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どちらかにしなさい

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第二章

「だからよ」
「それでなんだ」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「あんたはどっちも食べられるから」
「本当だよね」
「お母さんは嘘は言わないわ」 
 息子に対して教育上嘘を吐かない子にしようと思ってそうする様に務めているのだ、少なくともまだ小学校に入ったばかりの息子に対してはそうしようと。
「だから安心しなさい」
「どっちかをだね」
「選びなさい」
 あくまで両方は駄目だというのだ。
「いいわね」
「それじゃあ」
「どっちにするの?」
「どっちにしようかな」 
 母に両方食べられることを約束されてだ、幸平は安心した。母が正直であることを信じているからだ。これは沙織の教育の成功だった。
 その安心から幸平は選ぼうとした、だがやはり迷う。それを見て母は息子が決められないと見てアドバイスをした。
「くじ引きをすればいいのよ」
「くじ引き?」
「お母さんこれから二本のくじを出すから」
 傍にあったティッシュを二枚出して一枚ずつ縄の様に細長く丸めてそれをくじにした。それで一本の先の方を丸めて。
 それで二本を何度もシャッフルして両方共、丸めた方もそうではない方もその先を手の中に入れて握った。そうしてから幸平に言った。
「丸い方がプリン、そうでない方はコーヒーゼリーよ」
「引いた方を食べるんだ」
「そうしなさい、それでいいわね」
「わかったよ、お母さん」
 幸平は母の言葉に頷いた、そしてだった。
 すぐに引いてみた、そして丸い方を引いてプリンを食べた。この時に母ににこりと笑ってこう言われた。
「明日はコーヒーゼリーよ」
「うん、明日も大好きなものを食べられるね」
「そうよ、明日も楽しみにしておきなさい」
 沙織は我が子に笑顔で話した、そうしてプリンを美味そうに食べる我が子を見てさらに笑顔になったのだった。


どちらかにしなさい   完


                2019・12・25 
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