DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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罪
<バハラタ東の洞窟>
「お前等は、そんな風に命乞いをした人々を、何人殺してきたんだ?立場が変わっただけだろ…今更後悔するなよ!」
「そ、そんな………」
そしてリュカがゆっくりと杖を振り上げた…その時!
「止めて下さいリュカさん!!」
アルルがリュカとカンダタの間に割り込んできた!
リュカだけではない、ウルフ達も…そしてカンダタ達までもが驚いている!
「アルル…どうして?」
リュカは何時もの様に優しく問いかける。
「歯向かう気の無い人を殺したら、彼等が行ってきた事と変わりません!先程の男みたいに、敵意や害意を見せてるのなら分かりますが、彼等にはそれがありません!」
「しかしそれは今だけだろ?此処から無事逃げ延びれば、また人々に災いを撒き散らすかもしれない…」
「でも足を洗うって…「それを信じるのかい?」
リュカとアルルは互いに真剣な眼差しで見つめ合う!
「今回の誘拐は失敗した…纏まった金を手に入れられなかった…コイツ等は、また別の町で同じ事を繰り返すかもしれないだろ!」
「そ、そんな事しねー!もう悪さはしねーって!本当だよ!」
「た、確かに…彼等を無条件で信じる事は…私にも出来ません…」
言葉に力を無くすアルル…
「な…本当にしねーよ!信じてくれよぉ」
「でも私は、リュカさんに無駄な人殺しをしてほしくありません!」
それでも退かない!
リュカに人殺しをさせない為に!
「無駄じゃ無いよ。今後の為に意味はあるよ…」
「私にはありません!私から見たら、意味なんてありません!」
「じゃぁ見るな!目を閉じて見なければいい!」
「そう言うわけにはいきません!私はリュカさんの瞳に灯る闇を、これ以上放置する事が出来ないんです!」
「……瞳に……闇……!?」
アルルの言葉にショックを受けたリュカは、自分の目を押さえ後ずさる…
「シャンパニーの塔でも、此処でもリュカさんの瞳に灯る闇が、私は怖いんです!だから…お願いだから、人を憎まないで下さい…罪と人は別です…」
暫くの間、誰も喋らなかった…
時間だけが静かに流れる…
そしてリュカが口を開く。
「じゃぁ…そいつ等をどうすれば良い?アルルだって信用してないんだろ?」
「それは………」
答えに困るアルル…
しかし何かを思いついたカンダタが、少し興奮気味に話し出す!
「そうだ、俺はアンタ等に協力するよ!アンタ等が何を目的にしているのかは知らないが、世界中を旅してるんだろ!?だったら俺もついて行くよ!子分達には、世界中の情報を集めさせる!な!?それだったら、アンタ等も俺達の事を見張れて安心だろ!?」
「………それは良いアイデアですね!それなら貴男達も見張れるし、盗賊の情報網を利用できる!」
カンダタの提案にアルルが飛び跳ねてはしゃぐ。
「バラモス討伐の勇者一行に、世間を騒がせた大盗賊が居たら、何かと拙いだろ!?」
「そんな事ありません!世界を救う為に立ち上がった勇者に感化され、改心して協力する元盗賊って思わせます!」
「どうやって!?」
「そりゃリュカさんと仲良しの王様や女王様の力を使って、世界中に噂を流してもらいます。」
「協力してくれると思っているのか?」
「はい、もちろん!少なくともイシスは………そうですねぇ…取り敢えず女王様に直接会って、お願いと同時にリュカさんを1週間程預けます。その間私達は、のんびりと休暇です」
「ぐっ………!!」
リュカが言葉に詰まっていると、嬉しそうにカンダタが喋り出す。
「アンタ等世界を救う旅に出てんのか!?だったら丁度良い!早速アンタ等の力になる事が出来るぜ!」
そう笑顔で言うと、カンダタは懐から綺麗な緑の宝玉を取り出した。
「これはなグリーンオーブって言って、価値の分からないヤツからしたら、ただの綺麗な宝玉だが、実はとんでもねーお宝なんだ!」
「何だ?そんなのを7個集めたら、ギャルのパンティーでも貰えるのか?」
1人はしゃぐカンダタを見て、リュカが不機嫌に言い放つ。
「ギャ、ギャルのパンティー…何だそれ?そうじゃねーんだ!確かに似た様な物を集めるんだが、数は6個!全てを集めて、『レイアムランドの祠』に奉ると、伝説の不死鳥『ラーミア』が復活するんだ!」
カンダタ1人が興奮する中、他は誰も感動していない…
「そんな鳥どうでもいいんだよ!それともナニか?その鳥を焼いて食えば、精力ビンビンか?だとしたら不要だ!僕は何時でも何処でも主砲発射OKだ!」
「まぁ聞けって!アンタ等バラモスが何処に居るか知ってるのか?」
カンダタの問いにアルルが俯く。
「それを探しながら旅をしてるんだ!空気読めバカ!」
珍しく苛ついているリュカが、カンダタにきつく当たる。
「じゃぁ教えてやるよ!バラモスは『ネクロゴンド』の奥地に居城を構えている!でも其処に辿り着くのは難しい!険しい山に囲まれているから船ではムリだし、城の周りを湖が囲ってあるから、徒歩でも不可能だ!」
「じゃ、じゃぁもしかして…」
アルルが瞳を輝かせカンダタを見る。
「そうだ、お嬢ちゃん!ラーミアが居れば、上空からバラモス城へと突入できる!」
「キャー!それ凄い!!ラーミアが居れば、バラモスを倒しに行けるのね!カンダタさん、それを私達にくれるんですか!?」
「あげるも何も、俺を仲間に入れてくれれば、このオーブは必然的にアンタ等の物だぜ!」
カンダタは巧みに自分を売り込んでいる。
アルルは気付いてはいるが、カンダタと一緒になってはしゃいで見せる。
「リュカさん!カンダタさんのお陰で、私達は明確な道標を手に入れました!まずバハラタへお二人を帰したら、イシスへ行って女王様にお願いをします!その後でポルトガへ戻り、船を手に入れてオーブ探しの旅に出ます!良いですね!?」
「あぁっと、その前にお嬢ちゃん『ダーマ神殿』に寄ってくれないか!?此処より北に行った所に、職業を司る『ダーマ神殿』があるんだが、俺は転職しようと思ってるんだ!」
「転職!?」
今まで黙って成り行きを見ていたハツキが急に反応した。
「あぁ…そこで俺は盗賊から戦士に転職しようと思う。俺は見ての通り、力があるから打って付けだと思うんだ!それに噂を流してもらっても、盗賊のままじゃ改心を疑われちまうからな…」
「じゃぁ…まずはバハラタ…次にダーマ神殿…そしてイシスにポルトガ…この順番で行きますからね!良いですねリュカさん!」
アルルは胸を張り、リュカに今後の予定を力強く指示する。
「………その前に一つ聞きたい事が…」
「な、何ですか…?」
リュカの真面目で怖い表情に、アルルは少し怯んでしまう。
「聞きたいのはカンダタにだ…」
「な、何だ!?」
やはりリュカが怖いらしく、声が裏返るカンダタ…
「そのグリーンオーブはどうやって手に入れた?誰かを殺して奪った物ではないのか?」
リュカは低く重い声でカンダタに問いかける。
「ち、違う!これはネクロゴンドの南西にある『テドン』って村で手に入れたんだ…そこはバラモス城から近い為、大分前に滅ぼされたんだ!シャンパニーの塔でアンタ等から逃げた俺は、船でバハラタまで来たんだ!その途中でテドンに立ち寄り、白骨死体が抱き締めていたオーブを戴いたんだ!」
「死体から盗んだのか…!?」
リュカが顔を顰めてカンダタを睨む。
「ま、待ってくれ!俺はこのオーブが凄いアイテムなのを知っていたんだ!足を洗った後で何か役に立つかもと思ったんだ!それにアンタ等だって何れはオーブを探す事になるんだ…その時に死体が抱えていたからって諦めるのか?1個でも揃わないと、ラーミアは復活しないんだぞ!?」
焦るカンダタは、自分の正当性を主張する。
「………分かった…悪かったよ…そんなにムキになるな…」
リュカは渋々だが納得し、洞窟を出口に向けて歩き出す。
「ふぅ…良かったわねカンダタさん。これで私達は仲間よ!これからよろしくね」
アルルはカンダタに向け、手を差し出した。
カンダタはその手を握り、
「アンタが勇者でリーダーだろ!?俺の事はカンダタでいい!『さん』なんてくすぐったいから付けないでくれ…」
そう言い、力強く握手を交わした。
そして子分達も散り散りに世界中へ旅立つ…
一人一人の力は小さい為、単独行動になれば悪事など出来ない連中…
しかし情報収集力は侮れない!
アルル達には、ある意味力強い味方が付いた事になる…
後書き
リュカさんは正義のヒーローではありません。
罪を憎んで、人も憎くむ…
ただの人間なんです。
でもアルルは勇者として生きてきました。
罪を憎んで、人を憎まず。
それが世界を救う勇者です。ちょっと性格に問題はあるだろうけど…
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