漢の意地
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第一章
漢の意地
文天祥、字は宋瑞は僅か二十歳で科挙に及第した。その為後々宋を背負うだけの人材と目されていた。
「宋は優れた人材を得たぞ」
「僅か二十歳で及第とか凄いな」
「それも首席でだ」
「将来は宋の宰相だ」
「この国を担う者だ」
こう言われていた、しかし。
この時の宋は苦しい状況にあった、北のモンゴル民族の国である元が大きく勢力を伸ばしていた。元の野心は明らかであった。
元の皇帝であるフビライ自身常に言っていた。
「高麗は抑えた、ならばだ」
「はい、それではですね」
「次は宋ですね」
「あの国ですね」
「高麗の王が日本を攻めろといつも言うが」
それでもというのだ。
「何といってもだ」
「宋ですね」
「あの国を攻めて」
「そして滅ぼす」
「そうしますね」
「あの国の富を全て我がものとするのだ」
まさにというのだ。
「機が来れば兵を進めるぞ」
「わかりました」
「それではですね」
「日本よりもですね」
「宋を攻める用意をしていく」
「そうしていきますね」
「宋の全てを手に入れる、そしてだ」
ここでフビライはこうも言った。
「あの国には優れた者がいるな」
「文天祥ですね」
「何でも僅か二十歳で科挙に及第したとか」
「それも首席で」
「宋の柱を担う者だとか」
「その者も欲しい」
フビライは元の皇帝の座から言った、丸い顔であり髭は黒く顎の先で長くなっている。何処か祖父であるチンギス=ハーンの面影がある。
「是非な」
「そしてですか」
「万歳老の傍に置かれ」
「元の為に働いてもらいますか」
「宋を倒すということはだ」
このことは即ちとだ、フビライはさらに語った。
「中華の全てを手に入れるということだ」
「そうですね」
「それではですね」
「あの国を何としてもですね」
「倒し我等が中華を手中に収める」
「そうしますね」
「そして文天祥もだ」
その彼もと言ってだった、フビライは宋を攻める用意を進めていった。このことは彼の兄であるモンケが皇帝だった時からのことで用意は周到に進められた。
当然宋もこのことを察しており守りを固めていた、特に襄陽の守りを堅固にしており。
文天祥も強い声で主張していた。
「断固としてです」
「元に向かうべきだな」
「そうです、守りを固め」
彼は後に理宗と呼ばれることになる皇帝にも言った。
「そして何としてもです」
「宋は屈せずにか」
「国と民を守り抜くべきです」
こう言うおだった。
「兵を集め養い」
「そうしてだな」
「何としても防ぎましょう、今元は強勢ですが」
それでもというのだ。
「緒戦は北の草原で馬を駆っているに過ぎない者達です」
元々そこにいる者達だからだというのだ。
「我等漢人のことはわかっておりませぬ」
「だから漢人を治めることはか」
「不得手の筈、そこは契丹の者達の方が得手な位かと」
かつて宋と激しく争った遼のことだ。
「女真の者達をご覧になれば」
「金だな」
「あの者達は兵は強かったですが」
元と同じ遊牧民であった、その為騎馬が非常に強かったのだ。
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