冬の刺激
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第五章
「それで」
「ええと、それは」
「滑り台行くとかね」
「流水プールもあるし」
早紀の息が周大の頬に触れた。
「何処でも行けるわね」
「じゃあ全部回る?」
「そうしましょう」
「いいわね、まずはここで四人で泳いで」
美優は二人の提案に笑顔で頷いた。
「そうしてね」
「順番にね」
「他のプールに行って遊びましょう」
「周ちゃんもそれでいいわね」
無意識にだ、美優は周大に後ろから抱き付いた。胸だけでなく身体全体が触れてきた。しかも早紀がまた来たので彼女も抱き着いてきた。彼は三人の年上の人達に三方向から完全に抱き着かれる形になっていた。
だがそのことに気付かないまま美優は弟に話した。
「それで」
「う、うん」
「あれっ、本当に硬くなってるわね」
「硬くって」
「感じが。どうしたの?」
「何でもないよ」
俯いてだ、姉に返事をした。
「別に」
「そうだといいけれど」
「じゃあね」
「皆で遊んでいよう」
早紀も麻里佳も周大に抱き着いたままだった、美優の言葉に頷いた。そうしてだった。
周大は姉と彼女の二人の友人達と一緒に様々なプールを巡り滑りもしたがそうした間常にであった。
三人はそれぞれ彼に身体を密着させていた、それも意識せずに。それで彼はずっと顔を真っ赤にさせて美優が言う硬くなっていた。
そうして一日を過ごしたが。
プールを出た時に麻里佳はプール場の外で言った、もう皆着替えている。
「弟さん大人しかったね」
「そうよね」
早紀も頷いて応えた。
「私も大人しいっていうけれど」
「早紀ちゃんよりもね」
「そうよね」
「こんな大人しい子って」
それこそとだ、麻里佳は言った。
「そうそういないわ」
「そうよね」
「あれっ、結構元気な子なのに」
姉の美優は意外といった顔だった、そのうえでの言葉だった。
「今日はね」
「特別なの」
「そうなの」
「うん、どうしたのかしら」
周大を見つつ友人達に話した。
「今日は」
「何かあったの?」
麻里佳は周大自身に尋ねた。
「一体」
「何もないです」
「だったらいいけれど」
「私達に問題があったのかしら」
早紀は本気で心配していた。
「若しかして」
「それは」
「あったら御免ね」
早紀は素直に謝罪の言葉を述べた。
「そうだったら」
「いえ、別に」
周大は早紀に戸惑いつつ答えた。
「そうしたことは」
「ないの?」
「ないです」
こうも言った。
「本当に」
「そうだといいけれど」
「あれっ、弟君お顔赤いよ」
麻里佳は彼のこのことに気付いた。
「それも真っ赤じゃない」
「そういえばね」
「耳まで真っ赤ね」
早紀だけでなく美優も言ってきた。
「手だって」
「どうしたの?」
麻里佳は周大本人に尋ねた。
「一体」
「何でもないです?」
「風邪?」
美優は姉として心配して彼に尋ねた。
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