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ドリトル先生の林檎園

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第四幕その十

「日本に来てからね」
「騎士と違うのよね、武士って」
「そこで騎士の人は自害するかな」
「しないよね」
「敵に切り込んで最後まで戦う?」
「そうするかしら」
「日本の武士でもそうした死に方をした人はいるよ」
 騎士みたいに最後まで戦ってというのです。
「けれど今井兼平さんみたいにだね」
「自害して後を追う人もいるんだね」
「忠義、そして友情の為に」
「そうした死に方をする人もいるんだね」
「そうだよ、そしてそれもまた武士なんだ」
 そうだというのです。
「そうした生き様、死に様もね」
「それもだね」
「そのことは今は僕達もわかるよ」
「武士だってね」
「武士らしい潔い恰好いい死に方よね」
「凄く悲しいけれど」
「そう、確かに悲しいけれど」 
 先生もこのこは否定しません。
「けれどね」
「それが武士であって」
「その考えには敬意を表しないとね」
「立派な生き様、死に様だったから」
「是非共ね」
「そうしないとね、じゃあね」
 さらにと言う先生でした。
「今からね」
「うん、ちゃんとね」
「皆でお墓参りしようね」
「義仲さんのお墓に」
「そして今井兼平さん達にも」
「そうしようね」 
 こう言って実際にでした、皆で義仲さん達のお墓に手を合わせました。先生はその後で皆にお寺から駅に行く中で言いました。
「一つ思うことはね」
「というと?」
「何なの?」
「一体何を思ってるの?」
「うん、それはね」
 そのことは何かといいますと。
「この木曽は重要な道であったんだよ」
「ああ、中山道だね」
「東海道とは別の道だね」
「この道も江戸から京都に行く道だったね」
「そうだったね」
「それでもこの険しさは」
 木曽の山を見回して言うのでした。
「凄いね」
「昔はもっと凄かっただろうし」
「こんな道を通っていったのね」
「昔の人達はそうだったんだ」
「こんな鬱蒼とした場所を」
「昔の日本は今よりずっと木が多かったんだ」
 そうだったというのです。
「そして道も少なかったんだ」
「中山道も重要な道だったけれど」
「そうだったんだね」
「木々が鬱蒼と茂っていて道も険しい」
「そんな場所だったんだ」
「今そのことを思ったんだ」
 そうだったというのです。
「ここにいてね」
「そうだったんだね」
「この険しい道を」
「じゃあね」
「先生もそう思うよね」
「この道にいたらね」
「そうね」
「実際にね、間違っても革靴だとね」
 先生は今もスーツと革靴です、きちんと整えた紳士の身なりはいつもと変わることがありません。ですがその革靴を見て言うのでした。 
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