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ドリトル先生の林檎園

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第四幕その五

「言うなら野生児かな」
「そうなるんだ」
「野生児だったんだね」
「山の中で生まれ育った」
「だから都の作法とか知らなかったんだ」
「そもそも武士だよ」
 義仲さんという人はです。
「都のお公家さん達でもないからね」
「そうしたことも考えると」
「やっぱり義仲さんが色々知らなくてもね」
「仕方ないことなんだ」
「どうしても」
「そうだよ、義仲さんは木曽の武士だったんだ」
 都のお公家さんではないというのです。
「しかも率いていた軍勢は結構寄せ集めだったし」
「まとめるのは難しかったんだ」
「義仲さん自身の軍勢は置いておいて」
「それで色々と問題があって」
「義仲さんが悪く言われているんだ」
「そんなところがあるんだ」
 先生は悲しいお顔のまま言っていきます。
「平家物語はその辺り書いていないんだ」
「平家物語は有名だけれどね」
「義仲さんも出番があって」
「それでもなんだ」
「決して義仲さんのありのままを書いていないんだ」
「悪く書いているんだ」
「そんなところがあるのは事実で」
 それでというのです。
「僕は史実も調べたけれど」
「義仲さんは決して悪人じゃない」
「ただ木曽にいた武士なんだね」
「それだけの人なんだね」
「そうなんだ、むしろ飾らなくて自分をありのままに出す人だったんだ」
 それが木曽義仲さんだというのです。
「政治家というよりも武将でね」
「軍人さんで」
「そうした人だっただけで」
「悪人じゃなかったんだ」
「そうなんだ、僕としては」
 こうも言った先生でした。
「義仲さんとはお会いしたいね」
「若しお会い出来たら」
「その時はだね」
「義仲さんとお会いして」
「それでお話とかもだね」
「したいと思うよ」
 実際にというのです。
「これは清盛さんもだけれどね」
「清盛さんもいい人だったって言ってたね、先生」
「実は優しい人だったって」
「家族にも家臣にもそうだった」
「思いやりのある人だったって」
「そんな人だったから沢山の人がついてきたんだよ」
 こう皆にお話しました、清盛さんのことも。
「義仲さんだって最期まで仕えた人達がいたし」
「若し本当にどうしようもない人なら」
「そんなことないしね」
「確かに平家って身内は殆ど殺し合ってないし」
「先生が言うには」
「保元の乱ではあったけれど」
 身内同士の争いがというのです。
「その後はね」
「そうしたことはなくて」
「最後までお家はまとまっていて」
「それで源氏と戦っていった」
「そうだったんだ」
「家督争いとかはあっても」
 それでもというのです。 
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