか」
「造ってみよう、今から」
 青い羽根のマラーイカはこう彼等に言ってだった。
 早速未来の者が見れば模型を造る様にだった。
 黒檀で身体を造りそしてその中を全て機械仕掛けにしてだった。
 右肩と左肩にそれぞれ一つずつ雄鶏の鶏冠の様なものも付けた、マラーイカはその馬を完成させてから同僚達に笑って話した。
「この馬は凄いぞ」
「黒檀の馬か」
「これはまた凄いな」
「大きさも姿も立派だが」
「黒檀を使うとはな」
 高価なこの木をというのだ。
「実に素晴らしい」
「これを使ってか」
「我々はあらゆる国に行くか」
「空も飛べるか」
「うむ、しかし造ってみて気付いた」
 青い羽根のマラーイカは腕を組み神妙な顔になってこうも言った。
「我々はもう空を飛べる、それに地上のあらゆる国にだ」
「瞬く間に行けるな」
「そうだな」
「言われてみれば」
「我々の力なら」
「いいものを造ったと思うが」
 自分達が乗っても意味はない、青い羽根のマラーイカはこのことを思った、それで大天使の一人であるミーカールに相談してみた、するとこの生真面目なマラーイカは彼等に答えた。
「なら人に渡せばいい」
「人ですか」
「人にですか」
「そうだ、人は我々の様な力はない」
 空を飛んだりあらゆる国に瞬時に行く様な力はというのだ。
「それならな」
「人に渡してですか」
「使ってもらえばいい」
「そうすればいいですか」
「それがいいだろう」
 こう青い羽根のマラーイカと彼の同僚達に言った、それで青い羽根のマラーイカ達は人に黒檀の馬を渡すことにしたが。 
 誰に渡せばいいかという話になってだ、青い羽根のマラーイカは同僚達に言った。
「シンドバットに渡すか」
「あの商人にか」
「何度も冒険をしているあの男にか」
「黒檀の馬を渡すか」
「そうするか」
「あの者なら相応しいと思わないか」
 黒檀の馬、非常に優れた彼等が造った馬をというのだ。
「だからな」
「ここはか」
「彼に馬を渡すか」
「そうするか」
「そうしよう」
 こう言ってだ、実際にだった。
 彼等はシンドバットのところに馬を持って行って出て来てだ、彼にその馬を差し出して事情を話した。そうしてだった。
 青い羽根のマラーイカは中背だが引き締まったよく日に焼けた身体に若々しく気さくな感じの太い眉を持つ青年に対してこう言った。 
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