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ドリトル先生の林檎園

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第四幕その十二

「藤村さんのお父さんは頑張ったけれど」
「激動の時代の中で」
「それでも駄目で」
「それでなんだ」
「この人は最後は発狂してね」
 そうなってしまってというのです。
「座敷牢の中に入れられたんだ」
「ああ、お家の中にあった」
「日本の大きな家であったのよね」
「時代劇とかでたまに出て来るね」
「お屋敷の地下に秘かにあって」
「そこから出られない」
「そうした場所だったね」
 皆でお話するのでした。
「そこに入れられていたんだ」
「藤村さんのお父さんは」
「何かとても残念な結末だったみたいだけれど」
「おかしくなってそれって」
「どうもね」
「うん、藤村さんは色々あったっていうけれど」 
 先生はあらためてこのことについて述べました。
「これがね」
「そういうことだったんだ」
「藤村さんのお父さんのことだったんだ」
「おかしくなって座敷牢に入れられた」
「そんな人だったんだ」
「そうなんだ、ただね」
 先生は皆にさらにお話します。
「藤村さんはそれだけじゃなかったから」
「まだあるんだね」
「お父さんのことだけじゃなくて」
「他にも色々あったんだ」
「さっきそんなお話したけれど」
「お父さんのことでもかなりなのに」
「そうだったからね」
 先生は苦いお顔で言うのでした。
「あまり多くのことを言うことはね」
「憚れるんだね」
「僕達にお話することは」
「そのことについては」
「そうなんだ、話しにくいことばかりで」
 藤村さんのことはというのです。
「悪いけれどね」
「うん、わかったよ」
「じゃあそういうことでね」
「僕達もそれでいいよ」
「先生がお話しにくいなら」
「それならね」
「そういうことでね」
 先生はこう言って本当に多くをお話しませんでした、そして駅に行ってそこから松本市に戻るのでした。 
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