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巨大な化け猫

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第四章

「そう呼ばせていてな」
「銀河さんはそこからですか」
「店の名前取ったらしいな」
「ちょっとないセンスですね」
「そうだな、店は渋谷にあるからな」 
 そこにあるというのだ。
「銀河さんのマンションの近くだよ」
「ああ、近いんですか」
「おかまバーは新宿にあるけれどな」
「歌舞伎町ですね」
「何なら行ってみろ」
「わかりました」
 大西は社長の言葉に頷いてインターネットで店のことをチェックした、幸い店のホームページやけに可愛らしいそれもあったのでそこで細かいところもチェックして。
 そのうえで店に行くとそこでだった。
 その主人、銀河崇もいた。外見もファッションも相変わらずだったが大西はとりあえずそれは今回もスルーした。
 そのうえで件の巨大猫も見ながら主人に問うた。
「前にご自宅で工事した時ですが」
「ええ、社長さんからお話を聞いてよね」
「このお店に猫がいるって聞きまして」
「今日はあたしこのお店にいてね」
「それで、ですか」
「奇遇にもお会いしたわね、いいご縁ね」
 その太く強いバスの声で言うのだった、にこりと笑って。
「あたくし嬉しいわ」
「そうですか、それでなんですが」
「パイプちゃんのことね」
「はい、この猫三十五年生きてますよね」
「そうよ、あたくしが生まれたと同時にお家に来たの」
「そうですか」
「お母様がイギリスから買ってきてくれたの」 
 そうだったというのだ。
「そうだったのよ」
「イギリスの猫ですか」
「そうよ、お母様は日本人だけれどイギリスにご縁があって」
「それで、ですか」
「イギリスから買い寄せてもらったの。血統書もちゃんとあるわよ」
 主人は大西に上機嫌で話していった。
「もっとも血統書がなくてもね」
「それでもですか」
「パイプちゃんは素敵な子だけれどね」
「それは何よりですね、ただ」
 大西はここで主人に猫のことを尋ねた、見れば今は猫は欠伸をしているがその口がまたやけに大きかった。
「この猫の種類は」
「スコディッシュフォールドよ」
「その種類ですか」
「ええ、だから全体的に丸いのよ」
「そうなんですね」
「この種類の猫は全体的に丸いからね」
 だからだというのだ。
「垂れ耳じゃないけれどね」
「スコティッシュフォールドは垂れ耳が特徴ですが」
「そうじゃない子も多くてね」
 それでというのだ。
「この子もなのよ」
「そうですか、ただ」
「ただ?」
「三十五年生きてるんですよね」
 大西はここで本題に入った、彼が主人に対して最も聞きたかった話題について。
「そうですよね」
「ええ、お話させてもらった通りよ」
 主人も淀みなく答える。
「今ね」
「そうですよね、三十五年とか」
「言いたいことはわかってるわよ」 
 主人は大西にその顔をにこりとさせて答えた。
「この子が化け猫かっていうのね」
「それは」
「三十五年生きるとかね」
「猫にしては、それに」
 自分の傍で丸くなっているその猫を見た、見れば猫カフェの他の猫達はめいめい勝手に動いているがその猫を軸に一緒に丸くなっている猫達もいる。 
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