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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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戦姫絶唱してないシンフォギアG~装者達の日常~
  装者達のクリスマス・イブ

 
前書き
間に合ったー!皆さんメリクリー!

今回は、ハロウィンでスポットが当たらなかったカップルをメインに描いてみました。
F.I.S.組も本編に先駆けて登場しますので、お楽しみに。

今年はこれが最後の投稿かな?
いや、残り何日かの間に書けるかもだけど!

それではどうぞ、クリスマス糖文を味わってください! 

 
「翔くん、これでいい?」
「おっ!響、大分上手くなったな!」
「えっへへ~、ざっとこんなもんですよ~!」

12月23日。明日は待ちに待ったクリスマス・イブ。
年に一度の、大切な人と一緒に過ごす聖なる夜だ。
明日のクリスマスパーティーに向けて、二課の面々はそれぞれ班ごとに準備を進めていた。

翔と響は料理担当。二人でローストチキンやポテトサラダなど、パーティー料理の仕込みをしていた。ちゃんと調理するのは明日だが、これも大事な仕事である。

「あとは冷蔵庫に入れて、明日まで寝かせておこう」
「楽しみだな~、もう待ちきれないよ~!」

響は胸を躍らせる。ウキウキとしている彼女の様子を見て、翔はクスッと微笑んだ。

「そう言うと思って、ほら」
「おおっ!?」

翔が取り出したのは、一口サイズのローストビーフだった。

「味見用に、一切れだけね。はい、あーん」
「あ~………ん、美味しい!」

牛肉の分厚い食感と共に、口の中に広がる肉汁。
ソースはかけられていないものの、塩、コショウによるシンプルな味付けは、素材そのものの味を引き立たせる。

響の顔に、花咲くような笑顔が一瞬で広がった。

「翔くんと響ちゃん、新婚さんみたいだね~」
「へっ……!?」
「たっ、丹波さん!?」

その言葉に、二人は揃って真っ赤になってしまう。
慌てて振り返ると、そこにはオペレーターの一人である見守り隊職員、丹波芽依が自販機で購入したお茶の缶を片手にカメラを構えていた。

「おっ!良い画いただきましたッ!それじゃ、邪魔しちゃ悪いので私はこの辺りで失礼します!お二人さん、末永く~!」

その様子を素早くカメラに収めると、丹波はスタコラと食堂から去っていった。

「新婚……かぁ……////」
「わたしと、翔くんが……はうう……////」

後に残された二人は、彼からの言葉に互いを意識しあってしまい、暫く固まってしまっていたとか。



「藤尭くん、それ取ってもらえる?」
「OK~」

藤尭、友里の二人は、食堂の壁を飾り付けている。
パーティー用の横断幕は既に貼り終え、あとはツリーを装飾するだけなのだ。

当然、艦内は揺れるため、ツリーは床に固定している状態だ。
装飾もしっかりと枝に引っ掛け、簡単には落ちないようにしなくてはならない。

「今年は例年より賑やかになりそうね」
「装者の数も増えたからね。それにあの子達、カップル揃いだし」

藤尭の言葉に、友里はクスッと笑った。

「なに?ひょっとして、羨ましいの?」
「べ、別にそんなんじゃないし……」
「はいはい。素直じゃない男はモテないわよ~」

友里さんこそ彼氏いないくせに、と言いたくなるが、藤尭はその言葉を呑み込む。
彼女がそれを気にしている事を知っているからだ。

なので、溜息を一つ吐いて作業に戻る。

クリスマスを共に過ごす恋人は居ないが、同僚達と過ごすのは楽しい。
だから寂しくはない、と自分に言い聞かせて。

「……ところで藤尭くん、明日、パーティーの後は暇でしょ?」
「え?」

不意に友里から投げかけられた言葉に、藤尭は明日の予定を思い浮かべる。

「うーん……まあ、特に何も予定はないけど」
「じゃあ、ちょっと買い物付き合ってよ。荷物持ってくれると助かるんだけど」
「えぇ……。まあ、いいけどさ。どうせ暇だし」

面倒だとは思ったものの、断る理由も特になし。
藤尭は友里の誘いを受ける。その言葉の裏に隠された真意も知らずに……。

「藤尭さん……鈍いわね」
「おっ?遂にあの二人、付き合っちゃう?」

食堂で休憩していた二人の黒服職員……小森蓮と尾灯春菊は紙コップ入りの珈琲を片手に、そんな二人を見守るのであった。



「あら、珍しいわね?」

データ整理をしていた了子が手を休めると、デスクに湯気を立てるマグカップが置かれた。
振り返ると、そこに立っていたのは弦十郎だ。

「たまにはいいだろう?友里くん程ではないが……」
「そうね。じゃあ、いただくわ♪」

了子はマグカップを手に取り、一口含む。

「ん……?ホットココア?」
「ああ。差し入れにするなら甘い物がいいと思ってな……」

そう言って弦十郎は、後頭部を掻いた。

「恥ずかしい事に、俺は了子くんが甘党なのは知っているが、どの程度の甘さを好むのかを知らない。だから珈琲よりも、元から甘いココアの方が適切だと思ってな……」

了子は座ったまま、弦十郎の方へと身体を向ける。

「いつの間にかそ~んな気遣いが出来るようになったなんて、私、聞いてないわよ?」
「了子くんは、俺達の為に日夜頑張ってくれている。このくらいはさせてくれ」
「ふ~ん……」

了子はクスッと笑いながら、ココアをもう一口啜る。

「まあ、ギリギリ及第点って所かしらね~」
「そうか……これは手厳しい。俺もまだまだだな」

肩を竦めて笑いながら、弦十郎は息を吐く。
そしてまっすぐに了子を見つめると、少し緊張気味に切り出した。

「ところで了子くん……明日のパーティー、時間まで予定は空いていたりするのか?」
「明日の予定?なぁに、藪から棒に」
「その……なんだ。もし、よければ俺と……」

弦十郎の言葉が、一瞬詰まる。

その場にいた職員達は一斉に口を閉じると、息を呑みながらも静かに、その様子を見守った。

了子も何も言わず、ただ静かにその続きを待っている。

やがて、弦十郎は意を決したように口を開いた。

「俺と二人で、街を出歩いてみないか?」



一瞬盛り上がりかける職員達であったが、昂る気持ちを抑え、了子の答えを待つ。

対する了子の答えは……。



「いいわよ?でも、具体的なプランは決まってるの?」

「それは……これから考える」
「だと思った……」
「すまない……」
「なら、私の買い物に付き合ってくれる?そろそろ新しいコートが欲しいのよ~」
「なら、俺が払おう。好きに選ぶといい」
「じゃあ、遠慮なく♪」

一瞬だけ不安が生じたが、最終的にはトントン拍子でデートの予定が固まっていった。
職員達は今度こそ無言のガッツポーズを決め、少しずつだが距離を詰め始めた上司二人を祝福するのだった。



そして12月24日、クリスマスパーティー当日。

『メリークリスマス!!』

特異災害対策機動部二課の仮設基地にて、クリスマスパーティーが開催された。

「翔くーん!はいっ、プレゼント!」
「ありがとう、響。はい、俺からもプレゼントだ。いつもありがとう」
「おおっ!!ありがとう!翔くん大好きっ!」
「んんッ!?///」

早速プレゼントを交換し、公衆の面前でイチャイチャし始める翔と響。

「緒川さんッ!今年もお世話になりっぱなしで……これくらいしか返せませんが、受け取ってください!」
「ありがとうございます。翼さんからのプレゼント、大事にしますね。……では、僕からも」
「なっ!?あっ……ありがとう、ございます……」

新しいネクタイピンと髪留めを贈り合い、それぞれその場で身につける翼と緒川。

「クリスちゃん、はい、あーん」
「ん?あ、あーん……///」
「美味しい?」
「ん……悪かねぇな……」

純からの不意打ちに顔を真っ赤にするも、満更でもなさそうなクリス。

「弦十郎くん、私達もしない?」
「む?……りょ、了子くん……ほら、その……あ、あ~……」
「あ~ん……ん~♪」
「美味いか?」
「モチのロンよ~。ほらっ、弦十郎くんも。あ~ん」
「むぅ……。……あー……」

純とクリスに触発され、ここぞとばかりに弦十郎の初心な様子を楽しむ了子。

「藤尭くん、おつかれ。はい、温かいものどうぞ」
「温かいものどうも。……は~、やっぱり友里さんの珈琲は身に染みるなぁ……」
「ジジ臭いわよ~」
「ひっどいなぁ!?俺まだ30超えてないよ!?」

前日に仕込みが終わっていた料理を火にかけ、テーブルに並べ終えた功労者である藤尭を労う友里。

「未来さん、いいの?僕達まで呼んでもらって……」
「うん。弦十郎さんに許可は貰ってるから」
「うおおおおお!奏さんと一緒にクリスマスを過ごせるなんて!?マジか?マジだな!?マジなんだよな!?夢じゃねぇんだなぁぁぁ!?」
「紅介、はしゃぎ過ぎだ。あんまり騒ぐようなら、その口をマスクで塞ぐぞ!?すみません奏さん、紅介はこういうやつでして……」
「まあまあ、いいじゃないか。今夜は無礼講なんだしさ。それに、ファンに直接祝ってもらえるクリスマスってのも、悪い気はしない……ぞ?」
「ありがとうございます奏さぁぁぁん!!一生着いてきます!!」
「紅介……」
「あはは……」
「このローストビーフ、美味しい……」

未来に呼ばれてやって来た恭一郎や、奏と同じ空間でクリスマスを過ごせる事に興奮して燃え上がっている紅介。

そんな紅介に呆れる飛鳥と、一人黙々と料理に舌鼓を打つ流星。

職員達はそれぞれを見守り、微笑みながら、聖夜の男女を祝福し、自らも友人達との宴を楽しむのであった。

「あの……弦十郎さん。マリアさん達は元気にしてますか……?」
「マリアくん達か?……そうか、君は確か彼女のファンだったな」

流星の言葉に、弦十郎は彼の目を真っ直ぐに見て答えた。

「大丈夫だ。今頃、彼女達もクリスマスを祝っている頃だろうさ」



「デデデデースッ!このお肉、めちゃんこデリシャスなのデース!」
「このポテトサラダの味付けも中々……」

監房の中にて、F.I.S.の四人はクリスマス料理を堪能していた。
二課からのクリスマスプレゼントとして贈られた料理の味に、切歌と調は早速唸っていた。

「まさか、監獄の中でクリスマスを祝えるなんてね……」
「二課には感謝しないとな……。あれだけの事をやらかした俺達に、ここまでよくしてくれるなんて……」

囚われの身ではあるが、マリアやツェルトに二課を疑う気持ちはない。

先のフロンティア事変の中で、二課のシンフォギア装者達や緒川、弦十郎を通して彼らの人となりを知っているからだ。

第一、わざわざクリスマス・イブの夜に装者と職員が手ずから作った料理を届けさせるような組織が、損得を動機にする筈がない。

妹分達に倣って、マリアとツェルトも料理に手を付け始めた。

「ん~♪美味しいじゃない!」
「ッ!美味い……!安物の細切り肉とはレベルが違うな……」

貧乏な食生活を強いられていたあの頃を思い出し、二人は涙を流しつつ箸を進める。

「……ん?これは──」

ふと、ツェルトが皿の脇にナプキンと共に添えられていた封筒に気が付く。

宛名は『F.I.S.のみんなへ』、差出人の名前は……。

「ッ!マリィ!調、切歌!セレナからだ!」
「へっ!?セレナッ!?」
「本当に!?」
「何デスと!?」

ツェルトは封筒を開けると、中に入っていた手紙を開く。

手紙はクリスマスカードになっており、そこにはセレナからのメッセージが書かれていた。

『マリア姉さん、みんな、メリークリスマス!わたしは今、特異災害対策機動部二課の医療施設でリハビリを受けています。聞いてください!この前、ようやく松葉杖が無くても歩けるようになったんですよ!それから、二課の皆さんもとっても優しくて、お陰様でわたしは元気です。』

「セレナ……」

マリアの目に涙が浮かぶ。
ようやく目を覚ました妹が元気でいる。その事実だけでも嬉しいのだ。

『姉さん達の事は聞いています。風鳴司令や、日本政府の偉い人達には、感謝が尽きません。いつか、皆で暮らせる日が来る事を願いながら、この手紙を書いています。』

「ああ……きっと叶うさ……きっとな……」

ツェルトも涙を堪えつつ、手紙を読み上げ続ける。

『暁さん、これからもいつものお気楽な笑顔で、皆を照らしていてください。あなたの笑顔に、皆が元気をもらっています』

『月読さん、わたしは皆の事を一番よく見ているのは月読さんだと思います。なので、皆が落ち込んでいる時は、支えてあげてください。暁さんと、これからも仲良く過ごせる事を祈っています』

「ぐすっ……えっぐ……」
「切ちゃん……まだ泣いちゃダメだよ……」
「調の方こそ泣いてるじゃないデスかぁ……」

切歌は袖で目元を拭い、調も必死で堪えていた。

『ツェルト兄さん、皆の事を守ってあげてください。こんな事を頼めるのは、ツェルト兄さんだけです。これから先も、マリア姉さんの事をよろしくお願いします。義兄さんの事が大好きな妹との約束ですよ?』

「ちょっと!?セレナ!?」
「ははっ、これは一本取られたな……」

動揺するマリアを見て、ツェルトは微笑む。

『そして、大好きなマリア姉さんへ。わたしの為に頑張ってくれて、ありがとうございます。でも、わたしはもう大丈夫です。だから、これからはマリア姉さんの好きなように生きてください。多少の不自由はあるかもしれませんが、ツェルト義兄さんがきっと支えてくれます。いつか姉さんと、義兄さんと、三人仲良く暮らせる日を夢見ています。』

「もう……セレナったら……」

『それでは皆さん、顔を合わせる事が出来るのは年が明けてからになると思います。その時までお元気で!』

「うっ……ううっ……あ……」
「ひぐっ……う……」
「あ……うっ……ぐすっ……」

読み終えた瞬間、マリア、調、切歌の涙腺が崩壊した。

「ほらほら、泣くんじゃない……。折角のクリスマスなんだから、笑って過ごさないでどうするんだよ!」
「うう……ツェルトぉ……」

泣きじゃくるマリア達三人を優しく抱き締め、一人ずつ、その頭を撫でていくツェルト。

その心には、強い決意が灯っていた。

(セレナに頼まれたんだ……。俺が皆を守らないとな……)

泣いている暇など、自分にはない。
誰よりも先に涙を拭って、大事な家族が笑っていられるように頑張らなくては……。

「あんまり泣いてると、まだ食べてないケーキがしょっぱくなっちまうぞ?」
「うう……そうよね……。泣いてばっかりじゃ、マムも心配するわよね……」
「心配ないのデス!こうして皆でクリスマスを過ごせて……セレナも元気で……だったら、アタシ達はまだ笑っていられるデス!」
「うん……だからこれは、悲しみじゃなくて嬉しさの涙……。我慢しなくてもいいし、流し終えればまた笑えるから……」

涙を拭いて、また笑い合いながら……。
離れ離れでも、同じ空の下で、同じクリスマスを過ごしている。

失った物を取り戻した一つの家族は、約束の日を目指し、また手を取り合うのだ。



──これは、歌い奏でる少年少女達が過ごした、それぞれの聖夜の物語。 
 

 
後書き
如何だったでしょうか?
まだG編書き始めてすらいないのにここまで書いて良いのか、少し不安はあります……。
あんまり未完成の本編に差し障らないような内容にしていますが、心に響いてくれたでしょうか?

ちなみに司令と了子さん、藤尭さんと友里さんが今回のメインです。
弦了はこの後、本部の甲板から街明かりを眺めてデートの締めにしてたり、ショッピングモールのイルミネーションに照らされながら藤尭さん用に購入したマフラーを巻いてくれる友里さんがいたりします←

え?ヘタグレ?性夜に決まってるでしょ()
書きたかったけど、今から書くと間に合わないんだよなぁ……。

年内最後と言いましたが、よくよく思い出してみればクリスちゃんの誕生日が残ってましたわ!
あと1話!あと1話で年内最後です!

それでは皆さん、メリークリスマス!! 
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